第344話 最終進化

キョウヤとの一件があってから、2週間程が経った。この間に色々なことがあったが、最も大きなことは久しぶりにシンヤがぐっすりと眠れたことである。普段から組織の長として、多忙なシンヤの睡眠時間は圧倒的に少ない。元々、生い立ちのせいもあって、熟睡をしないという癖がついていたのだが何もそれだけが理由ではない。皆の為に常に考えを巡らせたり、動いたりしているうちに気が付けば1日が終わってしまっているというのがほとんどだからだ。しかし、今回はティアを筆頭に"黒天の星"の全メンバーがシンヤに対して、しばらくゆっくりして欲しいと懇願してきたのである。今までならば、それに対していくらか反論することもできただろうが皆の表情を見たシンヤはそうすることができなかった。結果的にそのおかけで毎日ぐっすりと眠り疲れを取ることができたのだ………………まぁ、途中で我慢できず隠れて仕事はしていたのだが。


「お前ら、ありがとな。おかげでバッチリ回復したわ」


そして、本日シンヤは久しぶりに幹部全員を会議室へと呼び、開口一番にお礼を言っていた。


「大丈夫じゃないのは百も承知ですが形式上、お聞かせ下さい………………シンヤさん、もう大丈夫ですか?」


そんなシンヤにティアが代表して、問いかける。その表情は一瞬だけ辛いものになったものの、すぐに真顔へと戻っていた。


「ああ……………


「……………そうですか。かしこまりました。"黒天の星"はシンヤさんをお待ちしておりました。そして……………」


その直後、全員が声を揃えてこう言った。


「「「「「おかえりなさい!!!!!」」」」」


「ああ、ただいま」


それが合図だった。今、この瞬間から皆の求めるシンヤ・モリタニが戻ってきたという……………


「早速だが、俺が休息期間中に考えていたことを伝えたいと思う」


そして、今日からまたいつものように……………とはならなかった。シンヤが驚くべき言葉を発したからである。


「俺は母親に会いに行こうと思う」


「「「「「っ!?」」」」」


その瞬間、この場にいる全員がビックリして思わず、シンヤを凝視した。ティアですら、そうだった。


「……………どういうことですか?」


恐る恐る慎重に質問するティア。その表情は困惑で一杯だった。


「その前にまずは俺のステータスを見てくれ」


そう言って、シンヤは自身のステータスを表示し、皆に見えるようにした。


―――――――――――――――――――――――


シンヤ・モリタニ

性別:男 種族:神人 年齢:18歳


Lv 50

HP 5000000/5000000

MP 5000000/5000000

ATK 5000000

DEF 5000000

AGI 5000000

INT 5000000

LUK 測定不能


固有スキル

生殺与奪・神眼・王の権威・魔の境地・守護神・叡智・サイボーグ・炎熱操作・戦士の誓い・透過・明鏡止水・勇者王・大革命・大黒柱・リセット・未来視・写し鏡・世界旅行・天岩戸


武技スキル

刀剣術:Lv.MAX

体術 :Lv.MAX


魔法

全属性魔法


装備

黒衣一式(統神級)

黒刀ムラクモ(天神級)


称号

異世界からの来訪者・運の女神の加護・逆境に抗いし者・ご都合主義・恐怖を与える者・武神・魔神・魔物キラー・絶望の森の主・統率者・盗賊キラー・スキルホルダー・進化者・英雄・救世主・邪神殺し・昇華せし者・殻を破りし者・偉業を達成した者・超越者・到達者・失いし者・追い求める者・乗り越える者


※レベル限界に達しました。最終進化へ移行しますか?

     (はい/いいえ)

→「はい」を選択した場合、あなたの種族は"下級神"となり、自動的に天界へと招待されます。その際、同行者を計12名まで同行させることができます


→「いいえ」を選択した場合、あなたの種族は変わらず、特に生活に支障が出る訳でもありません。しかし、この選択は一度きりです。もし、「いいえ」を選んでしまえば、二度と最終進化を果たすことはできなくなります。熟考の末、選択することをお勧め致します


―――――――――――――――――――――――


「こりゃ、またとんでもねぇな」


最初に口を開いたのはドルツだった。それに続いて、ラミュラも言葉を発する。


「ああ……………最後の部分は今のシンヤ殿に限っては一択しかないだろう」


「ってか、文章も"はい"を選択させるように仕向けているわね」


次にローズが思案顔で頷きながら口にした。そこに追従する形で眉根を寄せたカグヤは呟いた。


「意図的なのか、はたまた…………ただの偶然か」


「偶然な訳ないデス!!これは見え透いた罠デス!!」


「そうなの!!きっと盟主様を誑かそうとする性悪女の仕業なの!!」


「ちょっと2人共、落ち着いてよ……………ってか、性悪女って……………システムの文章に男も女もないでしょ」


「ノエも、怪しいと、思う」


「そうですよね。タイミングがタイミングですし」


「ふむ。これまでの発言から察するに皆はシンヤの父上の言葉を信じておるということじゃな」


皆も各々の意見を口にする。そうして、最後に残った2人のうち、まずはサラが発言した。


「イヴの言葉じゃないですけど……………シンヤさん、あなたはキョウヤさん、いえ、お義父様とうさまの言葉を信じていますの?」


「ああ」


「ではお義母様かあさまが本当に"神"であらせられると?」


「ああ」


「それで"天界"へと向かいたいという訳ですのね?でも、本当に"神"というものが存在するとして、それが"天界"にいるとは限りませんわ」


「いや、奴は間違いなく"天界そこ"にいる」


「仮にも実の母を"奴"呼ばわりは……………」


「俺にはその権利がある。俺はどこまでいってもキョウヤの……………親父の味方だ。親父には助けてやって欲しいと言われたが、俺と親父を置いて出て行った奴のことはそう簡単に許せそうにない……………直接会って理由を問いただし、その答えによっては………………」


「シンヤさん」


まるでその続きを言わせまいとするかのようにここでティアが口を挟む。そんなティアへシンヤはゆっくりと視線を向けた。


「何だ?」


「では最終進化を行い、"天界"へ向かうということでよろしいでしょうか?」


やけに冷静なティアに対して、皆は訝しげな視線を向ける。しかし、ティアはそれらを気にも留めず、シンヤへ真っ直ぐ視線を注いでいた。


「ああ。そのつもりだ」


「……………そうですか……………なら」


たっぷりと間を空けて言葉を口にしたティアは最後に覚悟を決めた表情をしながら、こう言った。


「私達も同行させて下さい」

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