第10話 街

"ようやく 何事もなく 街にたどり着くが......


噎せかえる程の 悪臭が漂う


建物も家も 言葉にできなく......無残な形だけが 状況を物語っていた......噎せかえりながら 涙が溢れる 僕たちの街が......壊れた...僕の目には 絶望の二文字が 焼きつく......これは ただの始まりに 過ぎないのに...心が折れた瞬間だった......。


僕の足は 一歩も前に 出す事が できない.....立ち尽くすとは この事なんだ......。


その時


ウォーン ウォーン ウォーン ウォーン


ウーーーーン ウーーーーン ウーーーーン


何処からか サイレンが 鳴り響く


次の瞬間 今まで人の気配が しなかったのに 辺りに 人が群がり 始めた。


その異様な 光景に胃液が 込み上げる......


その時


僕の体が急に 強い力で 引っ張られる


ユミさんが 僕の手を 強く握り 僕は されるがまま 心と体が 別の感情のまま 走ってた。


僕たちは 息を切らしながら 建物の陰に隠れ 様子を見守る......すると


3台の 黒塗りワゴン車が 人の群れの中で停止


ワゴン車 めがけて 人が群がる......ガチャン


出てきたのは 軍人!?散弾銃を肩に掛け 群がる人を 威圧しながら ダンボールを 1台に5箱位取りだし 道路に積み上げ......


次の瞬間 僕は目を奪われた。一斉に皆が 膝まずき 両手を差し出す......これは......


ダンボールの中から 何かを取りだし ばらまき始めた


「!?」


怒りで 体が震える 家畜にエサを 与えるように


ばらまき 飢えないために プライドも捨て ただじっと 時を待つ人たち......僕は 唇を噛みしめ この光景を 見るしか できなかった。


どうする事も できない自分に 吐き気がする...


その時


ばらまかれた 一個がユミさんの前に......それを そっと拾い上げ 服の袖でやさしく 汚れを拭き取り


「食料だ!」


そう言って 僕の手のひらに......それは カチカチの パンだった......僕は こんな物と投げつけて やりたい気持ちと 裏腹に 何も食べてない 空腹さに 貴重な食料を 粗末にできる はずもなく涙が溢れた......


「みんな......同じ気持ちなんだ」


ユミさんが 小さな声で 僕の心を 撃ち抜く...


この日から 僕は......意味のない プライドを捨てた。"

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