第2話:ただいま

「終わったか」


刀を鞘へと納めたシンヤはそう小さく呟いた。敵の数こそ多かったものの、その後の戦いといえば、実にあっけのないものだった。ちなみに各々の戦いをダイジェストで表すとするのなら、次のようなものとなる。


ティア→愛剣をとんでもない速度で振るい、敵の胴体を真っ二つ。そのついでに落ちてきた上半身を愛盾で殴って、消滅させる。


サラ→自動追尾型の魔力矢を上空一面に撃ち放つ。ついでに近くにいる敵を愛剣で屠る。


カグヤ→両手に愛刀を携えて、向かってくる敵を片っ端から斬り刻む。


ノエ→愛鎚を振るい、回転しながら敵を追いかけ回して仕留める。


アスカ→愛薙刀で敵を下から切り上げては浮き上がったところでその胴体を叩き落とす・・・それを視界から敵が消えるまで繰り返す。


イヴ→まるでワルツを踊るように愛鎌を振るい、敵を無慈悲に葬る。


ラミュラ→愛槍一突きで敵を仕留め、即座に次の敵へ。ところが、その際にアスカとイヴのマイペースな狩りに巻き込まれそうになる。


ドルツ→愛短剣を上空から飛ばそうと思ったが、それだとサラと似たり寄ったりでつまらないと感じた為、お手玉のように短剣を扱い、距離を問わず目に入った敵へと投擲。


スィーエル→愛大剣を自由気ままに振るっていたが、危うくドルツの短剣が当たりそうになり、慌てて回避。文句を言おうと思ったが、向こうからノエの狂った攻撃が近付いてきた為、全力疾走を決め込む。


レオナ→今回は珍しく眠気が襲ってこなかった為、最初から全力で参戦。愛用の円月輪チャクラムを猛スピードで放ち、それに魔力を込めて敵を見つけたら、即座に向かっていくようにする。しかし、アスカやイヴが目の前に現れ、彼女達に照準が合ったり、ドルツの短剣とぶつかりそうになったりといったトラブルに見舞われる。


ニーベル→愛斧を振り回したり、振り下ろしたりして敵を殲滅。その最中、自身の獲物をラミュラに横取りされる。しかも2回。


ローズ→愛杖を巧みに使い、敵を撃破。その際、味方の攻撃に巻き込まれないよう、離れた場所で戦う。


以上、カオスな戦いを繰り広げたティア達であった。ちなみにシンヤは縦横無尽に動き回り、撃ち漏らしを狩っていた。


「お疲れ様です」


ティアから労いの言葉をもらったシンヤはそれに対して軽く頷いた後、前を見据えてこう言った。


「帰るか……………俺達の家へ」






―――――――――――――――――――――






「少しは落ち着け、クーフォ」


「そうよ〜モールの言う通りよ〜」


「な、何言ってんのよ!わ、私は落ち着いてるわよ!!」


「いや、どこが〜?」


クランハウス前にて、1人ウロウロと動き回るクーフォ。それを見たモールとリームは互いに顔を見合わせて、苦笑した。しかし、実を言えば彼女達もまたクーフォのことなど言えず、朝からソワソワとした気持ちを抱いていた。


「だ、だって!仕方ないじゃない!!なんてったって、シンヤさん達が帰ってくるんだもん!!」


「「うっ!?な、何この子!!可愛い!!」」


顔を赤らめながら涙目でそう言うクーフォに思わず、2人は抱き合って仰け反るという器用なマネをした。そして、クーフォはそれに対してドン引きした。


「一体、何なのよアンタ達は………………って、あれは!!」


と、それも束の間。上空に見覚えのある……………というか、今最も会いたい人達の姿を視界に収めたクーフォは大きな声を上げながら、耳と尻尾をピンと立たせた。


「あ、あ、あ………………」


そして、身体を小刻みに震わせながら、その人物達が自分の目の前まで降り立つのを確認すると……………


「ジンヤざん〜〜〜!!おがえりなざい!!」


待ち焦がれた人へ勢いよく、抱きついた。


「っと!!」


その者、シンヤはクーフォのその行動に驚きながらも彼女を優しく抱き留め、穏やかな表情でこう言った。


「ただいま」

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