第10話

 魔物にも、強さや、大きさによってランク分けされている。


 小さいのから、スモール級、ライト級、ミドル級、ラージ級、ギガトン級、ガイア級と別れている。


 基本的に、エリア1ではスモールとライト、エリア2ではミドルとラージ、エリア3でギガトンが主な相手で、この魔物を倒せるかどうかというのが、俺達のランク分けにも参考にされている。


 ランクDがライト級以下、ランクCがミドル級以下と、対応するランク隊員四人分=一体の魔物といった等式が存在する。


 つまり、現在俺とリオーネの目の前にいるこのゴーレムみたいな真っ黒な魔物は、Aランクが四人いてやっとこさ倒せるということである。


 ま、魔物の強さもピンキリなので、必ずしもそうという訳では無いが。


「リオーネ、機動力に自信はあるか?」


「申し訳ありませんアーク様。あまり、自信はないです」


 異世界人ということで、基本的な身体能力が前世地球人の何十倍も高いが、まぁリオーネはどちらかというと後衛職だからあんまり動けないのも仕方ないな────と。


 リオーネを抱えながら、右手、左手とラッシュで叩きつけてくる腕を細かくジャンプしながら隙を伺う。


「……はしたないと、思わないでくださいね、アーク様」


「ん?」


 身体を起こし両手を首に回して、ガッシリとホールドしながらタクトを構えるリオーネ。


 くいっ、くいっ、と視界の端でタクトが小さく踊ると、魔物の頭上に幾つもの魔法陣が現れる。


「……効いてないな」


「効いてないですわね」


 氷、風、火、雷と様々な魔法が魔物を襲うが、その拳は鈍ることなく、俺達に降り注ぐ。


 こいつ、普通のギガトン級よりもタフだな。こんなの原作でてたか?


「リオーネ、もっとしっかり捕まっておいてくれ」


「はい」


 首にかかる力が強まったのを確認して、両手で持っていたリオーネを、片手で支え、フリーになった右手には愛銃を持つ。


 ドパン!


「おっ?」


「効きましたけれど……これ時間かかりますわね」


 振り下ろしてきた瞬間を狙って、躱した後に肩口らへんに向かって撃ったのだが一部分が消し飛んだだけで、大したダメージにはなっていない。


 ちくしょう……ここに来て自称Sランク最弱な俺の攻撃力の無さが祟ってきた。俺も、異能で言うなら後衛職だからな!他の人と違って攻撃に転用できねぇからな!


「リオーネ、俺が撃ったあとに、ピンポイントで魔法の追撃、いけるか?」


「おまかせください。数打てば当たります」


 ま、俺達は俺たちなりのやり方でコイツを倒すだけだ。時間さえ稼げば、奥で暴れてるSランクの誰かが救援にくるでしょう。


「うおおおおおおお!!!」


「ん?」


「あら」


 突如として聞こえる雄叫び。そして、10mを優に超える魔物の頭に、自身の身長を超える大槌を見事クリーンヒットさせた救世主が現れた。


「手助けするぜ!お二人さん!」


「すまない!助かる!」


 二ッ!と笑う茶髪の青年。彼は、主人公くんの仮パートナーであり、アニメ一話にて無惨な死を遂げてしまったラグネル・ハイド君である。


 公式設定では、リオーネには及ばないものの、大槌を活かしたパワフルな戦闘スタイルが持ち味。一年生では希少のAランクである。


「ラグネルくん!」


「頼むぜバディ!学んだ成果見せてやれ!」


 そして、更に後方から、発砲しながら突撃してくる主人公くんが────んあ?


「これは……?」


「どういう、こと……?」


 主人公くんの攻撃を見た俺とリオーネが、揃って呆然とする。おかしい、彼に支給されている物は、軍で広く使用されている普通のアサルトライフのはずだ。それがどうして、弾一発一発が魔物の肉体にダメージを与えてるんだ……?


 ……まぁいい。考えるのは後だ。二人が手助けしてくれたことにより、暫定的な隊が組める。


「リオーネ、二人の加入で大分余裕ができた。魔法の援護、頼んだぜ」


「お任せ下さいアーク様。期待に応えてみせます」


 リオーネを下ろし、左手に剣を出してから魔物へと突撃する。今までの鬱憤、晴らさせてもらうぜ!


 キュィィィィィン!と聞く人が聞けば、歯医者のトラウマを思い出すような音を上げながら、左手に持った剣が唸りを上げる。


 この剣にも、例によれず機関から様々な改造を施されている。


 振動を起こす魔法陣を、これでもかというほどに剣に刻印されており、一つ一つが同じ振動数で同時に揺れることによって、超振動を起こさせる。


 その超振動は、どんなものでも切れる凶悪な武器となる。試し斬りしたとき、岩がバターのように切れた時は声を上げたものだ。


「前衛は俺とラグネルでやる!ユウラシアは合間合間で援護してくれ!」


「了解だ!」


「う、うん!」


 さて、さっさと終わらせるか。


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