第11話

「オラァ!」


「それもういっちょお!」


 ドガーン!ブオン!


「な、なんか見てるこっちが可哀想に思えてきた……」


 卓球しようぜ!お前の腕ボールな!


 二人から四人になったことにより、確実に余裕ができるようになった。ラグネルは、俺が思っているよりも身体能力が高く、主人公くんの援護と最適なタイミングで魔物をひるませる。


 ラグネルの武器である大槌は、かなりの威力があるのか、一撃一撃が大きく魔物の身体を仰け反らせる。


 俺はそれをいい感じに先読みをして、ブレードで斬る。そんなやり方をしていたら、いつの間にか魔物を討伐していた。


「んおっ?」


「どうやら終わりっぽいな」


 サラサラ……と魔物の体が消えていくのと同時に、辺りを漂っている瘴気が徐々に晴れていく。


 どうやら、今日の戦闘は終わりらしい。この瘴気が晴れたら、いつも通りに青空と太陽を覗かせてくれるだろう。


「世話になったな。二人が居なければ、あいつを倒すのに手こずっていただろう」


「う、うっす……やっべぇぞユウ。俺、アークさんに褒められちまった」


「良かったね」


「?」


 返事をした後、何故か知らんが主人公くんの肩に腕を回し、こしょこしょと喋り始めたラグネル。首を傾げている俺に、リオーネが近づいてきた。


「お疲れ様でしたアーク様」


「リオーネもお疲れ様。援護、本当にありがとうな」


「いえいえ、アーク様のお役に立てたなら本望です」


 ハイタッチをしようと腕を上げたら、少し恥ずかしそうにしてから、控えめに腕を上げ、優しく掌を合わせる。そんな仕草もちょっと可愛すぎて反則級ですね。


「学園に戻ったらどうしますか?」


「とりあえずごはん食べたい」


 戦闘中はアドレナリンで気を使わなかったが、終わった瞬間腹が減ってきた。そういえば昼飯食べてなかったもんなぁ……。


 左手で空きっ腹を撫でながら、銃口をラグネルへと向けて直ぐさま一発。


「アーク様!?」


「油断大敵だぞ」


「ぬおっ!?」


 銃弾は、ラグネルの真横を通り、今にもラグネルを叩き潰そうとしていた魔物の腕を弾き飛ばした。


 それを見たラグネルは、さぁーっと顔を青くさせた。まぁもう少しで死ぬところだったからな。


「戦闘が終わって浮かれるのもいいが、最低限、瘴気が晴れるまでは周りは警戒しておけ」


「……す、すんませんっす」


「よろしい」


 一つ頷き、完全に瘴気が晴れてから、銃をボルスターへと戻した。


「……流石ですねアーク様。私、全然気づきませんでした……」


「まぁ、普通は直ぐに消滅するし、こんなことはレアケースだろ」


 虫の息状態でも、俺らってすぐ移動するから消滅寸前の魔物の傍にいないんだよな。


 ググッ、と腕を伸ばして体を伸ばしたあと、ふぅと息一つ。さて、最後の仕事を始めますかね。


「すまんリオーネちょっと──────」







 戦闘があった、ということは瘴気を吸い込んだ人がいるかのチェックをしなければならない。


 今では大抵のポかをやらかさない限り、マスクは外れることは無いが、毎回何人か低ランクの人が魔物の攻撃を喰らって瘴気を吸うからな。


 全隊員には、あらかじめ機関から『瘴気を吸ったものは、壁付近に待機しておくように』との文言を周知させているため、わざわざ戦場を手当り次第に探す必要は無い。


 どれだけ吸ったかによるが、瘴気を吸って、体が死に至るまでは大体二時間。その間に、俺が瘴気を吸い出さなければ例えどんな手を使っても死は免れない。


「────これでよし、と」


「ありがとうございます聖者さん!」


「その名前で俺を呼ぶな。ベッドに放り投げるぞ」


 今日の患者は一人だけ。仲間を庇った際に、魔物の攻撃を食らい、マスクが外れてしまったのだそうだ。


 ラッキーなことに、瘴気をあんまり吸い込んでいなかったため、リオーネが見てる前でふらつかないですんだ。


「……あの方、瘴気を吸ったあとの後遺症とか出ないでしょうか」


「即死以外だったらどんなに風前の灯火でも、健康体にまで戻せる機関ご自慢の医療技術だぞ?何も問題は無いさ」


 先に学園へ戻っていいと言ったが、パートナーですのでと言って俺の治療行為を見ていたリオーネ。何か思う所があるのか、どこか神妙な面持ちである。


「あの……アーク様」


「ん?」


「先程行使していた異能なのですが────本当に、瘴気を浄化しているのですか?」


「──あぁ、しているよ」


 一瞬、息を詰まらせたが何とか普通に声を出す。


 ……何故疑問を持たれた?


「……いえ、それならいいのですが」


「何か心配事でもあるのか?」


 サラリと、聞き出すことに。カモフラージュ出来るのならやっておきたい。


 だがしかし、予想に反して、リオーネはゆっくりと顔を横に振った。


「……その、どうしてか嫌な予感がするのです。アーク様に、それを使わせてはダメと」


「………?」


 え、どういうこと?勘?勘で俺の本当の異能を見抜いたというのか?


 原作での彼女には、特にそういった特殊能力は無いはずだが……まぁいい。バレる要素はどんなにおかしいことでも芽を取っときたいからな。少し強引だが話題を変えよう。


「ま、気のせいか、戦闘で疲れてるだけじゃないか?もし良ければ、学園までエスコートでもしましょうか?お嬢様」


「────まぁ、それは大変魅力的な提案ですね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る