第14話 反旗⑭ sideカース・フィリップ

いつも通りの変わらない書類作業を死んだ目でこなしていく。今回の戦争は陸軍にも出番があると思ったのに結局海軍の陸戦隊と空軍だけでほとんど片付けてしまった。久しぶりに戦争ができると思ったのにつまらない。


しかも陸軍はほとんど戦闘に参加していないにも関わらず、戦闘の後処理や、新しい防衛体制を気づかないといけないと来た。これでは完全に陸軍の一人負けだ。


「司令官、大丈夫ですか?」


「大丈夫なように見えるか?これが」


「そうじゃなく見えるから声をかけているのですが…」


そうやって問いかけてくるのは陸軍大将でありながら、俺の副官でもあるフィン・クロッカスだ。クロッカス伯爵家出身であり、若くして陸軍大将にまで上り詰めた逸材だ。


「何か面白いことはないか~?」


「面白いことですか…面白いかどうかはわかりませんが帝都から要請が来てます」


「どうせ、今回の戦闘の後始末についてだろ?興味ない」


「いえ、要請の内容は最高司令官であるエミル・アカルを拘束せよ、というものです」


「エミルの拘束?なぜだ?あいつは今回の戦闘でも活躍して勲章ももらったはずだぞ?」


「それがなぜそうなったのかわからないのですが、どうやら王宮にて戦闘を起こしたようです。戦闘により近衛隊長を含めた2人が死亡したとのことです」


「ほーーう。それでエミルはそのあとどうしたのかな?」


「イズミルに逃げ込んだようです。出身地ですし、そこで戦力を蓄えているのではないかと?」


「なるほど。…よし、決めたぞ!」


「イズミル周辺というとアイドゥンに治安部隊がありますが…」


「いや、俺もエミルと遊ぶことにしよう!」


「は?」


「エミルだけそんなに面白そうな戦闘をするなんてずるいじゃないか。俺も参加するぞ!」


「ちょっと!わかっているんですか!エミル側に加担するということは司令官も国賊になるとのことですよ」


「もちろんわかっている。だが、勝てばいい。ただそれだけだ!」


「…」


「今動かせる信用できる部隊は何がある?」


「…第3歩兵師団、第4歩兵師団、第8機械化歩兵師団の手が空いています」


「よし、それならそいつらを全部イズミルに異動させるぞ!俺もイズミルに向かう」


俺は椅子に掛けてあったジャケットを取ると陸軍司令官直轄のヘリコプター部隊の場所に向かう。幸い現在は戦闘が起きていないので全員が手の空いている状態だ。


部隊長に話をして、全部隊を移動させることにする。続々と周辺のヘリコプターが離陸していく中、クロッカス大将が乗り込むのを確認してから俺のヘリコプターも離陸する。

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