第8話 反旗⑧

「なるほど。それで何か軍部に伝手があるのかい?もし、あるんだったら使わない手はないけど」


「一応ですが、陸軍総司令官であるカース・フィリップとは交友があります」


「わかったよ。父さんはどう思う?」


「軍隊をうまく味方につけることができれば勝つことも全然あり得るだろうな。…もう帝都防衛隊なんかが動いているんだろう?」


「はい。帝都と皇帝派貴族の領地ではすでに戦争の準備が整っていると思います」


「それなら、私たちも用意するぞ。エミルは軍部の人間に打診してみてくれ。シオンは各部隊長との話をしておいてくれ。私は貴族の動きを調べる」




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そのころ帝都オデッサではカエサルが部下を怒鳴りつけていた。


「イズミルに向かえないとはどういうことだ!」


「そっ…それが帝都周辺にある基地には部隊を輸送できるような装備がありませんでした」


「どういうことだ?」


「帝都にある海軍基地はどうやら基地というよりもドックの働きをしているようでして、現在イズミルに私たちを送り届けることができる艦艇がないそうです…」


「はぁ!?他はどうなんだ!」


「もともと帝都周辺には軍事基地が少ないみたいで、一番近い空軍基地でも相当離れています。陸軍基地なら近くにあるんですがどうやら、そこにも輸送用の装備はないそうです」


「ほかの海軍基地は!?」


「海軍基地は一番近くてもセバストポリまで行かないといけません」


「クッソ、それじゃ何で移動するっていうんだ!」


「一番近くの空軍基地までどうにかして移動してからイズミルに行くしかありません」


「どうにかしてってところが大事だろ!皇帝陛下の命令は早急に反逆者を処分することだ。…あいつらはどうやって移動したんだ」


「どうやらちょうどドックにイズミルに向かう船があったらしいです」


「くっ、とにかく急いで準備しろ。車で最寄りの空軍基地まで向かう。そこからイズミルに行くぞ」


「了解です」


おびえた様子の隊員はカエサル前から急いで立ち去っていく。


カエサルを含めて帝都防衛隊全員が知らないことだが帝都周辺にある陸軍基地には緊急用の輸送機が全箇所に配備されている。だが帝都防衛隊が一般の軍人たちには嫌われていること。そもそも今回はアポイントを取ってから陸軍基地に向かったわけではないのでそんな緊急用のものなど使えるわけがないこと。などいくつかの要因があった。なんにせよ帝都防衛隊は大きな後れを取ったことになる。

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