第31話:ロリババア



「シンヤ!リョウマさんとした会話について、どういうことなのか説明してもらおうか!」


「どういうことも何もあの会話の通りだが?」


ダンジョンの外に出て、すぐ俺に抗議してくるビオラ。こいつは一体、何をそんなに息巻いているんだ?


「まさか、あいつが異世界人だとはな……………」


「うん。ビックリだよ……………って、そうじゃなくて!!」


「それも死んでダンジョンまで作っちまうなんてな」


「これで世界の謎の1つが解明できそうだね!……………って、だから!」


「そんでこれが俺達の求めてた金鎧の兜だ……………はい、ビオラ」


「わぁっ!ありがとう!!……………って、いい加減にしてよ!!」


「いや、お前も普通に返してただろうが」


「そりゃ、反射的にね!……………でも、みんな本当にありがとう」


少し俯いてそう述べるビオラからは本気で感謝していることが伝わってきて、俺達は思わず顔を見合わせて微笑んだ。


「………………本当だ」


「え?」


「リョウマとした会話の内容は全て本当のことだ」


「じ、じゃあ、本当にシンヤとアスカとサクヤは異世界人なの?」


「ああ」


「………………そうなんだ」


俺の言葉を受けて、少し考え込むような仕草をしたビオラ。彼女が今、何を考えているのかは分からないが間違いなく、俺達に対する見方が今までとは変わっている気がした。


「ちょっと!喧嘩はダメちゃき!!」


と、そんな時だった。いきなり、近くから聞き覚えのない声と話し方がしてきたのは。


「……………こいつか?」


俺はチラッと左手に持った刀へ目をやった。それはリョウマから譲り受けた刀だった。見れば、真っ黒の鞘に収まったその刀は軽く震えており、カチャカチャと音を立てていた。


「……………」


俺は徐にその刀を地面へ置いた。すると、刀は眩い光を放ちながら輝き、やがてその光はこの場を覆い尽くした。


「ううっ〜〜わぁ〜〜っ!!」


光が収まるとそこには1人の幼女が立っていた。パッと見の年齢は蒼組のカナやサナと同じぐらいか?真っ黒のおかっぱ頭に太い眉、服は巫女が着るようなものを着ていた。変な掛け声と共に登場した際の着地音がカランッと聞こえた為、よく足を見てみると下駄を履いていた。


「余は"クロガネ"と申す!よろしく、頼むぞ同志達よ!!」


「……………ビオラ、次の金鎧はどこがいい?」


「えっ!?あ、う、うん……………この状況で無視するんだ…………ボソッ」


「無視しないでちゃきよ〜!!余は同志達しか頼れる者がいないちゃき〜」


「まとわりつくな!!どうして、最近会う奴はまとわりつく奴が多いんだ」


「だ、誰のことかな〜?」


「……………あ、お腹減ったちゃき。おい、同志よ!余は供物を所望するぞ!」


「やだ。その回りくどい喋り方を何とかしないと」


「そ、そんな〜!これが余にとって普通の話し方ちゃき〜」


「………………」


「あ、あの…………食べ物を恵んで欲しいちゃき」


「語尾は治らないか。まぁ、いい。その代わり、お前のことを聞かせてもらうぞ」


「あ、ありがとうちゃき!!余は同志が大好きちゃき!!」


「その呼び方やめろ」


「うっ……………じ、じゃあ!シンヤ!!」


「まぁ、それでいいだろ」


「そ、そんなっ!?何でそんなあっさり許すのさ!!名前呼びはぼくだけに許された数少ない特権だろ!?」


「何だ、お前だけに許された特権って。お前よりも前に俺をそう呼んでる奴は沢山いる」


「そ、それはシンヤの仲間達や顔見知りだからだろ?ぼくは出会ったばかりでそう呼んでる!関係性もあまりないのに」


「ん?お前は俺の姉なんだろ?ほら。関係性なら、あるじゃないか」


「ぐっ……………こういう時は素直に認めるのか」


「わぁ〜い!余は特別ちゃき!!」


「おい!ぼくのほうが君よりも先輩なんだぞ!」


「今、出会ったばかりって言ってたちゃき。だったら、そう変わらんちゃき」


「くそ〜後輩の癖に…………調子に乗って…………あだっ!?」


「調子に乗ってんのはお前だ。小さい子にムキになるな」


「べろべろば〜」


「っ!?そこをどけ、シンヤ!!今、そいつ、ぼくのことを馬鹿にした!!」


「大人になれよ。お前の方が歳上なんだから」


「え?余は76歳ちゃきよ?」


「……………とにかく、今からここで飯にするから。それで落ち着け」


「おい!今、聞いただろ!!この子…………ってか、この子って歳でもないだろ!!思いっきり、ババアじゃないか!!」


「失敬な!余はババアではなく、ロリババアちゃき!!」


「へ?ロリ…………何?」


「何故、その単語を知っている」


俺は軽く頭を抱えそうになった。この先がまたもや騒がしくなりそうだったからだ。



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