第7話
一年生第六訓練所。
一年生ゾーンには、10個もの使用出来る訓練所があるのだが、普段は使える場所が固定で決まっている。
一階のクラスは第一、二階のクラスは第二……と、簡単な方法で決まっているため、俺達六階のクラスは第六訓練所を利用しているということだ。
そして現在、仮のパートナーである俺とリオーネは────
「準備はいいか?」
「いつでも大丈夫です、アーク様」
────俺は銃を、リオーネはタクトを構えて向かい合っていた。
なぜこうなったというのは、至極普通のことだ。お互いの力量を知るために、模擬戦をする。
だがしかし、俺はSランクで、彼女はAランク。どうしても、越えられない才能の壁というものが存在する。
だから、俺はハンデ出した。
「参ります!」
「来な」
今から10分間、一歩も動かないでリオーネの魔法を躱し続けると。
「!」
彼女がタクトを走らせる。それだけで、俺の周囲に幾つもの魔法陣が発生する。
『魔術大帝クヴァリ家』。まぁ想像通り、昔から魔法が大得意な貴族だ。
膨大な魔力と、高威力の魔法をバカスカ撃つため、最もSランクに近い魔術一家だと言われている。
細かな魔力操作、そして大量の
ま、相手が俺なのが運の尽きだが。
俺は素早く、愛銃の引き金を引き、銃弾を発射させる。
改造に改造に改造を施した俺の愛銃は、前世の銃と違い、装填作業を必要としないし、リロードをする必要も無い。
「────っ、流石です」
初速は秒速7キロ。実際の銃の初速が何キロ出るかは知らんが、銃弾は、銃声を鳴り響かせると同時に、パリィンと魔法陣を砕く音を響かせる。
その数合計37回。これが、彼女が魔法陣を発動させて、俺がその全てを割るまでの約数秒で引き金を引いた数である。
「ほら、もっと本気で来な────君が思っているより、Sランクの壁は高いぞ?」
「……では、お言葉に甘えて────フルスロットルでいきます!」
そして10分後。
「てい」
「うみゅ」
この戦いをキッチリと制した俺は、10分経つと同時に彼女へ近づき、デコピンを優しくおでこへの放つのであった。
何やら可愛い悲鳴をあげた彼女は、今までの疲労からか、のろのろとその場にぺたんと座り込んだ。
「お疲れ様。俺の勝ちだね」
「むぅ……アーク様、ずるいです。卑怯です」
まぁ確かに、ちょっとこの銃はずるいかもな。初めて性能聞いた時は師匠全員がビックリしてたし。
というか、俺的にはそのお顔はちょっとやめて欲しいなーと思います。可愛すぎて心臓に悪い。
「でも、リオーネも惜しいところまでは行ってたぞ。実際、何発か魔法発動を止められなかったからな……立てるか?」
「ありがとうございますアーク様……その」
「ん?」
「アーク様は……その……驚かないのですね」
「何が?」
「その……私が高威力の魔法を使わないことに関してです」
「ん?……んー……」
………………あーね!突然の事に少々言っていることに関して考えてしまったが、そういう事ね。
先程も説明したが、彼女は魔術大帝の一族であり、高威力魔法至上主義みたいなものが、クヴァリ家の中で蔓延っている。
だがしかし、リオーネは高威力よりも、少ない魔力で、効率よく、如何に魔物を殺すかということを重きにおいており、中々高威力魔法を使おうとしない。
先程もそうだったが、彼女は比較的最初に覚えるような魔法ばっかり使っていた。まぁ合計万を超えるような魔法をバカスカ撃ってたら、いくら初級でもぶっ倒れるものだが。
話を戻すが、そんな彼女とクヴァリ家の教えは正反対。水と油な存在であり────リオーネは、幼少期から家ではいないモノ扱いされているのである。
だから、彼女は人との繋がりに飢えている。認められ、自分がしていることが間違いでは無いと褒められたい。
彼女の傍には、それを肯定してくれる人も、認めてくれる人もいなかったのだから。
あ、なんか思いだしただけでも腹たってきた。クヴァリ家……ぶっ潰そうかな。
「まぁ……別に、不思議には思わなかったかな」
まぁ、だからここで俺がするべきことは、彼女を肯定すること。そうすればきっと、彼女の幼くて、ガラスに囲まれたその心に、少しでも認められるために。
「最初は疑問に思ったけど────あれだけの数
「!」
今はまだ、君から家庭事情を聞いてないから、こうして表面を撫でる程度のことしか言えないけど。
「そう……ですか……ふふっ」
原作で、ついぞ見ることが出来なかった心からの笑顔を見れることが出来たなら、今はそれで充分かな。
「ありがとうございます、アーク様」
「何が?」
「いえ、なんでも……ふふっ」
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