第19話 目覚めると普通に実世界

 目覚まし時計の鳴る音が聞こえる。

 えっと、フレイア大丈夫かなぁ……とか思ってしまう。

 目覚めると目の前には、でっかいおっぱい鎮座しているし、メイアは隣で俺の腕にしがみ付いて寝ている。


 そんな事を考えながら目を覚ますと、いつもの見慣れた自室の天井だった。


「俺、夢でゲームの世界で旅をしていたのか」


 時計を見ると、月曜の朝だ。


 テレビのスイッチを入れると、昔のゲーム機の画面が表示されたままになっていた。

 丁度セーブして終了のあとに、リセットを押しながら電源を切るメッセージが表示されている状態だった。


「あれ、俺、このゲームで開発用コマンドを入れてその後の記憶が無いんだよな」


 とりあえずゲーム機の電源を落とし、朝の情報番組に切り替える。


 この日を境にゲーム世界の夢を見る事も無くなった。


 数週間が過ぎ、ふと思い出したかのように魔王討伐3の攻略サイトを見ていた。

 夢の中ではエロイヤン三世がマッチョな四世なっていた事が強烈に印象に残っていて、なんとなく調べる事にしたのだ。


「攻略サイトを見て……えっとどうなっているんだ?」


 魔王討伐3は オリジナル・後継機種版、モバイル版、オンライン版、有志改造版等多々製作されている。

 一番ヤバイのが有志改造版でシナリオやマップ、魔法効果やアイテムパラメータなどが書き換えられ戦闘システムだけはオリジナルだが、出てくる敵キャラや攻略パターンも別物となっている。


 ただ攻略サイトを見てもハードコアモードが搭載されいてるのはオリジナル版のみであり、後継機種版はオリジナル版では再現不可能(倫理的な意味で)な部分を除きシナリオや難易度設定の変更はない。


「エロイヤン四世に関係するシナリオはないよなぁ……有志改造版サイトを見てもそんなイベントは見つからない、あのあと一体どうなるのだろう?」


 難易度変更による攻略方法の違いや狩り場の違い等が紹介されている程度で大きなシナリオの変更は無さそうに見えた。


「まぁ夢の中だから色々変わっている所もあると思うけど、気にはなるかな」



 ただ、気になる物のあの日からゲーム世界の夢をみる事は無くなった。



 一ヶ月ほど過ぎただろうか、どうしてもエロイヤン四世の続きが気になってしまっている。


 ゲーム機の電源が入っている状態で寝ると、あっちの世界に行けるとかなのか?

 仮説を立てて、ゲーム機の電源を入れて魔王討伐3のタイトル画面を出したまま眠って見たが、ゲーム世界の夢をみる事は無かった。


 普通に日曜日の朝を迎え、ゲーム機の画面を見て思い出す。


「そう言えば、データをロードする前に開発コンソール用のコマンドを打ち込んでセーブデータを呼び出していたか……」


 開発コンソール用コマンドを入力し、セーブデータを選択ロードすると急に眠気に襲われる。


「さっき起きたばかりなのに眠い……当たりかもしれない、でもヤバイ目覚ましをセットして……」


 俺は眠りについた。


 ・・・・


「勇者殿、お気づきになられたか?」

「えっと」

「えっとじゃないです!」

 フレイアが真っ赤な目をしてこっちを見ていた。

「お兄ちゃん!何気を失っているのだ!」


「俺どうなったんだ?」


 前回宰相と話をした後に突然意識を失い、意識がないまま城に用意された宿泊場所へ移動。

 ベッドで数日間目を覚まさずに、何をしても目を覚まさなかったらしい。

 そして突然起き上がると、意識不明のまま宰相の前に移動し、意識を取り戻したのだという。


「みんなすまない、心配をかけたようだ」

「心配とかじゃないです!」

 フレイアが泣きながらこっちを見ていた。

「突然意識を失うなんて、いつもなら数分で目を覚ますのに今回は数日間何も反応が無かったのだぞ!」

「お兄ちゃん、私はお兄ちゃんがいなくなっている期間が長かったから驚かないけど、でも目の前で全く反応が無くなるのは大変だったのだ!」


 彼女達の言動で何となく理解した。


 コッチの世界で何日過ごしても実世界では俺が寝ている時間の間に起こった事となっていて、今回はゲーム機の電源を切ってしまったのでその間は俺のゲームの世界での反応が無くなってしまったみたいだ。


 どうやら、ここはゲームの世界の夢みたいだが、ゲーム機が仲介する事でこの世界の夢を?冒険に導かれているのかもしれない。


 ただ、この意識を失う現象については仲間達にも説明しておかなけばならない。

「メイア、フレイア、セレス、インテグラ、すこし内密に話したいことがある」

「お兄ちゃん、何を改まっているのだ」

「この先俺は何度か意識を失う事があると思う、ただ今回のように長期に渡って意識を失わないように注意するが、短い時間は意識を失う事があると思う」

「それは何故っすか?戦闘中だったら危ないすっよ」


「確かにそうだ、でも戦闘中に意識を失う事は絶対に無い、今回の宰相の話を聞いた後に俺は違う世界の夢を見たんだ」

「その違う世界の夢ってなんなのだ」


 夢ではなく現実世界に戻った時の事なのだが、彼女達には伏せておく。


「時々意識を失うときはその夢を見ている時、今回はそれが凄く長かったようなんだ」


「意識を失う夢って悪夢みたいな呪いっすか?」

「いや、別世界の夢で俺は普通に平和な生活を送っている、戦いの無い世界だ

 、ただその世界の夢から覚めると意識が戻るようなんだ」


「やっぱり悪夢じゃないっすか」

 セレスは聖職者なので呪いや悪夢に詳しい事もあり、色々突っ込んできた。


「ただ、俺はその世界から勇者としてのスキルを学んでいる事もあるから、呪いとも言い切れない、魔王を討伐するための知識も夢の世界で身につけているようなんだ」


「私達が攻撃すると必ずクリティカルヒットが出る事とかか?」


「まぁそれもあるかもしれない、勇者スキルの一つとして理解してもらえれば説明せずに助かる」


「まぁお兄ちゃんが無事に戻って来られるなら私はかまわないのだ」


「エド、あまり心配をかけさせないでくれ」

 フレイアは真っ赤な瞳で俺の両手を握り約束してくれるように見つめていた。

「長く気を失うような前触れがあれば、事前に話をするよ」


「そうしてくれると、私達も心の準備ができる、今度からは事前に教えてくれよ」


「ああ、そうする」


 仲間達に事情を説明し、心配させないことを誓い再びいつも通りの関係へと戻ったのだった。





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