第347話 神域
「私がキョウヤに与えた固有スキルはいわゆる"チート"と呼ばれる類のもの。そのあまりの強さから"制限"を掛けられる程に」
「制限?」
「ええ。本来、"世界旅行"には代償を支払うというデメリットはないし、"天岩戸"の封じれる固有スキルの数は3つまであったの…………しかも好きなものを選択してね」
「それは……………随分と制限を掛けられたようだな」
「ええ。私はただ大切な夫に死んで欲しくなくて、キョウヤに強力な固有スキルをあげたのに……………どうやら、上は流石に見過ごせなかったみたい」
「随分、ケチな奴らなんだな」
「仕方ないの。本来、神は全人類を平等に扱わなければならない。誰か1人を優遇……………それどころか、特別視なんて以ての外なの」
「……………ちなみにキョウヤの"世界旅行"は俺の"神眼"でも見通せなかった。その際、あいつはプロテクトを掛けられていると言っていたが、それはお前が?」
「もうっ!!お母さんに向かってお前なんて言わないで!!」
「………………お袋が"世界旅行"にプロテクトを掛けたのか?」
「そうよ」
「その呼び方でいいのかよ」
「"世界旅行"は異世界の存在を示唆する固有スキル。絶対にバレる訳にはいかなかったの」
「…………他のスキルはいいのかよ」
「ええ。だって、それこそ"神眼"でもないと見破れないし、万が一何かの間違いでバレたとしても大抵の人はどうもできやしないもの……………でも、まさか息子が見破っちゃうなんてね。これも運命かしら」
「……………気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ」
「あれ?もしかして、照れてるの?」
「あ?」
「ひっ!?な、なんでもないわ!!」
フォルトゥーナはシンヤの視線から逃れるように目を瞑り、続きを話し出した。
「とにかく!!横から余計な茶々を入れられつつも私はなんとか強力な固有スキルを持たせて異世界へ送り込むことに成功したの…………それからの話はキョウヤが言った通りよ」
「1つ聞く……………お前は本当に"神"なのか?」
「ええ」
「いまいち信用に欠けるんだが」
シンヤは疑わしげな目でフォルトゥーナを見る。彼女はそんなシンヤの反応も当然とばかりに嘆息するといきなり両手を広げ出した。
「仕方ない……………今から証拠を見せるわ」
「ん?一体何を言って…………」
「"神域"発動……………これでどう?」
「っ!?」
フォルトゥーナが何か呪文のような言葉を発したかと思うと次の瞬間、辺りに異質な空気が漂いだした。およそ魔力とは異なるものであり、"神"でない者がこの空気に触れるとたちまち頭痛や吐き気などの症状を及ぼし、身体能力も元の10分の1程度になってしまうというものだった。つまり、"神"でない者にとってはその場に居合わせるだけで劇薬を浴び続けているのと何ら変わらない状態だった。
「これで分かった?私が"神"だということが」
若干、ドヤ顔を決めているフォルトゥーナに対して、シンヤは特別変わった様子もなく、立っていた。ところが、ティア達は苦しそうにしており、立つのがやっとだった。
「おい。ティア達が苦しんでるだろ。もうその辺にしとけ」
「ん?あら、本当ね……………ティアさん、これで分かった?私は"神"でシンヤもこちら側の者……………所詮、あなた達とは住む世界が違うの。だから、今後は大人しく……………っ!?」
その瞬間、フォルトゥーナは強烈な殺気に驚き、慌てて"神域"を解除した。そして、殺気が漏れてきた方を見てみるとそこにはおよそ親に向ける表情ではないシンヤがいた。
「お前、今、何を言おうとした?いや、それ以前に何故すぐ解除しなかった?」
「ご、ごめんなさい!!ほんの出来心なの〜〜!!息子の仲間達がしっかりした人達かどうか試したくなっただけなの〜〜!!」
「お前に認めてもらう必要はない。俺が一緒にいて、幸せならそれでいいだろ」
「シンヤさん……………」
シンヤの言葉に感動した様子のティア達。それを羨ましそうに見つめながらもフォルトゥーナはティア達に頭を下げた。
「皆さん、ごめんなさい!!シンヤのことが心配で過保護がでちゃった……………てへっ」
「いいえ。うざいんで許しません」
ティアは満面の笑みで言い切る。すると、それを見たフォルトゥーナは焦りながら、ティアの足にまとわりついた。
「ふぇぇ〜〜ん!!ごめんなさい!!許して〜〜!!」
「落ち着いて下さい。冗談ですから」
「へ?」
「このくらいの冗談は言えないとお
仲良くできないと思ったので」
ティアは心の底からの笑顔をフォルトゥーナへと向けた。これに対し、フォルトゥーナは泣き叫びながらティアを抱き締めた。
「うわぁ〜〜ん!!なんて良い娘なのかしら、ティアちゃん!!私はこんな娘に対して、あんなことを………………ごめんなさい〜〜!!」
ティアはフォルトゥーナの悪意のないこの行動に苦笑を浮かべつつ、一応は抱き締め返した。一方のシンヤは仲間達に面倒臭い絡みをし、迷惑をかける母を見て、思わず現実から目を背けたくなった。
「……………お前が"神"であるということは分かった……………というよりも最初から"神"の存在には薄々気が付いていたんだがな」
「えっ!?」
シンヤの発言にティアから離れて、驚くフォルトゥーナ。そんなフォルトゥーナの様子を気にも留めず、シンヤはマイペースに話を進めた。
「うちに以前、"覚醒状態"となり種族が"擬似逆神"となった奴がいる。これは"神"というものが存在することを明らかに示唆……………いや、匂わせている。これはお前が俺達へと向けた一種のメッセージだったんじゃないのか?」
シンヤの問いに対して、フォルトゥーナはやけに真面目な顔となって、こう言った。
「いいえ。私はそれに関与していないわ」
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