第53話 sideガイム・アイリス 抵抗㉛

放たれた砲弾は、まっすぐに敵空母へと飛んでいきそのまま大きな爆発を引き起こす。


さらに航行不可能になった敵空母に向けて地中海艦隊のほうから激しい砲撃が浴びせられる。これによってすぐに、敵空母2隻は大きな炎に包まれながらすぐに沈んでいった。


「敵艦隊の動きはどうなっている?」


「主力空母を失ったことで後退を始めたようです。どの戦線もおそらくすぐに片付くことになるかと」


「わかった」


「それとエミル様から深追いをしないようにとの命令です」


「了解だ。とりあえず地中海艦隊と合流するぞ。完全に戦闘が終了するまでは地中海艦隊とともに動く」


「了解です」


第2遊撃艦隊はそのまま地中海艦隊と合流すると損傷した艦の護衛につく。すでにこの海域からは敵の艦がいなくなっているとはいえ、どこから攻撃を突然受けるかはわからない。備えておくに越したことはないだろう。


敵艦隊を深追いすることはしないがほかの海域にいる敵艦を追い払うということはやらなければならない。戦闘に参加するつもりではなく敵に圧をかけるようにほかの海域の戦闘に参加するような動きを敵に見せる。


そうしていると敵艦隊はそのまま完全にその海域から姿を消して、今回のエーゲ海での海戦は終了した。


艦隊はイズミルに帰港すると勝利の余韻に浸る間もなくすぐに、損害を精査する。


結果、戦艦、空母には被害はなかったが、重巡洋艦以下の艦艇には相当の被害が出ていて簡単に戦力を増強することのできない反乱軍としては痛い被害を食らった。


「エミル君。少しいいかな?」


「えぇ、どうしましたか?」


エミル君を人がいない会議室に呼び出すと俺は話を切り出す。


「今回の海戦が起きるためにはボスポラス海峡を通過しなければならないんだよね」


「そうですね。おそらくですが黒海にある海軍基地から出てきているはずですので通っているはずです」


「でもアイリス公爵家では今回の反乱に加担するにしたがってボスポラス海峡の軍艦の通行をこちら側の船以外停止中になってる」


「となると、勘違いによる通行許可ですか?」


「いや、それもあり得ない。海峡をあのレベルの艦隊が通過するためには多くの人が関わることになる。それ全員が勘違いをしていたなんて非現実的だろう?」


「となると、、、」


「あぁ、アイリス公爵家内に帝国に通じているスパイがいる可能性が高い。それも使用人レベルじゃない。アイリス公爵家の血を持っているものか、私兵の中でも指揮官クラスのものかに限られる」

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