第11話 宿屋での出来事
ドワーフ洞窟のそばにある第二の街。
本来ゲーム中ではレベル上げ場だが、ここでヒントを貰うと東に進んだ方向に、ほこらがあってそこで転移ゲートを潜ることで別のフィールドに移動できる仕組みになっている。
転移ゲートの前に魔法の扉があるので、魔法の鍵がないと通れない仕組みだ。
ドワーフの洞窟から出るとすでに夕暮れとなっていた。
「どうする、もうすぐ夜だし街の宿屋で一泊するか?」
「とくにHPとMPも減っていないから休む必要もないぞ」
「フレイア姉、夜に草原や森を移動するのは危ないっすよ」
このゲームの夜は魔獣の発生率が上がり、ときどきさっきのようにダートワームみたいな次のフィールドに出る魔獣が出るシステムとなっている。
第一の街付近ではスライムや赤スライムのように決まった魔獣しか出ないが、ここまで来ると、次のフィールドが近い事もあってときどき混ざって強敵が出没する。
フレイアはやる気だったが、セレスの提案でいったん近くの街に入る事に決定する。
街の中に入り、最初に行ったのは武器屋だ。インテグラとセレスの武器を買うため。
夕暮れ時の武器屋に入ると、ハゲたオヤジが革の前掛けをして武器の手入れをしている。
「いらっしゃい、どんなご用で?」
「この二人が装備できる武器と防具を探している、予算は1000ゴールドだ」
「いま用意するよ、少し待ちナ」
店主は店の中をウロウロすると武器をテーブルの上に置く
どうの剣 100G
どうのナイフ 80G
皮のローブ 320G
皮のドレス 420G
皮の帽子 80G
提案された装備品を見るとソードやナイフも装備できるんだなと改めて思った。
店主に皮の帽子を二つと提示された全ての装備を買う事を伝え
少し予算オーバーだが1080Gを支払ってインテグラとセレスの装備を新調する。
「買い取りもやっているのか?」
「ああ、武器や道具の買い取りもやっている、何かあるのか?」
今まで二人が装備していた武器、防具、それに敵がドロップした大量の棍棒とアイテムバッグの中を占拠しそうな回復ポーションと毒消しポーションを適量残して全部売った。
「凄い量だな、勇者となると回復ポーションをこんなに持ち歩くのか?」
「最近運が良くてな、魔獣がドロップするんだよ」
「あまり聞かないが、ときどきドロップするって聞いた事があるな、お客さんは運が良いんだな」
「まぁな」
売った金額が1500Gを超えたのでラッキーだった。
常にクリティカルヒットが出る設定なのでレベル上げの考え方が変わり、本来はこの辺でレベル上げをしていると金が貯まるバランスになっているが、レベル上げを無視しているので金が貯まらない。
この買い取り金はとても貴重なのだ。
勇者や戦士が使える武器や防具はこの次の街に行った方が良い物が買えるのでここでの買い物はせずに、夜の移動はやめ宿屋に向かう事にした。
・・・・
宿屋に到着すると70歳位の老婆がカウンターにて店番をしている。
「婆さん五人だけど大丈夫か?」
「一人五ゴールドですじゃ、先払いで二十五ゴールドいただきますじゃ」
序盤二番目の街なので宿屋の値段も安く設定されている。
指定された部屋に入ると、ベッドが四台しかない。
「おいエドどうする、ベッドが四台だぞ」
「婆さんにクレームだな」
受付に戻り婆さんにベッドが四台しかない事を告げると
「若い者同士仲良くやって貰いたいのじゃ」
「いやそりゃマズイんだよ、隣の部屋からベッドを持ってくるとか隣の部屋を使わせてくれるとか出来ないのか?」
「耳が遠くてのぉ、聞こえんのぉ」
「おい婆さん、困るんだよ」
「はぁ?聞こえんのぉ」
「ちょっと婆さん、頼むよ」
「聞こえんのぉ」
婆さんは聞こえんのぉを繰り返すだけだ。
クソ、ゲームのあるあるじゃねぇか。一定回数以上NPCと話すと同じ言葉しか返ってこないあれだ。
そんなわけで、宿屋の部屋で五人で会議中だ。
「私はお兄ちゃんと寝るのだ」
「この前は自宅だったから黙認しましたが、さすがに年ごろの娘さんとお兄さんを寝かせる訳にはいかないですわ」
「姉さん達は他人でも私は家族だから関係ないのだ」
置かれているベッドはシングルサイズが四台、人間が五人。
フレイアは身長が百七十五cm以上あるので一人でベッドを使っても狭い位だ。
インテグラとセレスはそれぞれベッドを使うと言っている。二台並べて三人で寝ればそこそこの広さになるから、メイアもそこに入り俺は一つのベッドを使えば良いと提案してくれたのだが……。
俺と寝ると譲らないメイアが話をおかしくしていたのだ。
「メイアさぁ、一応パーティだからあまり変な感情が出て信頼関係がなくなるのは困るんだ、俺のお願いもあるからメイアはベッドで寝て俺はそこにある椅子を並べて寝るから大丈夫だよ」
フレイアがメイアにこっちにおいでと言っている。
「ベッド二台並べれば広く使えるからさ、メイアもこっちに来なよ」
「じゃぁお兄ちゃん、私が眠るまで一緒に横にいるのだ」
メイアの妥協案を受け入れ、なぜか四個並べたベッドの真ん中にメイアと俺が寝る事になった。
なぜ四台ならべる?
メイアが真ん中で俺がその横に来ると、なぜか俺の隣りにフレイアが横になる
「エド、信用しているからな、変な事をするんじゃないゾ」
装備品を外して薄着のフレイアは恥ずかしそうに背中を向けている。
「明かりを消すっすよ」
窓から入る月明かりに照らされて、天井をボーッとみている。
メイアの隣のセレスがちょっと場所が悪いのかこっちのベッドに転がり込んで来ると、メイアが押されるようにこっちに近づく。
メイアは慣れているから構わないんだけど、となりのフレイアの事を意識してしまい、こんな所で寝られる訳がない。
フレイアも寝てしまったのか最初は背中を向けていたが寝返りをうちこっちに近づいて来る。
月明かりに照らされるフレイアの髪が凄くキラキラとしていてその美しい顔が隣で吐息を立てて眠っている。
シャツの上からもわかる大きな双丘や細く締った腰回りが、チラリと見えシャツの下は下着以外何もない状態なのだろう。
目のやり場に困る状態だし、このままでは一睡もできそうにない。
メイアは俺の腕をガッチリと腕組みしていたが、眠ってしまっているのでその力もない。
メイアの腕をゆっくりと外しベッドから起き上がろうとした時だ。
「おい、フレイア……」
突然フレイアの腕が俺の首をガッチリとホールドしてしまう。
彼女の口元が俺の耳元で吐息を立てている。
双丘が俺の肩と腕に食い込むように密着し完全に身動きが取れない状態になってしまった。
「もう動けない……」
何度もフレイアに小さな声で放してくれと言ったが、全く反応はなかった。
まぁ俺もリアル世界ではオッサンだから悪い気もしないし、まぁいいかとこのまま眠る事にしたのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます