第3話 パンドラの箱 ③
3階の南窓際のソファにリクが座って
葉巻きの先端をシガーカッターで切ろうとしているところだった。
「何が見つけたようだね、ユージン」
リクはそう言ってニッコリと微笑んだ。
「庭に箱のような何かが埋まっているみたいです。僕はあの宝の地図の示す「宝物」を見つけたんじゃないかって」
「おお、そうか!そうか!」
「はい!それでお父さんの掘削機で地面に穴を開けたいんのですが…」
「後で土を埋め直してくれるのなら全く構わないよ」
リクはプカプカっと気分良さげに葉巻を燻していた。
「おじいさま、家の中で葉巻を吸うのはいけないです。おばあさまに見つかるとまた叱られますよ」
「メグは今、千春の所にいるんだから、誰かさんが告げ口しない限りは叱られることはないだろ?」
リクはそう言ってイタズラげにウインクをした。
「じゃあ、僕は庭を掘ってきます。期待して待っていてくださいね」
僕はリクに手短なハグをして、また玄関へと駆け降りた。
玄関を開けて外に出るや否や、庭にいる父に大声で言った。
「お父さん!おじいさまが穴を開けてもいいと言っていました。掘り起こした後に、きちんと元通りに土を埋め直して欲しいって」
「オーケ!了解だ」
父は既に倉庫から簡易掘削機を運び出していた。
「それにしても、誰が何をこんな深さまで埋めたのかな?」
僕は独り言のようにボソッと呟いた。
「『宝の地図』の作者が埋めたのだろ?」
「地図の作者って誰です?随分と古い地図のようだけど」
「この地図をお前にくれた人じゃないか?あの人は、こういった謎解きめいたことが大好きだからな」
父はそう言って3階の窓辺に視線をやった。
簡易掘削機のスイッチを入れると辺りにけたたましい音が鳴り響いた。
「お父さん、ケースには傷をつけないように掘ってくださいね」
「ああ、わかってるよ。大丈夫だ」
父は手慣れた様子でどんどん掘削を進めた。
「お父さん、もう直ぐです。あと30センチくらいで対象に到達します」
僕は地中レーダーで掘削の進み具合いを慎重に見ていた。
「了解。ここからは手で掘ろうか。そこのスコップを取ってくれ」
そう言って父は掘削機のスイッチを切った。
「はい…」
僕は穴の中に入り込んでいる父にスコップを手渡した。
父が勢いよくスコップを土に刺すと、
ガチっという金属にぶつかる音がした。
僕も慌てて穴に降りて周辺の土を手でかき分けた。
すると箱の一角が地表に出た。
「これ…ジュラルミンケースてはないでしょうか…」
周りの土がジュラルミンケースに重くのし掛かり
土の中から引っ張り出そうとしても全く動かなかった。
「ユージン、スコップで周りの土を掘り起こす。危ないから下がっていなさい」
父が僕に言った。
「ぼ、僕がやります」
「…スコップは重いぞ」
「大丈夫です」
父からスコップを受け取ると、僕は夢中で土を掘り起こした。
汗だくになりながらも、
僕はジュラルミンケースの中身が知りたくて心底ウズウズしていた。
この中のものは、いっそ財宝じゃない方がいい。
何かワクワクするような、
今まで見たこともないようなものが入っていたらいい。
僕は湧き上がる期待で興奮を抑えきれなかった。
「ふぅ…やっと出て来た」
僕はジュラルミンケースを地上に引っ張り出すと直ぐに父に渡した。
ケースそのものには然程重さがない。
中身は一体何だろう?
「良くやったな、ユージン」
父はスキャナーを取り出すと、
ジュラルミンケースを外側から慎重にスキャンした。
「中に生物反応なし…爆発するような危険物も…なしだ」
ジュラルミンケースは外側をコーティングされていて、
開けるのに相当な苦労を伴った。
父が様々な工具を駆使してやっとの思いで蓋を開けると、
更に一回り小さいジュラルミン製のケースが出てきた。
僕と父は同時にため息を吐いた。
「これを埋めた人は相当慎重なタイプですね」
僕が言うと、父は高らかに笑った。
「この中身はとても重要で、そして確実に残したいものなのだろうね。何かの目的があるのかな」
僕は父に促されてジュラルミンケースの蓋をそっと開いた。
「これは…?プリントされた…写真?」
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