第8話 メイアが仲間入り
この勇者討伐3、クリア後一定の条件を満たすと、勇者外しプレイもできるようになるのだがゲームシステム上、勇者にしか使えないアイテムや魔法があり、後半結構詰むシーンが多い。
物語の裏進行上として、勇者なしで魔王に挑んでも勝てない事をゲーム開発側がアピールしているような設定である。
ラスボスは勇者の剣を使う事でラスボスを弱体化させる事が出来、それを使わないとHP MAX999のチートコマンドを使っても三ターンでHPを削られる鬼畜仕様になっている上にラスボス魔王は普通に二回連続攻撃をしてくる。
プログラム上では魔王戦だけは一撃で最大HPの40%以上が削られる仕様になっている事が有志の解析により判明している。
普通のレベル上げでは下手をすれば二ターンか二回連続で攻撃を受ければ仲間が死ぬ設定だ。
勇者魔法も強力でMP消費は多いが、最強魔王には最強魔法でみたいな考え方があり、鬼畜な魔王でも勇者の最強魔法の前では大ダメージを受ける設定になっている。
だから、ゲーム中に勇者だけのパーティが存在できれば魔王も比較的容易に倒す事ができるのではと思ったほどだ。
でも、ゲーム中に勇者二人って構成は見たことがない。そもそもゲーム中に勇者二人が設定にないからだ。
・・・・
「メイアって勇者だろ?どのみち俺とはパーティに入れないだろ?」
実際、王との謁見が終わったあとに勇者と思われる青年に声をかけても、同じパーティを組めないと言われて断られている。
「なにそれ?そんなの聞いた事ないのだ、一緒に行くだけなら大丈夫なのだ」
「エドちゃん、メイアちゃんはまだ成人していないから職業が決まってないのよ」
「私は勇者学校を卒業していないから”勇者見習い”って状況なのだ」
「でも母さんが反対だろ?」
「あら、見た事もない人にメイアちゃんを任せるくらいならエドちゃんの方がよっぽど安心よ、それにエドちゃんは二回魔王討伐に成功しているしね」
逆に考えればそうなるわけか、学校卒業して知らないパーティに参加させるより、今このメンバーなら全員顔見知りだからよっぽど安心して任せられるって事。
そうに言われると俺も断りにくくなるし、メイアも勇者学校を卒業すれば強制的に王様に呼ばれフィールドに投げ出される訳だから目の届く範囲に居れば危険な目に会わせる事もないだろう。
メイアの件について仲間達にも了解を取らなければならない。
「みんな、メイアを仲間にすることに問題ないか?」
「私達はエドの意見に従うまでだから気にしないし、LV5の勇者見習いなら十分戦力になると思うから反対もしないぞ」
「私もですわ」
「問題ないっす」
あっさり三人の了解は取れてしまう。
「でもメイアちゃんの勇者学校はどうするっす?、王様が作った学校だから勝手にやめると怒られるんじゃないっすか?」
「それは大丈夫、エドお兄ちゃんの活躍は学校でも有名だからお兄ちゃんと一緒に魔王討伐に行くって言えば一発OKなのだ」
「そういうもんすっか」
少し疑問を持ちつつセレスはメイアの話を聞いていた。
「それじゃ勇者学校に報告してから一緒に行動するようにしようか」
「ありがとなのだ!エドお兄ちゃん」
メイアにしっかり腕組みをされてしまい、もう離れないぞみたいな感じになっているが、母さんが「それじゃエドちゃんが動けないでしょ」って話をするとメイアも渋々腕組みを離す。
母さんは俺の親設定だからチャイルドコンプレックスでも理解できるが、メイアは十年間消息不明の兄に対してブラザーコンプレックスってのも無理があるよな。
普通ならクソ兄貴、放浪者扱いだけど、ゲーム設定を引き継いでいるのだろう。
*****
自宅を出てメイアを先頭に勇者学校なる所に向かっている五人。
ゲーム中にそんな施設はなかったが、どんな感じになっているのか興味がある。
ゲーム中の歴史と俺がプレイしてた頃のゲームと完全に異なる所だ。
「こっちって教会の方だよな」
「教会の隣りに勇者学校があるのだ」
ゲーム中にも教会の隣りに大きな空き地があって、無駄に広い場所でなぜ何もないのか疑問に思った事があるが、そこに学校が出来ているとしたら、本来はそんなシナリオが用意されていたのかもしれない。
勇者学校はこの街の施設では最大規模の学校施設である。
現代の幼・小・中・高一貫教育学校みたいな物で、勇者の素質のある子供を集めて勇者として送りだす、悪く言えば勇者製造学校だ。
十年前に俺が二度目の魔王討伐に成功した事がきっかけで学校制度が出来た。
これは魔王が一度ではなく二度目の復活があり、三度目が訪れる事を予測して王様が作った学校である。
「改めて見るとでっかい学校っすね」
「生徒さんがたくさん登校中ですわ」
「寮生活をしている住み込みの生徒もいるから、だからたくさんいるいるのだ」
最近では勇者学校と言っても、勇者クラスと冒険者クラスがあり冒険者も育成しているので、ここを卒業した勇者は、冒険者クラスの冒険者達とパーティを組んで即フィールドデビューする事も可能だ。
完全にゲームの世界とは異なっていた。
そのまま進んで行くと、校門付近には先生が立っている。
「先生、おはようなのだ!」
「メイアさん、おはようございます、そちらの冒険者の方はどなたでしょうか?」
先生は不審者を見るような目で俺の方を見ている。
「エドお兄ちゃんだよ」
「えっ!あの勇者エド様ですか失礼しました」
この世界を最後にしたのは十年前、自分では実感がないが容姿とかもかなり変わっているのだと思う。
魔王を討伐した英雄でも表舞台に出ていなければ十年も経てば一般人だ。
「学園長先生に用事があるから、今から大丈夫ですか?のだ」
「メイアさん、ちょっと職員室まで一緒にきてもらえますか」
俺達は先生の後に続き職員室に向かった。
朝の慌ただしい時間だが、勇者エドが来た事を告げると学園長から歓迎を受ける。
「よくぞ無事に戻って来られた、勇者エドよ」
魔法使いが被るような三角帽子を被り、白い長い髭を生やした魔法使いのような学園長だ。ゲーム内の
王様みたいな挨拶をする人だなと思ったが、この人も十年前に消息不明になった俺の事を心配していた一人だったようだ。
「勇者エドよ兄妹であるメイアと一緒とは、ついにこの日が来たのか」
爺さん何を言っているんだよ。
「私は夢で神からのお告げを受けそれを見た、勇者エドと勇者メイアが仲間と共に魔王を討伐する姿を!」
もう決定事項だった。
「学園長先生、じゃあ私は今日からエドお兄ちゃんと魔王討伐に出かけても大丈夫だよね」
「ああ、問題ない、神のお告げじゃ、これで世界に平和が訪れるのじゃ」
「良かったね、エドお兄ちゃんこれからずっと一緒に旅ができるよ」
こうしてメイアが正式にパーティ入りしたのだった。
****
「勇者殿、その棍棒ではこの先色々と大変であろう、この勇者学校支給の見習いの剣を差し上げるとしよう」
この見習いの剣、市販品の”どうの剣”相当の武器みたいだ。
どうの剣と違うのは見た目がカッコイイ事と、一応属性武器でチョットだけ どうの剣より強く、道具として使うと”ファイア”魔法の初期レベルが使えるのだ。
単純な攻撃力なら鋼の剣の方が強力だが、ファイアの魔法を使い青いスライムなら普通に倒せる優秀な武器なのである。
俺から見ればどうせなら近衛兵達が持っている”鋼の剣”くらいはクレよと思うが
王様が100ゴールドしかくれないので、見習いの剣を貰えるだけでもマシかと。
ありがたく受け取り、少しだけ攻撃力が上がった。
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