第50話 side第6師団長 抵抗㉘

事前に決めていた作戦は完全に破綻してしまった。もともとの想定よりも敵の戦力は相当多い。さらにただの歩兵だけではなく戦車なんかが所属しているような近代的な部隊もあるようだ。


これでは作戦を見直さなければどうにもできない。


「いったん、撤退するぞ」


「包囲下の部隊はどうしましょうか?」


「戦力としては痛いがそれを助けるためにそれ以上の犠牲は払えん。その部隊を殿として退避だ」


「了解です」


「まだ修理可能な戦車部隊があれば、助けに行ってやれ。さすがに戦車は多くの数失えない」


師団長の命令により部隊は一時的に戦局の打破をあきらめそのまま後退することにした。すでに師団長らが把握している損害だけでも3000人以上の歩兵に20両を超える戦車、40両を超える歩兵戦闘車などが失われている。


さらに包囲下の部隊の損害を合わせれば人的な損害だけで10000人に到達してもおかしくない。このような状況で悪あがきをするのは軍全体で見れば損失にしかならない。


陸軍総司令官のカースは彼のことをビビりだと称していたがそれはあくまで好戦的なカースから見た姿だ。一般的な価値観を持った人間からすれば基本に忠実な優秀な司令官であることには間違いない。


師団長の命令によって第6歩兵師団は撤退していく。師団長の読み通り反乱軍はそれを追うことなく包囲下の部隊の殲滅を開始した。


結局彼らはそのままアカル侯爵領から出ると近くにある陸軍の基地へと撤収していった。


「最終的な損害はどのぐらいだ?」


「ここに帰ってくることができなかった人数は9500名ほどです。戦車や歩兵戦闘車、装甲車も相当の被害出ていて継戦は困難かと」


「なるほど、、、カエサル帝都防衛隊隊長はどうしている?」


「相当に暴れていたようで薬を使って眠らせたとのことです」


「わかった。カエサル隊長にはそのまま牢にいてもらえ。どのみちすぐに陸上で戦闘を開始することはできん。第7歩兵師団に救援の要請を送っておいてくれ」


「了解いたしました。部隊の再編成に関してはどうしますか?」


「それは作戦参謀全体で決めよう。どのみち今は混乱していてちゃんとした情報が出てきていない可能性が高い。ある程度時間をおいておいてからやろう」


「了解です」


作戦参謀の一人はそのままテントから出ていくと通信関係の機器が集まっているとこに向かう。


この基地はもともとあまり大きい基地ではないので配送した第6師団を抱えるだけでもパンク気味だ。どうにかして待機しておく場所を作っておかなければならない。

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