第51話 sideガイム・アイリス 抵抗㉙
時は海戦が起こる少し前にさかのぼる。
ガイムが率いる第2遊撃艦隊は敵に捕捉されないよう海戦が起こる少し前から地中海艦隊とは離れて事前に決めていたポイントへと移動中だ。
とても重要なポジションではあるが、少し功績をかすめ取るような配置になってしまっていることに申し訳なさを感じる。
ポイントへは敵に捕捉されないようにしなければならないので大回りしての移動になる。これのせいでおそらく戦闘が開始する時にはポイントにつけていないだろう。俺たちがポイントにつくまで地中海艦隊にはおとりになってもらうことになる。
「戦闘は始まったか?」
「はい、どうやらそれぞれの艦隊の先頭にいる艦同士が砲撃戦を始めたそうです。すでに空母から発艦した攻撃機による航空戦も発生しているとのことです」
「そうか。敵艦隊の規模は事前に観測された通りか?」
「はい。おおむねその通りのようです。どうやら敵艦隊は第1遊撃艦隊とのこと」
「、、、了解だ」
ガイムはそのまま特にやることもないので考え事に浸る。
敵艦隊の第1遊撃艦隊は黒海にある港湾都市に基地を持っている。その艦隊が地中海側に抜けてくるにはボスポラス海峡を通過しなければならない。そしてそのボスポラス海峡を管理しているのは我々アイリス公爵家だ。
皇帝からの許可があれば以前までは通ることはできたが現在は違う。公爵家が皇帝を裏切りアカル侯爵家側についたことでボスポラス海峡は事実上の封鎖状態だ。
もちろん民間船は通ることができているがその船にも厳しい監査が入っている。当然民間船に偽装された軍艦などは通ることができない。
となるとどうやって海峡を通過したのか。それは公爵家側に裏切者がいるとしか考えられない。公爵家が裏切りを決めた際に公爵家に仕えている者たちにはその事実が伝えられている。勘違いによる海峡の通行の許可はありえないだろう。
しかも、それは1人や2人の小さな人数ではない。海峡を軍艦が通過する際は多くの人物がそれを見ることになるだろう。少なくとも公爵家が抱えている部隊のいくつかが手伝っているのは間違いないだろう。
そしてその数の部隊が司令官もなしに動けるわけがない。おそらくそこそこの格の人物が今回の件に関与しているはずだ。それは疑いたくはないが家族もそうだろう。
今回の海戦が終わった後にエミル君にはそれを共有しなければならない。アイリス公爵家に対して作戦をすべて伝えるというのは少し危険が伴ってしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます