第3話:気遣い
シンヤ達が帰ってきてから、数日が経ったある日。その日は朝早くから、珍しく来客があった。
「うぅ〜!ジンヤ〜!!無事でよがっだよ〜!!」
「その反応…………お前、クーフォにそっくりだな」
ウィアだった。彼女はシンヤの妻ではあるものの妻の中で唯一、別組織の者であり、シンヤとは離れたところで暮らしていた。というのも本当は結婚してすぐにシンヤと暮らしたいと願っていたウィアだったが、そうなると流石に仲間達に示しがつかないと判断し自ら、仲間達の元へ話をしに戻っていたのだ。ところが、その最中に"虹の
「それっで、なんだが褒められでる気がじない〜〜!!」
「何気に酷い言い様だな」
涙を大量に流しながら、シンヤに抱きついて身体を震わせるウィア。そこには組織をまとめる長としての顔はなく、まるで長い間夫の帰りを待ち侘びていた妻がいるだけだった。
「待たせて悪かったよ、ウィア。お前に至っては新婚旅行どころか、同居もまだだもんな」
「シンヤ……………」
「本当、悪かった…………ただいま、ウィア」
「うん。おかえり、シンヤ」
耳をぺたんと閉じ、涙混じりの瞳で上目遣いで見つめてくるウィアに母性本能をくすぐられたシンヤは優しく彼女を抱き締め、頭をゆっくりと撫でながら言った。
「お前の顔を見れて、とても嬉しいよ」
「うん。アタイもシンヤが無事で嬉しい」
「そうか。頑張った甲斐があったな」
「…………あのさ、シンヤ?」
「うん?」
「なんか雰囲気変わった?」
「雰囲気?」
「うん。なんか前よりも少し柔らかくなったというか、優しくなった気がする」
ウィアにそう言われて、シンヤはやはりかという顔をした。実はここ数日でティアを始め、クランメンバーにもそのようなことを言われていたのだ。シンヤ自身は気が付いていなかったのだが、おそらくここ最近の出来事が関係しているのだろう。
「…………向こうで何かあった?」
「……………ああ」
「……………そう」
シンヤの表情や言葉を発するまでの間から何かを感じ取ったウィアは少し目を伏せながら、小さな声でそう呟くと次の瞬間には笑顔を浮かべていた。
「じゃあ、話したくなった時にでも」
「今、聞いて欲しい」
「っ!?」
ウィアのそれは明らかに無理をした笑みだった。そして、それはいくら鈍感なシンヤであっても流石に気が付いてしまう程であった。
「ウィアには今、聞いて欲しいんだ」
「シンヤ…………」
確かにウィアには強引な面や好奇心の赴くままに突っ走る面が多少はある。
「俺はウィアを1人の妻として、そして仲間として愛している。そこに優劣や差はない。だから、ウィアにはそんな顔をして欲しくないんだ」
「………………」
「俺に嫌われたくないとか、不快にさせたくないとか余計なことは考えるな。俺達は夫婦であり、仲間だ。そりゃ、喧嘩をする時や意見が食い違うことだって、あるかもしれない。だが、そんなことで嫌いになったりはしないし、そういうハプニングも人生が豊かになる為にはむしろ必要だ」
「シンヤ……………」
「だから、俺には気を遣わないで欲しい」
「本当に…………いいの?」
「もちろん。現にティア達だって、気を遣ってないぞ。口調こそ、丁寧だったりするが俺が間違ってたら、ちゃんと制してくれるしな……………そういえば、この間も怒られたな」
「そうなんだ。ティア達が…………」
「ああ。それが夫婦であり、仲間だろ」
「そ、そうだね……………あれ?でも、何でさっきから"仲間"って言葉も使うの?結婚したから、"夫婦"って肩書きしか使わないと思ってたんだけど」
「ああ。それなんだが…………実は俺から1つ提案があってな」
「うん?」
そこでゆっくりと口を開いたシンヤはこう言い放った。
「俺達と
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