第21話 出会い①

【1988年初頭 冬】



「ああ!無事に帰りのバス間に乗れたー!今日もたくさん滑ったね。スキー面白いね!」


中学1年生の冬、私、藤原瑠心と友人達4人は、丸一日スキーを楽しんだ後、スキー場から街の駅まで向かうバスに乗り込んだ。

先頭を切ってバスに乗り込んだヒロが言った。


「ねぇねぇー!また来たいな。晴れたら来週の日曜日にまた滑りに来ない?」


穂乃果は背が小さいので、バスの荷台にリュックを乗せようと精一杯、背伸びをしていた。

私は後ろから、穂乃果のリュックを掴んで上の荷台に乗せた。


「ありがとう、瑠心ちゃん」


「いえいえ」


「私も来週また滑り込みしたいわ!みんなは?予定はどうなの?」


マユがバスの中だというのに大きな声を出した。


「私も来たいよ。来週末も全然予定入ってないし」


ヒロが答えた。


「私も勿論来たい!でもマユ、部活は?バレーボールは?」


私がマユに尋ねた。


「あー、部活ね。かったるいから辞めたわ」


そう言ってマユはバスの後部座席の窓側にどかっと腰掛けた。


「バレーボール部、辞めたの?いつ?」


私はマユの隣に座った。


「冬休み、面倒くさくて部活サボってたら、先輩達があーだこーだうるさいからさ、じゃあ、辞めまーすって」


「そうなんだ。マユ、1年生でレギュラーだったのにね」


「大体さ、もうスポ根とかもう、今の私のキャラに合ってないんだよねー。アタシは、ほら、ヤンキー枠だから」


そう言ってマユはニカっと笑った。


「なんだか寂しい…」


「わー…違う違う!ヤンキーになっても私とルミンは親友だから!」


「本当に?」


「幼稚園の頃からの親友なんだよ。ルミンが今も昔も1番だよ!」


そう言ってマユが私に抱きついた。


「……でもヤンキーのグループに入ったでしょ?これでバレー部まで辞めちゃってもう…」


「アタシが学校1のヤンキーになっても、ルミンがバリバリの生徒会でも、ウチらの友情は永遠だよぉ〜」


「マユ、最近、本当に素行悪いよ。この前、夜の11時頃に外でヤンキーのグループの人たちといるの見たってお父さん言ってたよ」


前の席に座っていた美奈子が振り向いて言った。


「そうさ、美奈子のとこのおじさんに怒鳴られたもん。何やってんだー!こんな遅くにー、って。っていうか、美奈子、アンタもうさっき買った肉まん食べてんの?」


マユが口いっぱいに肉まんを頬張っている美奈子に言った。


「だってお腹が空くんだもん」


「食べ過ぎだっつーの!あんまり太るとモテないよ?」


マユが美奈子の両肩をポンポンと叩いた。


「モテなくていいもん!別に」


すると、その更に前に座っていたヒロが振り返った。


「サイズ変わると制服が入らなくなるじゃん!それ困るよね」


ヒロがそう言うと、美奈子が深く頷いた。


「それはそう!今もう結構パンパンなんだー」



「ところでさ、このバスって、もしかすると私たちだけ?貸し切り状態じゃない?」


ヒロが皆んなに言った。


「確かに!珍しいくらいに全然他の人が乗ってこないね。貸し切り、貸し切り!やったー!」


マユが両手を叩いて喜んでいた。


スキー場から町の駅までのバス。

片道約30分ほど。

午後3時半にロッジの前のバス停を出発する。

私たちはバスの混雑を予想して3時過ぎにはバス停に並んでいた。

早く到着していたバスの運転手が私たちのためにドアを開けて温かい車内に乗せてくれていた。

人が乗ってこないと思ったバスの運転手さんは車内が寒くならないようにバスの扉をゆっくりと閉めた。

バスの運転手はそのうちゴキゲンに鼻歌を歌っていた。


「本当に誰も乗ってこないね。こんな日もあるんだね」


穂乃果が言った。


「でもあと出発まで10分はあるよ」


すると遥か向こう側、ロッジ方から、20代前後くらいの大柄な大人の男性達6名ほどがスキー板とストック、大きなバッグを肩から下げて大慌てでバスに向かって走って来た。


「おお!おお!えらくガタイのいい兄さんたちが走ってきたなー」


バスの運転手はそう言ってまた乗車口の扉を開けた。


「なーんだ!貸切じゃなくなった」


まゆが残念そうに言った。


「間に合った!良かった…あー、良かった」


最初に乗り込んで来た男性が乗り込んで来るなり、とても大きな声で言った。


「なあ優、これ逃すと次の最終はもうないんだろ?」


次に乗り込んできた、メガネをかけた男性が、彼の後ろにいた『優』と呼ばれた背の高い男性に言った。


「ありませんよ。でもオレは絶対に間に合うって言いましたよね?ゆーじさんのジャケット紛失騒動がなければ、こんなに走ることなく余裕でしたよ」


「にしてもおまえ、一日中、バスの時間を気にしてたよな?」


その後ろから乗り込んできた大柄で色黒の男性が大きな声で優と言う人の背中をバシッと叩いた。


「いってー!健太さん!痛いですって。だって、これ逃したらタクシー3台に分かれて高い金を出さなきゃならないんですよ?」


「そうだぞ、健太!お前なんてこんな段取りできねーだろ?優に感謝しろよ」


背の高い痩せ型の男性が健太と呼ばれた色黒の大きな男性に言った。


「オレだって、これくらいの段取りできるさー!」


「健太さんには無理ですよー!さぁ、早く乗ってください!後がつかえてますからー」


そう言いながら、最後はマジメそうな青年が乗り込んできた。


「高校生ではなさそう。大人?大学生なのかな?」


小さな声で美奈子が言った。


「一人は口ヒゲ生えてるもんね。社会人かな?なんかヘラヘラしてるし、大学生ぽいね。この街には大学生なんていないから良くわからないけどさ」


私たちは、彼らが乗り込んで来た途端、ヒソヒソと話した。


「後の席の方にいきましょうよ。他にもお客さんが乗るかもしれないし、後ろに詰めて乗りましょう!」


優と呼ばれていた男性が大きな声で仲間に呼びかけた。

えっ?こんなにバスはガラガラなのに、わざわざ私たちの近くに来るの?


その大学生らしき男性たちは、バスの後部に座っていた私たちの、通路を挟んで反対側に座った。


私の前の席にいた穂乃果が、後ろの方を振り返って耳打ちしたそうなポーズをしたので、ゆっくりと穂乃果の方に耳を近づけた。


「カッコいい人いるよね。私の列の通路挟んで直ぐ横に座った人!外国人?それともハーフだろうか?」


後ろから三列目の通路側に座っている背の高い男の人のことだ。

私は帽子を深く被り、帽子のツバ越しに斜め前にいるその美形の男性の方に、そっと目をやった。

色白で、髪の毛が栗毛色っぽい。

鼻が高そうだけれど、斜め後ろからだから良く見えない。


その人はこちらの視線に気が付いたのか、くるっと振り返って後ろを見た。

完全にバチっと目が合った。

私は恥ずかしくなり咄嗟に目を逸らした。


「ひゃー今日は滑ったな。クタクタだ。さすがに疲れた」


健太と呼ばれた男性が大きな身体をぐーっと伸ばしながら大きな声で言った。


「この時間なら、駅に着いて4時くらい?バス降りたら、そのまま真っ直ぐどっかに食べに行く?」


私の隣に座っていたメガネをかけた男性が言った。


「いや、さすがにスキーと靴をこのまま持って歩きたくねーわ」


前の席の痩せ型の長身の男性が言った。


「あれー?司さん、飲みに行く気満々っすか?」


その直ぐ後ろに座っていた少しチャラっとした男性が言った。


「とりあえず、一旦ホステルに荷物置きに行きましょうよ」


大人の男性たちの声はバスの後部座席に良く響いた。

この街には大学はなく、小中高校までしかない。

大学生という人種が世の中に存在することを私たちは当然知っていたけれど、当時の私たちは大学生に会う機会など滅多になかった。

会うとしてもマジメな教育実習に来る大学生くらいだった。

高校生でも無いし、だからといってしっかりとした大人でも無い雰囲気。

不思議だ。

普段はなかなかお目にかかれない接点のない人達なので、私たちはとても彼らのことが気になっていた。


右横の男性達を少し横を気にしながらも、

私たちの話題は次の週のスキー計画に戻った。

その年の冬は友達同士でスキー場へも出かけることが私たちのブームになっていて、スキーが楽しくて相当に浮かれていたのだ。

そしてまた、席の前後でおやつ交換が始まった。


隣の大学生らしき男性たちは、私たちが会話を始めると途端に静かになった。

寝たのかな?と思いきや、どうやら私たちの会話に耳を傾け始めたようだった。


「あーーー!」


私の通路を挟んで反対側に座っていた男性が、突然大声をあげたので、

私は思わずそちらに目をやった。

すると、その男性はビックリした顔で私を観ていた。

周りにいた私の友達も、反対側の大学生達も、瞬時にその大声を上げた男性の方を見た。


「どうしたの?ゆーじさん!?」


隣の席に座っていた男性から「ゆーじさん」と呼ばれた男性は、近くで見るとグリーンっぽい色のべっこうのメガネをかけていた。

身体がやけにひょろっとして、赤いギンガムチェックの厚手のネルシャツに下がスキーウェアという不思議な姿。

その人、上着、何処かに忘れて来たのかな?

そして私の方をじーっと見ている。


「この子の手袋と、オレの手袋と全く同じ!お揃いのデザインのロシニョールだわ、ホラ!」


手袋?ロシニョール?

自分の手袋を見た後、べっこうメガネの男性の手袋を見た。


「あ、本当だ…」


私は小さな声で言った。


「だろ?えー!オレこれと同じこの手袋持ってる人、初めて会ったよ。それどこで買ったの?レア物だと思ってたー」


突然、私に普通に話しかけて来た。


「えっと…町のスポーツ用品店です」


「用品店ですっだって。可愛いな」


そのメガネの人の奥にいた1人がこちらを見て笑って言った。


「…ていうかこの子、身につけているもの全部良いものばっかだわ」


「わあ、本当だ!まるでウィンタースポーツウェアのモデルさんだな」


2人は私のことを色々と言ってきた。


「お兄さん達、どこから来たの?地元の人じゃないでしょう?」


コミュ力高めなマユが話しかけた。


「オレ達、札幌から来たんだ。札幌のH大学の学生」


ゆーじと言う人が笑顔で答えた。


「すごーい!頭良いんだー」


「君たちは?地元の…中学生かな?」


「ピンボーン!はい、当たったからチョコあげる」


ヒロが立ち上がって6人の大学生達にチョコレートを配り始めた。


「おおお!ありがとう!ちょうど甘いもの食べたかった」


健太と呼ばれていた人が言った。


「じゃあ、私のもあげる!」


「私もあげるー!」


オヤツのプレゼント会が始まった。

私も、手持ちの青リンゴ飴をお兄さん達に配った。


「はい、どうぞ」


先ずはゆーじと言う人にあげた。


「おお!懐かしいなこれ。アオタの青リンゴ飴じゃん!ありがとう」


お兄さん達はは皆、思いのほか喜んでくれた。


「これ、…良かったらどうぞ」


優と呼ばれていた人にも最後にキャンディを差し出した。


「あ…い、いいの?美味しそうだ。青リンゴ味って、…オレも好きだから嬉しいな。あ…ありがとう」


低く響く優しい声。

色白の頬が少し赤く上気して見えた。

頬にまだ、少年の面影を残しているかのようだった。

それにしても、なんて綺麗な男性だろう。

彼は透き通るような、青緑色の瞳をしていた。

私は少しの間、視線を奪われていた。

そして途端に照れ臭くなり、慌てて自分の座っていたシートに戻った。


私たちはそれぞれに自己紹介をすることにした。


「堀田真由。マユって呼ばれてるよ」


「芦屋美奈子でーす」


「池淵穂乃果だよ」


「寺嶋博美。ヒロって呼ばれていまーす」


「藤原瑠心です」


「メガネとヒゲがチャームポイントのオレは平田裕司。獣医学部の2年だよ。将来は動物病院のお医者さんだ」


「関哲哉でっす!経済学部の1年。チャラく見えるけど、全然チャラくないよ」


「田尻司。法学部の2年。弁護士目指してます」


「葛西健太でーーーーす。経済学部2年だよん。東京出身だよー」


「伊勢谷徹です。文学部の1年だよ。山形出身です」


「大澤優です。経済学部2年です。見ての通り、父と母が日本人のハーフ。アメリカ生まれです」


私たちは駅までの約30分のバスの乗車時間の中で、すっかり打ち解けた。


「オレ達、来週いっぱい、日曜日までこっちに居るんだ。君たち、来週またスキーに来る話してたよね?もし良かったオレ達と一緒に滑らないか?」


哲哉が突然の提案をした。


「あっ!いいねー!そうしよう!また会いたいし。お兄さんたちすごく面白いし」


穂乃果がノリノリで答えた。


「よーし!オレ達でみっちりスキーレッスンしてやる!なんたって、全員、基礎スキー1級保持者だから」


司が言った。


「それなら、瑠心ちゃんも級持ってるよね?」


美奈子が私に言った。


「いや…。まだ2級だけどね」


「へえ、すごいじゃないか。いつ取ったの?」


ゆーじが私に聞いた。


「去年、6年生の時にね、地元のアルペン少年団に入っていたから。中学生になってからはもうあまり滑ってないし、もうしばらく指導も受けてないの」


私は恥ずかしくなった。


「だったら、尚更一緒に滑ろうよ。オレ、滑りを見てあげるから。指導員の資格も持ってるし」


優が振り向いて突然私にそう言うと、お兄さん達全員がフリーズ状態になった。


「優が…今、誘ったの?あの優が?女の子を?」


哲哉が口に手を当てて驚いて見せたが、他のお兄さん達も同じリアクションだった。


「えー?どうしちゃったの?優?今のって空耳?」


口々に驚きの声を上げた。


「わ、悪いかよ…オレが、声かけたら…」


優の顔が耳まで赤くなっている。


「あれれれれ?あれー?」


マユも優の表情の変化を見逃さなかった。


「なに?別に…皆んなが変に色々言うからだろ?瑠心ちゃん…気にしないで…」


優が私に言った。


「は、はい。あの…是非、教えてください。大澤さんのご迷惑でなければ…」


私がそう答えると、優の顔が途端に笑顔になった。


「全然迷惑じゃない…全然!」


「ありがとう…ございます」


大澤さん…とても優しくて親切な人だな。





バスが駅に着いて順番にバスから降りる。

穂乃果は関哲哉と連絡先を交換していた。


「なんだかこっちに妹みたいな友達ができたようで楽しいな!」


お兄さん達は口々に喜んでくれていた。 


私は皆んなが降りた後、座席に忘れものが無いか、ゴミなどが落ちていないかを最後に確認した。

ふと目を上げると、バスの真ん中付近に優が立ってこちらを見ていた。


「あれ?大澤さん?どうしたんですか?降りないんですか?」


「……いやその…そうして確認してるの?忘れ物とか?ゴミとか?」


「はい。前に友達が帽子を忘れたことがあって。すごく気に入っていた帽子だったのに、結局、届けられていなくてとても悲しんでたので。それに、あんなにたくさんオヤツとか食べちゃってたから、ゴミも落ちてたりするし…」


私がそう言うと、優がこちらに戻ってきた。


「そうだよね。オレもオレ達の座っていたところ、ちゃんと確認しようかな」


そう言って、優はニッコリ笑った。

私はその笑顔に、思わずドキッとした。


「よーし!こっちは大丈夫そうだな。ゴミはあったけど全部拾った!いい年してダメな奴らだ全く」


「こっちも大丈夫そうです。あれだけ食べてたけど、ゴミはゼロ。忘れ物もゼロです」


「いい習慣だよね。オレもこれから見習うことにするよ」


「そうですか?」


「さぁ、お先にどうぞ。レディーファースト」


そう言って優は片手をサッと出した。


「あははは。そんなことされたの初めてです。ありがとうございます」


「運転手さん、お世話になりました。ありがとうございましたー!」


私はバスの運転手に挨拶をした。


「おう!またね。君たちで最後かい?」


「はい、そうです」


私たちがバスから降りると、それぞれがバスの横の扉から荷物を取り出し終えていた。

優はささっと走って行って、自分のよりも先に私のスキーケースと靴のバッグを軽々と下ろしてくれた。


「あ、ありがとう」


「どういたしまして」


私たちは次の週の日曜日の計画を話しながら歩き出した。


「じゃあ、瑠心ちゃん以外、私たちは家がこっちだから」

穂乃果が言った。


「おう!じゃあなー!日曜日にな」


「哲哉くん、ウチは全然OKだから、日曜日のこと何かあったら直ぐ連絡してね」


「おう!わかった」


分岐点で、私以外は右側へ行った。

私とお兄さん達の滞在していたユースホステルと方向が一緒だった。


「瑠心ちゃん…」


私の隣に優が来た。


「はい?」


「ここの町のオススメの飲食店とかある?」


優が私に尋ねた。


「うーん…ラーメンかな?三店舗くらい美味しい所がありますね」


「えっ?何処どこ?教えて欲しい」


優はとても気さくに会話のできる人だった。

聞き上手な上に、話しも上手だ。


「へぇ、じゃあ瑠心ちゃんは今、日に2回、ワンコの散歩をしてるんだ?」


「はい、この時期なら日が登るのがまだ遅めだから6時半に起きて一回、あとは夕方の4時過ぎくらいに一回。大澤さんたちが泊まっているユースホステルの方まで行ったりします」


「へぇ、一日2回は大変じゃない?」


「うん…けど、ココを飼う時の約束だから。お父さんとお母さんに、私がお世話するって約束してココを迎えたし。それにココのこと大好きだから、大変じゃないです。あっ、でも雨の日は歩かないからちょっと困ります」


「ワンコは雨が嫌いだからなー。ウチのコリンもそうだったからわかるよ」



「優はいったいどうしちゃったんだ?」


後ろの方を歩くゆーじと司と健太が小さな声で話をした。


「僕らもビックリしてるんですよー」


その後ろから哲哉と徹が話に入った。


「オレ、優があんなに楽しそうに女の子と会話してるの初めて見ましたよ」


哲哉が言った。


「オレもだよ!合コンに誘っても来ない、部活や学部の女の子達とは挨拶程度。オレてっきり、優って女嫌いなのかと思ってた」


司はかなり前から、優がゲイではないかと人一倍主張していた。


「余程、あの子が気に入ったんだと思いますよ。きっと好みのタイプなのかな?」


徹がニコニコとしながら答えた。


「じゃあ私はここで。家、こっちなので。今日はお会いできて楽しかったです。来週また、楽しみにしています」


「ああ、オレ達も楽しみにしてるよ。また来週ね!」


優が爽やかな笑顔で言った。


私はお兄さん達の方へ深々とお辞儀をして別れた。


大澤優さんか…

とても優しくてステキなお兄さんだったな。


私はしばらく歩いてから、もう一度振り返った。

すると、橋の上を楽しそうに歩くお兄さんと、立ち止まってこちらを見ている優の姿があった。


大澤さんも…こっちを見てくれていた!


私は優に向かって大きく手を振った。

すると、優も大きく手を振り返してくれた。

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