第6話
あれから、推しとの会話を経て何とかメンタルを取り戻した俺。当たり障りのない会話をして時間を潰していると、段々と教室に人が入ってくる。
教室に入ってくる人は、リオーネを見て一度驚き、更に俺を見て綺麗な二度見をするという一連の流れが出来上がっていた。
「……やっぱり、皆知ってるのかな」
「知ってると思いますよ。私の父があなたに救われているように、この学園にもそういう人は多いと思います」
「……だよなぁ」
じゃあ今朝のヒソヒソされてたのは、『あれがお父さん又はお母さんから聞いた聖者……!』みたいな感じで見られていたのか。何それ、すっごい恥ずかしいんだけど。
これから、知らん人に聖者聖者言われるのは流石に別の意味で死ぬ。何とかして呼ばれないように出来ないものか……。
「全員、揃っているか」
八時となり、始業のベルがなった瞬間、エイリ先生が教室へと入ってきた。その姿を見た教室の皆は、バタバタと慌てるように割り振られた席へ座っていく。
「……よし、遅刻はなしか。私は、このクラスの担任となるエイリだ。現役でまだ戦場に立っているため、居ない時もあると思うがよろしく頼む」
ゴクリ、と誰かが生唾を飲んだ音が気がした。チラリ、と教室を見れば、何人かの男子生徒が頬を赤くしている。
分かるよ。エイリ先生、デカイもんな。何とは言わんが。それプラス美人だし、目を奪われるのもしゃあなしである。
「本学園は、軍人を育成する場であり、授業カリキュラムは全て戦場に立って生き残るために役立つもので組まれている。各自、配布されたキーカードを机の横に挿せ」
胸ポケットからキーカードを取り出し、丁度コレが一枚刺さりそうないい感じの装置があるので、入れる。
すると、机がPCの起動画面みたいに青く光り、その上にホログラムが現れ、机はキーボードになる。
なになに……?一時間目座学or戦闘術訓練。二時間目魔法術基礎、三時間目座学……。一週間分見ても、国語や数学と言ったものはない。
「座学で行うことは、主に戦場での各ランクでの立ち回りや、魔物についてなどだ。この後の一時間目は、座学か戦闘術訓練となっているが、Dランク、Cランクの生徒は強制的に座学だ」
ふむ。となると、俺は座学か戦闘術訓練の好きな方を選べるというわけか。ま、俺はガキの頃から戦場駆け回って瘴気吸い取ってたから今更座学なんて要らねぇな。
「それと、この学園の一年生は
ん……?あぁ、確かにあったなそういうの。
基本的に、軍は戦場に出る際には固定の四人で一隊を組んで出る。戦場で、背中を預け合う仲なので、勿論強固の絆で結ばれている必要がある。
一年生の
つまり、人生のほぼ半生を一緒に過ごす訳になるのである。ま、後半の四人組については俺関係ないなガハハ。今年で死ぬ予定だし。
一旦話は戻るが、確かアニメでは最初の一ヶ月を過ごすパートナーは、隣の席の生徒────ゑ?
「ひとまず仮ではあるが、君達の隣の席が、一ヶ月命を預け合うパートナーだ。仲良くするように」
「まぁ」
「み"っ"……!」
やっべ。変な声出ちゃった。
ギギギギ、とゆっくりと隣を見る。すると、眩しい笑顔でリオーネがこちらを見て────
「ひとまず一ヶ月ですが……パートナーとして、よろしくお願い致しますね、アーク様」
「……スゥー、ヨロシク……」
俺の心臓、持つだろうか。
「それでは、一時間目は20分後だ。基本、授業はペアで受けてもらうので、二人で話し合うように」
そう言って、教室を出ていくエイリ先生。すると、ざわざわとにわかに教室が騒がしくなる。
「私達はどうしましょうか、アーク様」
「ア、ウン、ソウダネ、ドウシヨウカ」
マズイ。未だに推しとのパートナーという衝撃から立ち直れていない。このままではリオーネを心配させてしまうので、早く正気に戻らなくては。
「こほん、俺は基本的にどっちでもいいよ。リオーネ女史に任せる」
「そんなアーク様。気軽に、リオーネとお呼びくださいませ」
「ウグッ……」
お、推しを呼び捨てか……。心の中だったら余裕でいけるんだが、実際に言うとなると少し気恥ずかしい。
「……わ、分かった。リオーネに任せる」
「はい、任されました」
ふわりと笑い、両手を合わせるリオーネ。
んぐぐぐ……!きゃわいい!!!どうして推しはこんなに可愛いのか。きっと妖怪のせいである。
「そうですね……それでは、私の実力も見て欲しいので、戦闘術訓練、行きましょうか」
「了解した」
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推しの前でたじたじなアークくん。でも俺は推しを目の前にしたら一言も喋れない気がする。
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