第17話 別れ①
「おじいさま……」
「おかえり、ユージン…私の美しい人が逝ってしまったよ…」
曽祖母のメグが亡くなったのは、僕のパストリープ出発の2ヶ月前のことだった。
僕は17歳になっていた。
部屋に入ると沢山の花や送別の手紙と共にメグの写真が飾られていた。
その光景を見て、僕の心の奥にあった重苦しい痛みが動き出した。
「御葬式にも参列できずに、今日になってしまいました。申し訳ありませんでした。おじいさまが一番辛い時に…」
「いや、タイムリープ訓練中は国外移動は禁止だ。仕方がないことだとわかっているよ。とにかく無事に訓練を終えて何よりだ。よく頑張ったな」
久しぶりに合うリクは、急激に年老いたように見えた。
「最期は、私が彼女の手を取って看取ることができた。メグには…たくさん苦労をかけた」
そう言ってリクは彼自身の右手をじっと見つめていた。
そんな彼の姿を見て、
僕は、この時まさに、自分を愛しみ育ててくれた曽祖母の死を強烈に実感したのだった。
「今になって……僕は……」
突然、走馬灯のように、生前のメグの姿が目に浮かんだ。
その時、ずっと心の奥にあった重苦しい胸の痛みが、一気に溢れ出てくるのを感じた。
僕はその場に膝をついて崩れ落ちた。
「アメリカでおばあさまの訃報を聞いた時も…僕はまるで実感がなくて。悲しい出来事が起こったことは頭ではわかっていたのに……。おばあさまの元気な時の顔しか浮かばない…」
泣き崩れる僕の側にリクが来た。
「…そういうものだよ、ユージン。愛する者が亡くなるという事実は、失ったその瞬間よりも、その後の暮らしのふとした時に痛い程に思い知るものだ」
リクは僕の背中を優しく摩った。
こんなに泣いたのはいつ以来だろう。
「メグは、死の直前まで、お前のことを案じていたよ」
僕は声を出して泣いた。
これまで出した事もない大きな声で、泣き叫んでいた。
僕にとって、この瞬間まで、涙というものは制御可能なものであった。
しかし、その時の感情も涙も、止めることなど到底できるものではなかった。
抗うことなどできない押し寄せる悲しみの波に、僕は身を委ねたのだった。
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