第33話:火山



「お〜っ!凄いや、これ!!」


「おっほぅ〜!!まるで熱さを感じないちゃきよ!!」


結界の効力に驚く2人を伴って、俺達は火山の頂上を目指していた。ふと横を見れば、物凄い勢いで火口から溢れ出たマグマが上から下へと流れていた。


「ここは指定難度SSSクラスの場所だ。ある程度、常識のある冒険者なら、まず近付かない。それは高ランク冒険者であってもだ。だから、お前らも気を付けろよ」


「「うわっ、凄い噴火!!…………って、こっちに向かってくる〜〜〜!!!」」


「ちっ」


「シンヤさん、私が!」


そう言って、2人の前に飛び出たのはなんとサクヤだった。


「"黒一閃"!!」


サクヤが刀を一振りすると2人へと向かってきていた溶岩は瞬く間に真っ二つとなった。


「「ええっ〜〜〜!!!」」


「まだよ」


そう言って、さらに横から飛び出したのはモロクだった。彼女は真っ二つになった溶岩目掛けて、掌底を放った。


「"白打掌"!!」


手を真っ白になるほどの氷魔法で覆った掌底を受けた溶岩は瞬時に凍り、次の瞬間には内部から弾けて、粉々に砕け散った。


「「……………」」


その一連の流れを呆然としながら、見ていた2人。そこに対して、サクヤとモロクが声を掛けた。


「危なかったね。でも、これで分かった?気を抜いちゃいけないってことが」


「そうよ。今度からは油断しちゃ、駄目よ?」


その言葉に大きく頷く2人。全く……………あそこまで大げさに対処しなくてもサクヤとモロクなら、もっと素早く一瞬で何とかできたろうに……………だが、そうしなかったのは2人の為を想ってのことだった。


「新しい土地にワクワクするのは悪いこととは言わないが、俺達の旅は常に危険が隣り合わせだということを肝に命じてくれ。どんな強者でも一瞬の油断が命取りとなることもあるんだ」


「「分かったよ(ちゃき)!!」」


うん。こいつら、意外と素直だから憎めないよな…………ってか、一緒に時間を過ごせば過ごす程、似てくるな。






―――――――――――――――――――――






「お主達か、侵入者は……………我に一体、何の用だ?」


頂上についた俺達の目に最初に飛び込んできた光景……………それは巨大な炎竜がこちらを見下ろすところだった。


「勘違いするな。お前に用はない。俺達の目的はそれだ」


俺は目の前に浮かぶ籠手を指して、そう言った。すると、炎竜は口を大きく開けて笑った。


「フハハハハッ!我にそんな生意気な口を利く人間は何十年……………いや、何百年振りか。まぁ、そもそもここへ来れる人間自体、そう多くはないのだがな」


「で?くれるのか?くれないのか?」


「人間、お前こそ勘違いするなよ?我が友好的な態度を示すのはこれきりだ。そして、ここから先は………………力で示せ!!」


そう言うと炎竜は殺気を放ち、身体中から魔力を溢れさせた。


「……………」


「っ!?」


しかし、炎竜は瞬時に自身の行動を止めた。それ以上、続けていると命が危ないと感じたのだろう……………もちろん、炎竜自身の、だ。


「「「「「……………」」」」」


無言で炎竜と同じ芸当をする仲間達。炎竜がいくら強かろうが関係ない。シャウですら、炎竜のそれを上回ってしまっているのだ。しかし、中でもティアがやばかった。自分のことよりも俺に殺気が向けられたという事実にキレてしまっている。


「落ち着け…………特にティア。悪いのは俺達だろう?なんせ、こいつの住処に土足で踏み込んでしまったのだから」


俺の言葉に殺気と魔力を引っ込めるティア達。ちなみにその間、ビオラとクロガネは2人で抱き合って泣いていた。


「すまない。ほんの冗談のつもりだったんだ」


「こちらこそ、すまない。勝手にお邪魔してしまって」


「い、いや……………大丈夫だ」


炎竜は恐怖からか、ティア達を……………というか、ティアを一切見ずに俺の目を見て話していた。


「…………っ!?」


しかし、それでも怖いもの見たさがあるのか、チラッとティアを見て、彼女がニコッと笑顔を向けると慌てて顔を背けていた……………なんか身体はデカいが反応が可愛いな、こいつ。


「さて、改めて訊こう。その籠手を譲り受けてもいいか?」


俺の言葉に深く頷いた炎竜は次の瞬間、こう言った。


「ああ……………ただし、条件がある」


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