第9話 真実 ②

「何故アメリカ合衆国CIAが君の育成にここまで注力して来たのか?わかるか?」


「僕の…特殊能力をかっていただいているのでは?」


「結論から言う。君は今後、TLOのトレーニングに入ってもらう。知っているか?TLOという組織」


タイムリープ計画の極秘組織…


「その正式名称をここで口にして大丈夫なのですか?この執務室には盗聴マイクが付いていますよ」


「大丈夫。2つともダミーだ」


「……3つあります。2つは確かにダミーでしょうがもう一つは…わずかですが作動している音がします」


「なんてことだ!」


アーサーは頭を抱えた。


「僭越ながら、貴方の執務デスクの左袖。恐らく上から2番目の引き出しの裏です」


アーサーは慌てて引き出しを取り出した。


「今朝確認していたものとは全く別のものだ」


「昨日から今日のこの時間までであれば、仕掛けた人物の特定は比較的容易なはずです。

この部屋の右上書棚の影に設置されたカメラと、応接セットのテーブル脚上部分に仕込まれているカメラの画像で特定は可能ですよね。

残念ながら天井に設置されたカメラは壊されています。

犯人はとても慌てていたのか?それとも単なる素人か?カメラの設置場所を一箇所しか見抜けてない。仕掛けも余りにも雑過ぎます」


アーサーが机の下のスイッチを押したのか、SPと思われる男性と女性の2人が部屋に入って来た。

アーサーが小声で指示をすると、的確な速さで壊れたカメラと仕掛けられたマイクを取り外すした。


「お見苦しいところをお見せしたね」


「いいえ。お気になさらず」


「さて、話はどこまでだったか…そう。TLOだ。表向きは国連の一部加盟国が中心となって発足した組織となっているため、実際にはNATO配下の組織として位置付けられている。しかし直接的なコントロールはここペンタゴンが取り仕切っている。」


「海軍指揮下ですか?」


「いや、国防長官直轄だ。我々としては初期段階から君の育成にはこちらで関わりたかったが、正直なところ、海軍の諜報部だけでは君のトレーニングは不可能だった。特殊能力に関することは、奴ら…いや、CIAが優れているし育成体制も整っている。君の育成に関しては我々は共同体制を取ることにした」


「僕はタイムリーパー候補生になったという認識で間違いないでしょうか?」


「君はまだ若いが、CIAでのトレーニングも早々に終えて、大学院の過程も全て修了した。もうビルドアップくらいしかやることがないんだろ?これから2週間の休暇後に、TLOでのタイムリープ訓練に入って貰った方が良いと我々は判断した」


「光栄です」


「ちなみにだが、君はフューチャーとパストなら、どちらのリープに志願する?」


「勿論パストです。国連の決議は僕も既に知っています。歴史介入をするならば、僕が…歴史を変えに行きます」


「…頼もしいな。パストリープは、フューチャーリープより何倍も危険を伴うことを承知の上でのことか?」


「はい。危険は勿論知っています。成功率が低いのですよね」


「そう、フューチャーリープが成功率が90%に対して、パストリープは成功率は、試験実験を入れて65%だ。落命した者もいる。時の藻屑と消えた者も」


「承知しています。僕が、その成功率を上げてみせます」

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