第17話 反旗⑰

俺は元気よくそう答えるカースに頭を抱える。


確かに戦力としてカースが率いてきた師団は相当心強い。でも、手綱の握れない馬もついてくるのは同時に不安でもある。


「…それで君は誰なんだ?」


「申し遅れました。カース司令官の副官で陸軍大将であるフィン・クロッカスです」


彼はそういうと丁寧にお辞儀する。…多分彼もまたカースのせいで振り回されている一人だろう。少し親近感を感じる。


「それで、この部隊をどうするんだ?イズミルにはこんなたくさんの部隊を収容する能力はないぞ?」


「それなら安心してくれ!アイドゥンにある駐屯地に留まるつもりだ」


「…ちゃんと考えていたんだな。それなら各師団長クラス以外の隊員をアイドゥンに収容してくれ」


「了解だ。師団長以上の奴らはどうしたらいいんだ?」


「俺たちについてきてくれ。基本的にはイズミルが司令本部になっているからな」


「なるほどな。それなら俺たちはすぐにでもイズミルに向かおうじゃないか」


「あぁ、そうしてくれ」


俺はそういうとうちの部隊にカースが引き連れてきた部隊をアイドゥンにまで先導するように伝えてから司令本部を出る。


相当急いでここまで来たので今回はピョートルたちを連れてきていない。なので、カースとクロッカス大将、それに数人の師団長ならヘリに乗りきることができるだろう。


まぁ、乗り切れない師団長たちはカースが乗ってきたというヘリを一基借りてそれで来ることにすれば大丈夫だ。


来る時とは違いゆっくりとヘリに乗り込むと、カースたちが乗り込むのを待つ。少したってから師団長たちを引き連れたカースがヘリに乗り込む。


「それで、エミル。今の状況はどうなんだ?」


「正直に言えば海上戦力では、敵に劣っているな」


「具体的に言うと?」


「地中海艦隊がこちらについてはいるが、それ以外の3つの艦隊が帝国側についている。現在アイリス公爵家と交渉に入っていて、それが達成できれば第2遊撃艦隊もこちらにつくだろうから、それでトントンって感じだ」


「なるほどねぇ。陸上戦力はどう考える?」


「俺はそこまで陸軍に詳しいわけではないから何とも言えないが、勝てる可能性はあると思う」


「根拠は?」


「陸軍にある8つの歩兵師団の中で2つがこちら側についているんだ。それにお前の指揮の腕は陸軍の中でならトップだからな。あとはファセリア辺境伯爵家の支援があることもある」


「ファセリア辺境伯爵家?なぜあそこが支援だなんて…」


「俺にもわからない。ただ戦力としては十分だ。今は使える戦力は余すことなく使う」

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