鬼のいぬまに

はい、始めます。

『一話へ』

まず、括弧中の句点ですね、他でも触れてるのでこれ以上は言わないでもわかってくれるとおもってます。


『赤鬼はその場に崩れ落ちると、大きな砂埃が宙に舞う。』


赤鬼は、ではなく赤鬼が、ですかね。

文法的なことには詳しくないですが、「は」はそれ視点の描写みたくなるので、まぁ、別にそれはそれでいいんですがね。えっと、感覚的なことしか言えないんで例を出すと、

『赤鬼がその場に崩れ落ちると、大きな砂埃が宙に舞う。』か

『赤鬼はその場に崩れ落ちると、大きな砂埃を宙に舞わせた。』

ってなると思うんですよね。あくまで感覚の話なのでそれ以上詳しい指摘はできませんが。


『すると、真っ赤な目が光った。

 漆黒の鬼は咆哮する。先ほどの鬼とは格の違う、一轟で死を連想させる。そんな号哭。』


この場合のすると、は若干不自然じゃあないかなと。するとって事前に何かアクションがあって、その結果を説明するものだし。

この場合の前の文は何か起こったというか何か出てきて、その何かの外見を説明してるだけだから。


それ以外は、うん、時代感とかは上手く伝わってきて良かったんじゃないかなって思うね。

概ねは伝わってくるし。じゃあ、だとすれば。

そこら辺の想像の初歩はできてるから、レベルを一段階あげたことをすべきかなと思うね。

つまり何かってぇと、キャラクターっぽい動作を考える。


最初の方に出てきた、

『腰をさすりながら、すぐ横に建てられた牛小屋の前に立つ。』

なんかはお爺さんっぽい動作かもしれないけど。

あくまで「よくある老人の仕草」なんだよね。

そうじゃなくて、その人物のキャラクター性がわかるような、例えば現状出てきたキャラクターにはふさわしくないかも知れないけど、「道の隅に痰を吐く」とかね。出てきたら一瞬でキャラクターが浮かぶよね。そういうのが大事なんだよね。想像力だね。まぁ、実際やると難しいけどそういうことをやってみると良いと思うね。


現状、この作品ではあくまでキャラクターが動いてるだけ、ままごとの領域で、本当にこんなキャラがいたらどういう動きをして、どういう風な動作で、そして意図でそれを行ってるかとか、いまいちキャラクター性とかその本質のようなものが見えてこない。そこら辺を気遣ったら尚、解像度も上がると思うね。


僕が思うに小説家は俳優になる必要があって、その人物に対しての完璧ななりきりが必要なんですね(断言)。


っていうか一話でこんな書いてたら長くなるじゃないか次いくわ。


『二話へ』


はい。

『 あれから数日が経った。 

 まだ老爺の無惨な姿が脳裏に焼き付いている。 


 人との関わりを恐れて人里を離れるようにまでなってしまった青年は獣道をあてもなく彷徨っていた。』


これ系も、僕がなりきり不足と断じたいことではあるけど。

実は小説家の皆さんは知らなかったと思うんですけど、キャラクターってそれぞれ過去があるんだよね。(な、なんだってー!?)

ってのはつまんない冗談として。


キャラクターにはストーリー開始時点なんて関係ない地続きの過去があって、

それだから、ライトノベルでよくある、今までも似たような失敗をしてきたはずなのに、ストーリー中で起きた失敗だけ気にしてる主人公とかめっちゃ違和感マシマシで気になります。


開始時点に起きた失敗でいっぱいいっぱいになった、とか、限界が来た、とか…或いは今までで一番ひどくて気に病んだ、とかならわかるんだけどね。書き方が設定だけはある空白の過去なんだよね。なんか、出来事への対応が生まれて初めて~(アナ雪)なんだよなぁ全部って感じ。


何度か繰り返してるはずなのに思い悩んでるのが直近だけなのよね。だから、何度も繰り返してきたってのが過去じゃなくて設定に見える訳よ、逆にここで違和感つくって実は彼の脳内設定でしたってんなら「ふぅーん、やるじゃないか」ってなるけどね、そうじゃないでしょ?

キャラクターの過去を想定しよう。


『三話へ』

こういうあから様な解説は冷める人もいるからやめた方が良いね。

せめて別でそういう場所作って、そこでやろう。

『 【煌とは】


 人の誰もが奥底で眠らせている神秘である。これを用いる事を煌術。封師達が使う鬼と戦う術すべである。』


『見えざる目はじっと森を見つめている。』


見えざる目とはなかなか言わない気がするな。


『四話へ』


『 ここは、上野(群馬と埼玉の一部)と甲斐(山梨)、そして信濃(長野)と三つの境にある土地である。』

親切でいいね。


『 いつの間にか城主と百人ほどの民がいた。簡潔にまとめるとこうだ。だが今は近隣から人が流れ、着々とその規模は大きくなっているらしい。』

簡潔にまとめる前の話をしていないのに、この並びで簡潔にまとめるとこうだ。って言われてもね。より正確には、


『その噂を不思議そうに話してくれた。


 いつの間にか城主と百人ほどの民がいた。簡潔にまとめるとこうだ。だが今は近隣から人が流れ、着々とその規模は大きくなっているらしい。』


前の文章的にこれからしっかり説明してくれるものかと思ったのに、いきなり纏めようとしてるから違和感があるんだよね。


『その触手の束はギチギチと音を立てて圧縮された。』

これじゃ触手が圧縮されてるぞ。


あと戦闘描写は練習したほうが良いわ。みんなそうだけど、単なる説明になりがちで、緊迫感がなく、しかも大して状況説明もできてないってことが多いもの。わからなかったら、『大嵐レイは挫けない。』の大嵐レイの受難を読もう(露骨な宣伝行為)。まぁ、あれがちゃんとしてるかはさておき。

『六話へ』

はい。

『鷹丸の前に現れた希望。それは鬼であった。』

いきなり誰視点だよって感じ。


あと、

『 人には対処のできない代物ならば、その鬼の元へと行くしかない。納得がいき、すぐに決意は固まった。』

続くここ。この作品時々主語が全然無かったりする点が不親切だからなんとかしてください。


『七話へ』

これもね。

『 弥彦の力強い言葉に、白飾様は驚いた。これまで、ここまで凛々しくものを言った事があっただろうか。昨日の出来事が変えたのだと嬉しく思う。』

彼がここまでとか、ちゃんと誰の話か説明したら解りやすいのにね。不十分すぎるよね。


そもそも説明不足過ぎるわ全体的に。

なんだろうな。一見いらないけど不要じゃない部分がない。

要所要所で必要な間が不足している。演出で考えろ、文字じゃなくて。

映像だったらどう演出するかで考えて必要な場面を追加しなさい。いや、やり方は人それぞれだけど、そういう細かな気配りができてない。読者に対してじゃなくて作品に対して、ね。

何かぼそっと呟くんだったらのそっと立ち上がって外の景色を眺め、口の端から溢れ落ちるようにそっと呟きやがれってんだ。

『弥彦の姿が見えなくなると、開かれたままの襖から覗く青空を眺めた。ゆっくりと白い雲が流れていく。


「あれからもう8年か……。」』これのことね。まぁ、上では例えばの話だから同じ場面ではないけどね。ともかく、細かな描写が足りてない。間を演出するために文字数を増やすってのもあるんだよ、場合によっては。…って、思った。


『八話へ』


『「お夏ちゃん。どうかした?」


 お夏の目からは涙が溢れていた。

 お夏はそれを必死に止めようとするが、中々止まらない。

 2人はお夏を落ち着かせようと、境内に続く階段に腰を下ろした。

 その涙が落ち着きを見せた頃、お夏がその口を開いた。


「父も母もこの町にくる途中で死にました。来る前に神様に祈っていたら、もしかしたら……。」』


二人の姿に父母を重ねた…的な理由は作者的にあるかもしれないけどね。

そんなタイミングでそこまで泣くかなぁってのが僕の印象で(悲しくなるってとこまではわからんでもないが)、そこら辺は何とも言えない(個人の裁量だから)けど、参拝のタイミングってのがあくまで個人的にはずれてるような印象を受けた。まぁここは単純に僕の好みとかの話だから。


『十一話へ』


『煌術はまず、煌を知覚する事から始まる。

 だが、それを晴姫はできていない。

 纏っていた煌は言わば防衛本能のようなもの。無意識の力。煌の存在も鷹丸に出会い、始めて知った。』

僕の馬鹿長い説明を真似しろとは言わないがもう少し手順を踏んで説明してもいいと思うんだ。


『まとめ』

とりあえず最後まで読んだよ。でも既に指摘した箇所と似たり寄ったりの問題点ばかりだったから途中から指摘はやめておいた。流石に自分で探してね。

んで、まとめると。

「世界観はある程度しっかりしていて、実際の歴史なんかもまぁ、っぽさと呼べるものが出ているので悪くは無いでしょう。ただし、描写の質が低い。一つ一つは別にそこまで下手でもないようだが、段取りが悪く、また本来もう少し描写を要するような箇所も一行で済ましていたりする。それから、全体的に主語が不足していて、これは誰が言ったのか…わかるけど不親切過ぎる箇所が多々見受けられる。そのせいで、一体誰の視点で書いたかすら解らない場所すらあって、これは本当に致命的なので早急に直した方が良い。一方キャラクターは、まぁなりきりは若干浅いがそれなりには魅力を感じるくらいにできていると思うので、描写の腕さえ上がればもっと解像度の高い、魅力的なキャラクターを描けることでしょう」

って感じです。


そんじゃ以上です。


企画への意見、ここをこうした方が良いんじゃないかとか、言い過ぎじゃない?とか、もっとここ指摘して欲しかったとかあればどうぞ。

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