第16話 反旗⑯
「4万!?本当に内戦が始まるぞ…」
「すでに敵師団は戦闘隊形になっており、すぐにでも戦闘が始まってもおかしくない状況です」
「こちらの部隊はどうなっている?」
「第1、第3大隊はすでに配置についています。残りの2大隊は現在も配置に移動中です」
「…ここは放棄する。殿として残ることができる部隊は何かあるか?」
「一応、第4大隊所属の小隊なら可能ですが…」
「それならその小隊にゲリラ戦を展開させる。残りの部隊は山岳地帯まで撤退するぞ。そこで体制を立てなおしてから敵を迎え撃つ」
「…了解しました」
職員がそれを伝えるために部屋から出ようとしたその時、一人の隊員が慌てた様子で指令室に入ってくる。
「どうした?」
「敵師団から電報『今からそちらの司令部へと向かう。それまで待機してくれ』とのことです!」
「なっ、、、事実上の降伏勧告じゃないか!」
「いや、従おう」
「エミル様!」
「もし敵が本当にこちらを攻める意思があるのならこんなことは言ってこないはずだ。何か考えがあるのだろう」
「…了解しました。司令部に来るまでは戦闘休止命令を出しますがよろしいですか?」
「あぁ、かまわない」
それを聞き終わると隊員はまたどこかに走っていく。
さっきはあぁ言って敵がこちらに来ることを許可したが、正直こちらに敵が来るメリットがわからない。不要な戦闘を避けようとしているのかもしれないが、今の帝国陸軍にそんなことを気にするような指揮官はいないはずだ。
それにもし敵がこちら側につこうとしているのだとしても、この規模の師団がこんなに早く離反することは不可能だ。
結局相手の思惑がわからないまま時間だけが過ぎていく。
少したってから司令部の外が少し騒がしくなるのがわかる。騒がしくなってから少しすると指令室にカース率いる一団が入ってくる。
「久しぶりだな!何か楽しそうなことをやっているじゃないか!」
「…お前か」
俺は頭痛がしてくる頭を抱える。確かにこいつならこんな頭のおかしいことをやりかねない。戦闘に対する判断基準を楽しいか楽しくないかしかもっていないような馬鹿だ。
「それで、何の用だ」
「せっかくお前が楽しいことをやっているんだから俺たちもそれに参加しようと思ってな。遠路はるばるここまで来たんだ」
「…ここにきている第3師団、第4師団、第8機械化歩兵師団は反乱軍側につくということです」
何か頭もおかしいことを言っているカースの説明を捕捉するように副官であろう人物がそう語る。肩につけてある階級バッジは大将を示している。
「…つまりお前たちは俺たちに合流するということか?」
「あぁ、そういうことだ!」
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