第28話 抵抗⑦

次々と入ってくる情報を一つ一つ整理しながら今の戦場の状態を把握していく。そして今のところはおおむね想定通りの被害しか出ておらず非常に順調だ。


「カース、機械化歩兵師団のほうはどうなっている?」


「順調に敵の後方をついて敵戦車部隊を撃破しているみたいだ!もう敵にはこれを打開するような手はないだろうな」


「そうか。被害状況はどうだ?」


「ほとんど被害は出ていないな。ただ、1両の戦車が一人で敵を深追いしすぎたことで連絡が取れなくなっているぞ」


「…わかった。その程度の被害ならどうにかなる。戦闘が終了したところには敵の武器を鹵獲しておくように言っておいてくれ」


「了解だ」


俺たちの機械化歩兵師団はたとえ戦車を失ったとしても敵から鹵獲をしなければその穴を埋めることはできない。それはもちろん銃なんかにも言えることで陸戦で今一番不安なことは弾薬の問題だ。


10回ほどなら陸戦をしたとしてもどうにか弾薬が持つがそれ以上長引くと少し厳しくなってくる。それまでの間に軍の弾薬保管庫を落とすことができなければ陸戦での勝利というのは難しくなってくる。


「エミル、いくつかの部隊が包囲内にいた敵部隊の殲滅を完了したみたいだぞ」


「わかった。生き残りがいないように確認するように伝えてくれ」


「もしいたらどうする?」


「…懲罰大隊のような形で軍隊に組み込む。今の俺たちには敵の兵士を長期間養うほどの余裕がない」


「了解だ。そのように伝えておく」


正直もう助かる見込みのない兵士ならまだしも降伏した兵士までもを死がほとんど確定するような扱いをしないといけないのは心苦しい。捕虜となった人物を丁重に扱わなければならないといったルールは基本的に存在していないが、それでもそのようなことが起きるのはあまりない。


テロリストのようなものが人質を皆殺しにするといったことならあるが、軍隊ならば普通は少なくとも生きたまま捕虜として戦後まで残しておくことが追い。軍隊規模の戦争ならば単純に戦うことだけではなく、そのあとの統治なんかにも気を使わなければならないからだ。


だからこそ今回のことは蛮行だと非難されるだろう。もちろんそれは覚悟の上だ。今、皇帝を倒すことによって失われる命よりも皇帝を倒さないまま放置しておいた時の失われる命のほうが圧倒的に多い。


「…カース、小隊長以上の役職のものが生きていたら捕虜としてくれ。そいつらはこちらで管理する」


「わかった。…っと、どうやら敵が後退し始めたみたいだぜ?」


「警戒を解かないように言ってくれ。戦闘がすぐに再開できるような場所から敵がいなくなれば後処理に入る」


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