第26話:決意




「ん?どうした、ビオラ?」


冒険者ギルドを出た俺達が地図を見ながら、次はどこに行くか話し合っているとビオラが首を傾げているのに気が付いた。


「いや、あのリックって人がなんか引っかかるんだよね……………」


「引っかかる?」


「うん。なんか前にもどこかで会ったことがあるような気がして」


「お前がこの街にいた時に偶然、話したことがあるって程度じゃないか?言っちゃ悪いが、そこまで目立つヤツでもなかったしな」


「そうなのかな?」


「ああ。おそらく勘違いだと思うぞ」


「…………うん。そうだよね。ごめん。たぶん勘違いだ」







「ん?英雄様は帰られたのか?」


「マスター?そういう言い方してるとまた怒られちゃいますよ?」


「本人がいないんだから、いいだろうがよ」


「はぁ〜……………全く、この人は」


「そういえば、さっきシンヤ達に声を掛けていた奴、最近よく見かけるな」


「あ、呼び方変えた」


「仕事に積極的になるのはいいことなんだが」


「ですね。でも……………」


「ああ」


そこで2人してギルドの扉へ目を向けた後、私は呟いた。


一体、ギルドに何の用があるんでしょうか?」






―――――――――――――――――――――







「ここが地図に記された最初の場所か」


俺達が訪れた場所はソルトから南に下った先にあるダンジョンだった。このダンジョンは"闘骨の監獄"と呼ばれているらしく、ここで出てくる魔物はアンデッドやボーン・ソルジャー、リッチなどの骨系・死霊系の魔物のみである。


「入口付近まで腐敗臭が凄いな。この時点で既に始まってるってことか」


「地図に書かれたメモによるとこのダンジョンの最奥に金鎧の兜があるそうです。しかし、ダンジョンの内外から漂うこの悪臭によって、兜の入手を目論みた冒険者達は皆、失敗に終わっているそうです」


ティアの言葉を聞きながら、俺達は魔法で結界を作り、臭いを遮断し、ダンジョンへ入る準備をした。


「こ、この臭いの中を進むのか!?」


「そうだが?」


「シ、シンヤ達は平気なのか?」


「そりゃ、魔法で結界を作ってるからな。この結界は攻撃だけでなく、あらゆるものを弾くんだ」


「えっ!?そんなのずるいよ!!ぼ、ぼくも入れてよ!!」


「お前、着いて早々に人任せかよ。まさか、ここまで根性がない奴だとは」


「だ、だって〜〜〜」


「泣き言言ってる暇があったら、少しでも早く成長しろ。言っておくが、こんな芸当ができないのはこの中でお前だけだ」


「……………」


「こんなところで疎外感を感じてるようだったら、今すぐ荷物をまとめて帰れ。自分だけ外部でなおかつこの中で最も弱い……………そんなことは出発する前から分かっていたことだろ?」


「……………うん」


「ここから先はもっと過酷なことが待っているかもしれない。だから……………今すぐここで決めろ。弱いのを自覚した上でこの先に自らの足で進むか、それともここで潔くあきらめて真っ直ぐ家へと帰るか」


「ぼくは………………進むよ!あきらめるなんて絶対に嫌だ!!ぼくは……………ぼくには……………どうしても叶えたい願いがあるから」


「………………そうか」


ビオラの熱い宣言を聞いた俺達はゆっくりと足を前へと踏み出した。チラッと後ろを振り返ると辛そうに顔を顰めながらも一生懸命にビオラはついてきていた。

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