第348話 ミス

「関与していないだと?」


「ええ。おそらく、それはの仕業ね。どんな目的かは知らないけど」


「何故、そう言い切れる?お前と同じような立場の奴の仕業かもしれないだろ?」


「それはないわ。私達の権限ではそこまでできない。そもそもからして、本来は"覚醒状態"なんていう現象はないのよ」


「は?」


「あれはいわば、バグ……………それかもしくはなの。さっきも言った通り、"異世界"や"神"の存在を知られてしまうのは御法度だもの」


「なるほど」


シンヤは納得しつつ、フォルトゥーナをチラリと見た。すると、彼女は途端に申し訳なさそうにしてから、再び頭を下げた。


「私の関与したことで言えば……………ごめんなさい!!シンヤ達が倒してくれた"邪神"アスターロだけど………………実はあれ、私がうっかり異世界そっちに落としちゃったやつなの」


「は?」


「かなり昔の話になるんだけど、ちょっと目を離した隙に天界から飛び出していっちゃって……………当時、私の管轄だったから、それはもうこっぴどく叱られたわ」


「………………」


「あと、"七罪"も私の部下の管轄で何故か100年に1体ずつ異世界そっちへ送り込むようシステムを組んでしまったらしくて………………」


「お前……………とんでもない奴だな」


「もしかしなくても、褒めてないわよね?」


「当たり前だろ。言っておくが、それらのミスはうっかりで済まされないからな」


「うっ…………」


「こんな仕事のできない奴が"神"を務めていて、さらに俺の親だと?……………冗談はよしてくれ」


「うわあぁ〜〜ん!!ごめんな……………」


「これ以上、泣いたら分かってるな?」


「ひっ!?わ、分かりました!!」


シンヤの睨みに思わず、竦んでしまったフォルトゥーナは直立不動で敬礼をした。


「他のミスはしていないんだろうな?」


「………………ないわ」


「何だ、今の間は」


「確かにとんでもないミスがあって、困っているのは事実だけど、それは私のミスではなくて……………上のミスだもの」


「どういうことだ?」


「………………」


「何だ?今更、何を言われても驚かないぞ?」


「で、でも…………」


「いいから、早く言えよ」


煮え切らない態度のフォルトゥーナに苛立ちが募るシンヤ。そんなシンヤの様子に気が付いたフォルトゥーナはどこか覚悟を決めた表情をすると深呼吸をしてから、こう言った。

 

「実は……………上が捕らえていた悪い神達をミスで脱獄させてしまって……………その人達と元々、上に反感を抱いていた者達が手を組んで今、暴動を起こし始めているの」


「悪い神達を捕らえていた?神達の中にも善悪があるんだな」


「ええ。そして、彼らの勢いは留まることを知らず、このままいけば天界が崩壊してしまうかもしれないの」


「なるほど……………まぁ、自業自得なんじゃないか?ってか、天界といえば、ここもだが……………やけに静かだぞ?」


「ここは少し異質な空間なのよ。天界の中だけど、時空が違うというか……………だから、彼らもここへは入ってこれない」


「……………本来は、か」


「ええ。今までこんなことが起きたことないから、正直どうなるか分からないの。もしかしたら、ここも時間の問題かもしれないわ」


「……………なるほど。キョウヤが言っていた"助けてやってくれ"とはそういうことか。だが、俺はお前が母親だからといって助けてやるなんて……………」


「分かっているわ。あなたを置いて出ていった私にそんなこと頼める義理はない……………ただ、もしかしたら、シンヤは……………いえ、あなた達はどのみち"神の軍勢"と戦うことになるかもしれないわ」


「ん?どういうことだ?」


シンヤの問いに対し、やけに強張った表情のフォルトゥーナは軽く冷や汗を流しながら、言い放った。


「彼らは同時に……………異世界あなた達の住む世界への進攻も企てているからよ」

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