第29話 抵抗⑧
そのあと敵師団はそのままイズミルから離れたところにある陸軍駐屯地まで引いていった。それを確認してから俺たちは急いで戦場の後処理をする。
包囲化にあった敵部隊ははじめどうにかして包囲を突破しようとして、無理のある突撃を敢行したりしていたが、少しして包囲網の突破が無理だと悟ると早々に降伏していった。
結局包囲された5000人のうち半分近い2000人程度が捕虜となった。想定よりも多い人数が捕虜と待ったことで食料の不安が少し残るが、それでもこのうち80パーセントに近い数はこれから3か月としない間に戦場で死んでいくだろう。結局大きな問題にはならないはずだ。
捕虜になった以外の敵兵士だけでも、包囲網の外で撃破した敵部隊の数もそこに合わせるとおよそ5000人近い敵兵士が今回の戦闘で命を落としている。さらに装甲車なんかも相当数失っていて敵にすぐに戦闘を再開するような戦力は残っていないはずだ。
逆にこちら側の被害は兵士が1000人ほどと装甲車が10両と少し程度。さらにこちらは第4歩兵師団を温存している。もし今のままもう一度ぶつかれば完璧に敵を殲滅することができるだろう。
「エミル、大体の処理が終わったそうだ」
「そうか。カースから見て今回の戦いはどうだった?」
「完全な勝利だな。戦力差があったといってもここまで完全な勝利は難しいと思うぞ」
「これからの帝都防衛隊の動きはどう思う?」
「しばらくは陸での戦闘はないだろうな。帝都防衛隊隷下の部隊も今回の戦闘によって相当数の被害が出ているはずだし、第6歩兵師団もすぐに動けるような状態じゃないだろう。ほかの歩兵師団も国境の監視なんかがあってすぐには動かせない。膠着状態に入るだろうな」
「なるほど。それでは次は海か」
「あぁ、戦闘があるとしたら海だと思う」
戦場の後処理が終わり、味方歩兵部隊を駐屯地に下げさせる。今回の陸戦はまれにみる規模のものだったので兵士たちも相当疲れただろう。少しの間だがゆっくり休んでほしい。
俺たち将官はそのままイズミルに戻るとその日はそれで解散とする。
翌日から俺たちは今回の戦闘を受けてのこれからの戦局の変化を予想していく。といっても国内の動きというにはあまり戦闘前の予想からは変わらないだろう。怖いのは他国の介入だ。
プライドの高い帝都防衛隊が他国の力を借りるとは思えないが他国が今回の内戦のごたごたの隙に侵攻してくると言うのは考えられる。そういったイレギュラーなことが俺たちにとってプラスに働くのかマイナスに働くのかはわからない。
ただ戦争が終わった後に面倒ごとになるのは確実だ。
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