第38話 抵抗⑰

前線から下がってからしばらくするとようやく応急処置が終わったようで修理をする作業員たちが続々と艦の後方から引き揚げてくる。


「司令官、修理は終わりました」


「ご苦労。それでどうだった?」


「艦後方の被害は予想以上にひどかったですよ。言っておきますが艦後方に魚雷の一発でも食らったら砕け散りますよ」


「被弾をしなければいいだけの話だ」


「、、、それと副砲はちょっと衝撃でジャムってるだけだったので直しておきましたよ。ただ機能に障害がないだけで実際は壊れかけなのは間違いないですから酷使はしないでください」


「わかった。それだけできていれば十分だ」


「これは冗談じゃないですからね。本当に魚雷を一発でも食らったら沈みますし、副砲も連射したら爆発しますよ!」


「大丈夫だ。問題ない」


作業員はそのまま呆れた顔をしながら艦の中にある彼らの部屋に戻っていく。


「司令官、どうしますか?」


「第2遊撃艦隊のほうの配置は完全に完了しているのか?」


「はい。いつでも作戦が開始できる状態とのことです」


「それなら俺たちも動くぞ。まずは前線に出る。ほかの味方艦にも作戦を開始する準備をするように言ってくれ」


「了解です」


俺たちは少し速力の落ちてしまった艦で先ほどまでいたほうの前線に向かう。


道中でいくつかの味方艦を視認することができたがどの艦も多少の戦闘による損傷はあってもまだ継戦に問題はないようだった。


そのまま前線まで進んでいくと激しい砲撃戦の音が聞こえるようになっていき、さらに上空では激しい空戦が勃発していることもうかがえた。それを傍目に俺たちは先ほどまでいた位置よりも少し押し戻された位置にたどり着く。


「全艦の配置は完了しているか?」


「はい。すべての艦が事前に決めていた海域にいます」


「それなら作戦を開始する」


そう号令を出すと俺たちは一気に激しい攻勢をかけ始める。今までも砲撃戦は各所で行われていたがそれはどちらも遠距離からちまちま撃つような積極性の欠けたものだった。


しかし、今回は違う。被害がある程度出ることは前提に敵艦隊に突っ込んでいく。


突然の行動に敵は一瞬戸惑ったようだが、どうやらこれはチャンスだと受け取ったらしい。突貫している中でも突出していた駆逐艦数隻に激しい砲撃を浴びせて一瞬で爆散させる。


ただそれは悪手だ。砲に弾を詰めるのはまぁまぁ時間がかかる。そしてその間にも俺たちは敵艦隊に近づいていき、確実に仕留めることができる距離になってからそれぞれの目の前にいる艦に砲撃をする。

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