第32話:クロガネ
「それじゃあ、お前はリョウマが20歳の時に作った刀でそこから、ずっとあいつと一緒にいたのか」
「シンヤの言う通りちゃき。とはいっても人の姿になれたのは今回が初めてちゃき………………あと、お前じゃなくて、余の名前は"クロガネ"だちゃき」
「ちゃきちゃき、うるさいな。まるで刀を抜く時の音みたい………………まさか、それでか?」
「ふぇ?」
「……………いや、それはないな」
大口開けて、とうもろこしに齧り付くクロガネを見て、俺は自分の考えを撤回した。こいつがそんなところまで考えている訳がない。
「そんなことよりもクロガネ!さっきも言ったが、ぼくの方が君よりも先輩だからな!!」
「まだ、言ってんのかこいつ」
「でも、人生の先輩は余ちゃき!」
「人生って…………人になったのは今回が初めてと言ったじゃないか!だったら、せいぜい30分程度だろう?」
「理屈っぽい奴ちゃきね!それは言葉の綾ちゃきよ!余は刀としての年数も数えれば、とっくにビオラよりも上ちゃき」
「気安く名前を呼ぶな!」
「最初に呼んできたのはそっちちゃき」
「ちゃきちゃき、うるさい奴だな!」
「あ、それシンヤが先に言ったちゃきよ。他人と同じことしか言えないなんて、オリジナリティのないつまらん奴ちゃきね〜」
「なんだと!子供だと思って、優しくしていれば、いい気になって!」
「どこが優しいんだちゃき?シンヤの方がよっぽど余に優しいちゃき…………ね〜?シン……………げばっ!?」
「いでっ!?」
あまりにも聞くに耐えなかった為、俺はビオラとクロガネ、両方の頭を叩いた。
「いい加減にしろ、お前ら」
「「……………」」
「これ以上、言い合いをするのなら、両方ともここに置いていくからな」
「「そ、それだけはっ!!」」
「はぁ〜」
一体、いつからここは託児所になったんだ?
「…………シャウ、こいつらについて、何か感じることは?」
「えっ!?ぼ、僕ですか?そ、そうですね。え〜っと………………まぁ、いいんじゃないですかね?」
「「……………」」
そこには10歳に気を遣われる24歳と76歳の姿があった。
―――――――――――――――――――――
「おっ!シンヤ!あれじゃないかちゃき?」
俺に肩車をされた状態のクロガネがそう叫ぶ。あまり足をパタパタせず、大人しくしていて欲しいもんだ。
「そうだな」
次の目的地は"金鎧の籠手"がある場所だった。そこはどうやら、火山らしくまだ登っていないにも関わらず、ここまで熱気が伝わってきた。
「シンヤ、どうするんだ?」
ドルツが小声でそう訊いてくる。一応、ビオラとクロガネに聞こえないよう配慮して、そうしていた。ちなみにそんな2人だが、今では仲良く"凄〜い!凄〜い!"と言いながら、火山を見ていた。あの時の喧嘩は一体、何だったんだ?
「まぁ、クロガネもいるからな……………今回ばかりはいいだろ」
俺がそう言って、後ろへと振り返った時だった………………2人が腕を組みながら仁王立ちしていたのは。
「心配には及ばないよ!」
「なんせ、余達は……………」
そこから、2人して変な踊りを始め、最後に何やらポーズを決めていた……………何がしたいんだ、こいつら?
「「自分の身は自分で守れるのだから!!…………ちゃき」」
「あ、さいですか」
深く追求したら、面倒臭いことになりそうだった為、俺は軽く流して火山を見据えた。
「あそこにあるのか」
「うん…………そうだね」
俺の言葉に対して、真剣な表情で答えるビオラは何と魔法で結界を張っていた………………いつの間にできるようになったんだ、こいつ。
「あ、これ?やっぱり、ぼくだけできないのは悔しいからさ!練習したら、できるようになったよ!!」
「余もできるちゃきよ!ほれ!!」
そこへビオラに続くようにクロガネも結界を張っていた。凄いな……………ってか、こいつはいつまで擬人化しっぱなしなんだ?
「……………シャウ、こいつらについて、何か感じることは?」
「いいんじゃないですかね!!」
シャウのそれは言葉は同じでもニュアンスがこの間とはまるで違っていたのだった。
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