第333話 3つの固有スキル

「"天岩戸あまのいわと"」


「っ!?」


刀と手甲が交差する中、キョウは徐にスキルを放った。その途端、力が抜ける感覚に陥ったシンヤは追撃を警戒して、その場から急いでバックステップを行い、距離を取った。


「……………なるほど。随分と良いステータスをしているじゃねぇか」


「……………」


「おかげでとても


「危なかった。事前にお前のスキルを知っていなかったら、まんまと沈められていたな」


「ふむ。その反応から察するにお前………………ここまでの動きは全て読んでいたな?」


「ああ。ついこの間、便利なスキルを手に入れたんでな」


「……………ああ、なるほど。ハジメの小僧からパクったスキルか」


「あいつを知っているのか?」


「ああ。一度、家庭教師の依頼を受けてな。ワガママで無茶苦茶な奴だったが、その才能はずば抜けていた………………もちろん、俺の息子程ではないがな」


「……………」


「あの馬鹿が迷惑をかけて悪かった」


「おい。今は戦闘中だ。気軽に頭を下げるな。それと雰囲気から察するに奴とはそこまでの関係ではなかったんだろ?」


「確かにたった一度携わっただけの関係だ。だが、それでもあいつは紛れもなく俺の教え子だ。俺はそういった縁を蔑ろにはしたくない」


「……………」


「そんなことよりも"未来視"で一体どんな未来を見たんだ?」


「お前がまず、最初に"写し鏡"を使ってくるところだ」


ちなみに試合直前にシンヤが見たキョウのステータスはこれだった。


―――――――――――――――――――――――


キョウ

性別:男 種族:人族 年齢:40歳


Lv 10

HP 10/10

MP 10/10

ATK 1

DEF 1

AGI 1

INT 1

LUK 100000


固有スキル

写し鏡・世界旅行・天岩戸


武技スキル

刀剣術:Lv.7

体術 :Lv.7


魔法

無属性魔法:Lv.8


装備

粗末な手甲(神級)

薄汚れたローブ(神級)


称号

異世界からの来訪者・運の女神の加護・勇者召喚されし者・捨てし者・災難が降りかかりし者・覚悟を決めた者・逆境に抗いし者・ご都合主義・追い求める者・魔物キラー・統率者・盗賊キラー


―――――――――――――――――――――――


装備のランクや称号にいくつか気になるものはあるものの、なんといってもまず最初に目がいくのはLUK 値を除く項目の数字の低さだった。そこだけを見ると一般人にも劣っている程であり、面会室で対面を果たした時にシンヤが警戒したことの説明が付かない……………ところが、彼の持つ固有スキルはその弱みすらも覆す程のとんでもないものだった。


「"写し鏡"…………… 自身や他者のステータスを閲覧できるという俺の"神眼"の下位互換のような能力だが、これはほんのおまけに過ぎない。このスキルには加えてもう1つ能力があるからだ。それは………………"自身のステータスを他者のステータスと全く同じものにすることができる"というふざけたものだ。1日に数回しか使えないのが難点だが、一度使ってしまえばそのステータスのまま、30分は活動することができる。さらに途中でそのステータスよりも強い人物や魔物が現れた場合は瞬時にステータスの乗り換えが可能。なんにせよ、少なくとも敵と同じステータスになってしまえば、理論上は負けることがない………………俺が言うのもなんだが、無茶苦茶なスキルだな」


「聞く限りだと無敵のような固有スキルだと思うだろ?だが、ちゃんと欠点はある。そもそもステータスが変わる度にそのステータスに身体を馴染ませなきゃならないのが苦痛だな。普段はその辺の奴に小突かれたくらいで瀕死になってしまう。だから、絡まれそうになったら、そいつよりも少し強い奴に"写し鏡"を使って、ステータスを変更し、応戦するかやり過ごす。んで次にそれよりも断然強い魔物や盗賊などに遭遇した場合はいきなり高ランク冒険者相当のステータスへと変更し、戦闘。最初の頃は緩急の差が激しすぎて、何度も吐いたわ……………まぁ、慣れてくれば息をするようにして、使えるようになったが」


「………………それもとんでもない固有スキルだが、俺が"未来視"で見た"写し鏡"を使った直後にお前がしてきたことの方が俺としては危なかった」


「ありゃ。いきなり、手の内を2つも知られたか」


「"天岩戸あまのいわと"……………… "対象の固有スキルをランダムで1つだけ10分間使えなくする"というこれまたふざけた固有スキルだ」


「その結果、お前は今、"神眼"が全く使えない状態だ」


「俺としては一番マシなものを持っていかれた感じだ。"写し鏡"を使った直後のお前のステータスもちゃんと見ておいたからな」


ちなみに"写し鏡"を使用直後のキョウのステータスがこれだった。


―――――――――――――――――――――――


キョウ

性別:男 種族:人族 年齢:40歳


Lv 30

HP 3000000/3000000

MP 3000000/3000000

ATK 3000000

DEF 3000000

AGI 3000000

INT 3000000

LUK 300000


固有スキル

写し鏡・世界旅行・天岩戸・魔の境地・守護神・叡智・サイボーグ・炎熱操作・戦士の誓い・透過・明鏡止水・勇者王・大革命・大黒柱・リセット


武技スキル

刀剣術:Lv.MAX

体術 :Lv.MAX


魔法

全属性魔法


装備

粗末な手甲(神級)

薄汚れたローブ(神級)


称号

異世界からの来訪者・運の女神の加護・勇者召喚されし者・捨てし者・災難が降りかかりし者・覚悟を決めた者・逆境に抗いし者・ご都合主義・追い求める者・魔物キラー・統率者・盗賊キラー


―――――――――――――――――――――――


流石に装備や称号は本人のものであったが、他にもLUK 値やシンヤがこの世界に来た時に最初に持っていた固有スキルは引き継げないなど、どうやらいくつか制約はありそうだった。しかし、それを差し引いてもとんでもなく強力な固有スキルである。


「気合いを入れなおさきゃな」


シンヤは面会室で初対面を果たした時にキョウから感じた只者ではない雰囲気が当たっていたと確信しつつ、再び刀を構えて今度はキョウの出方を待った。


「流石に慎重だな」


「当たり前だ。今、目の前にいるのはもう1人の自分と考えてもいい存在。つまり、俺を殺せるのはこの世でお前、ただ1人だけということだ」


「その逆もまた然りだな………………だが、それにしても警戒しすぎじゃねぇか?」


「それもそうだろう。なんせ………………」


シンヤはそこから少し間を空けて、こう言った。



「お前の3つ目の固有スキルである"世界旅行"……………それを何故か"神眼"でも見通すことができなかったんだからな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る