第14話 パストリーパー①
「ユージン・フジワラ!」
「ハイム・コーエン!」
TLOでの訓練を開始して1週間後、僕は2ヶ月後にパストリープを予定しているハイム・コーエンと会った。
「ようこそ、TLOへ!そしてようそこ、成功率65%の恐怖の世界へ」
大笑いしながら、ハイムは僕に強烈なハグをした。
彼はとても陽気な男だった。
「パストリープを選択した怖いもの知らずの14歳の少年が入ってくると、本部では噂で持ちきりだったよ。CIA訓練センターでトップの成績を納めた天才ってね。厳つい子が来るのかと思いきや、まさかこれほどの美少年とはな!しかもあの偉大なるリク・フジワラの曾孫だ」
「Mr.コーエン、お会いできて光栄です」
私は右手を差し出した。
「おいおい、堅苦しいかのは抜きだ。ハイムと呼んでくれ」
そう言って、ハイムは握手で応えてくれた。
「ありがとう、ハイム」
「君が来てから直ぐに会いたかったんだが、シミュレーション訓練Aレベルで失神して3日間ほど目が覚めなかったんだ。全く恥ずかしい限りだよ」
ハイム・コーエンは21歳のアシュケナージ系ユダヤ人の血を引くアメリカ人だった。
「君も、アシュケナージの血を引いているのだろう?」
ハイムが僕に言った。
「はい、とは言っても母方の祖父がアシュケナージのクォーターです。実際には僕は数多くの民族の血が流れているらしいです」
「リクが意図的にそうしたのだろ?あの人はすごい人だ。僕の父がね、リクの研究グループによる遺伝子治療で代々先祖が患って来たパーキンソン病の遺伝疾患を取り除いて貰っている」
「そうでしたか…」
「リクは僕らの一族の血を残そうと尽力してくれた人だよ。僕の父と母を引き合わせたのもリクだ」
「お母さま…」
「母は日本の時任家の血を引いている。君のおばあさんもだろ?」
「そうです。祖母のクラウディアは時任の家の娘です。ということは、貴方も特殊能力を?」
「そうだ。時任の家のマインド・リーディングとエンパシー能力を受け継いだ。つまり僕らは遠縁の親戚同士だ」
「なるほど…おじいさまが…そこにも…」
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