第11話 真実 ④
「2045年2月、月の裏側と南極大陸に隕石がほぼ同時に落下した。
その2つの隕石は莫大な宇宙鉱石を含み、そのエネルギー資源はウラン以上に強力で有益かつ取り扱いやすい安全なものだった。
アメリカはその情報ををいち早く掴み、利権の獲得へと乗り出した。
月の裏側の資源は、当時は月から資源を持ち帰る技術をアメリカ以外の国では持ち合わせていなかったので、いとも簡単に入手できた。
しかし南極に落ちた隕石は諜報活動によって情報を得たロシアと中国、そしてアメリカの奪い合いの構図を生んだ。
結果として早々にその隕石調査に着手が早かったアメリカが利権を得た訳だが、結局はこの事も、その後の第三次大戦の要因の一つとなったという訳だ」
「それでも、エネルギーの抽出には相当な時間を要したでしょう?」
「ああ、15年の月日がかかった。何よりエネルギーの抽出技術と転嫁技術を開発しなければならなかったからね。
それと別に我々は別のプロジェクトを進行させていた。タイムリープ装置の開発と、優れたタイムリーパーの育成だ。
タイムリープの原理は既に確立されていたから、あとの問題は「燃料」と「人材」だけとなっていた」
「おじいさまは、どの段階の何にかかわったのですか?」
「主にタイムリーパーの育成だ」
「遺伝子学が……」
僕の反応を見て、リクの表情が一瞬にして強張った。
「僕の……遺伝子操作をしましたか?」
リクは黙って頷いた。
「あらゆる疾患系の遺伝子を排除した。
しかし誓って言うが、他は何もしていない。
今のお前を構成しているのは、多くの先祖から代々受け継がれた能力だ。私はお前の誕生に辿り着くまでに、子どもや孫の妻となる人物とそれに連なる一族を数世代に渡って意図的に選抜した。遺伝子レベルで、能力者や人種の特性を兼ね備えた人物達を調べ婚姻へと進めた」
「だから……おじいさまはリチャードおじいさんと、長年の仲違いを?リチャードおじいさんとクラウディアおばあさんの婚姻には色々あったと聞いていましたが」
「そうだ。リチャードの結婚相手のクラウディアが誕生するまで、そしてケントの結婚相手のセーラが誕生するまで、セーラのルーツであるウィリアムズ家の婚姻も、全て私が介入している」
「何故です?何故にそこまで……優れたタイムリーパーを誕生させるためですか?」
「それだけのために、ここまでのことはできない。私にはここまで突き動かされる動機があった」
「それは何です?」
リクは眼を閉じた。
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