第3話

「ところでアークくん、この後はどうする予定かな?」


「そうですね……」


 どうしよっかな。振り分けられている教室に向かってもいいが、恐らく彼女はいないだろうし。この後向かう予定の、学園の寮に行ってもいいが、荷物は少ないからすぐ暇になるだろうし……。


 ま、余った時間は学園散策でもしようとするかね。もしかしたら推しと遭遇するかもしれんし。


「とりあえず、寮に向かおうと思います」


「分かった。これを受け取りたまえ」


 ポケットから取り出し、こちらに投げたものを人差し指と中指で挟んでキャッチ。見てみると、俺の名前が書かれたカードキーのようである。


「資料は読んだかね?」


「はい」


 この学園では、人の強さによってランク分けされている。訓練生はD、戦闘員はCと言ったように、系五段階の指標がある。


 勿論、最高はSで、このSは『人外』と呼ばれており、格別な力や、特殊な能力を持っている人がなれる。


 このアニメの主人公くんは、潜在能力だけでSランクに選ばれた、いわゆる『可能性の化け物』というものである。入学時点では、戦闘術や魔法術はそこら辺の生徒となんら変わりないものであるが、彼の異能がSランクたらしめる理由である。


 ま、彼の能力がどう言ったものかは、いずれ説明するとして、このカードキー。名前が書かれている面の裏を見ると、そこには『S』と表示されていた。


 つまり、まぁ俺もSランク───人外の領域に片足どころか両足ズッポリハマり、なんなら既に腹辺りまで沈んでいるのである。


「場所は分かるかね?」


「はい………学園長、そもそもこれ、資料によれば寮に着いた時に貰うと記憶しているのですが、何故学園長が持っていたのですか?」


「そんなもの────私が君に直接渡したかったからに決まってるじゃないか」


 ──おじさんのデレは要らないんですよ。


 口に出さなかっただけ、偉かったと思う。






 いつでもきたまえ、とニコニコと笑いながら俺を見送ってくれる学園長に頭を下げてから学園長室を出る。すると、前にいたエイリ先生が何やらポケットから紙を取り出した。


「これは?」


「私のプライベートナンバーだ。君には多大な恩があるからな。何か困ったことがあれば、何時でも連絡してくれ」


 と、有無を言わさず俺の手を両手で握り、トドメにギュッと優しく包み込んでから紙を握らせる。うわ~先生の手柔らか~い。


「それではな、アーク。また明日」


「は~い」


 気がゆるゆるな俺の返事にも微笑を浮かべてから踵を返した先生。前世の影響で2次元美少女には弱弱な影響が、だらしなく口元が緩んでいる。いかんいかん、俺の推しはリオーネなのだ。エイリ先生に心奪われている場合ではない。


 頭をブンブンと振り、頬を軽く叩いてから俺も歩みを進める。目指すは、これから俺が死ぬまでお世話になるSランク寮である。


 この学園の寮は、ランクによって部屋のグレードが違う。


 D、Cが相部屋、Bが一人部屋、Aが1LDKといったように、ランクが上がるにつれて部屋が豪華になる。


 Sはまぁ産まれ持った才能で決まるため、なるのは不可能だが、Aランクならば努力次第でなることは可能だ。


 まぁ初期ランクDの生徒は文字通り血反吐を吐く思いをしなければなれないが、理論的には可能だ。この制度は、ランクが低い生徒のモチベーション対策となっている。頑張れば、あなたも豪華な部屋になりますよと。


 さて、そんなSランク寮の部屋なのですが────


「……でっか」


 一人暮しでそんなに部屋がいるのか!?3LDK!


 寝室にはなんとビックリキングサイズのベット!


 リビングには何インチなのか想定も出来ない巨大なテレビ!


 風呂は体を横にしてもまだ余裕のあるサイズ!ジャグジー付き!


 その他もろもろと、前世の高級マンションでも見ないような設備の数々!


 期待が重い。なんだろう、これだけ豪華にしてやったんだから人類の役に立てという機関の隠れたメッセージが伝わってくる気がする。


 人類の役に立つということなら、俺子供の頃結構な人数の瘴気吸い取ったよ?今となっては完全に瘴気をカットできるマスクが開発されたから俺の出番は少ないが、五年前まではかなーり役に立ってたぞ?


「まぁいいか」


 それはそれ、これはこれである。結局俺は最期、推しの目の前で盛大に散る予定だし、それまでは馬車馬のように働いてやろう。


 どうせ、明日になればいきなり戦場に駆り出されることになるしな。


 とりあえず、機関から送られている荷物の荷解きでもするか。私服や、ちょっとした趣味のものと、愛用している武器くらいしかないけど────


「────おっ、とと」


 歩き出した瞬間、ぐにゃりと視界が歪み、足元が覚束なくなる。壁にもたれ掛かり、手で目の周りを覆う。


 あっぶねぇ……これもうちょっと早かったら学園長とエイリ先生に見られることになってたのか。


 どのタイミングでコレが来るかは分からないが、なるべく気をつけないとな。バレたら絶対戦場には出られなくなるだろうから。




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と"お"し"て"カ"ク"ヨ"ム"に"は"特"殊"タ"グ"か"な"い"の"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!!

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