第324話 全面戦争6
「はぁ、はぁ、はぁ…………」
「まさか、こんなことになるとはな。だが、事前に作戦会議をしておいて正解だった。よし。あとは急いでみんなと合流を……………」
ドソーは懐にいそいそと何かを忍ばせて、今にもクランハウスを飛び出そうとした………………と、その時だった。
「おいおい。そんな大金を持って一体どこに行こうというんだ?」
彼以外、誰もいないはずの部屋に誰かの声が響いたのは……………
「っ!?だ、誰だっ!?」
ドソーは焦りながらも目をよく凝らして部屋の中を見回した。すると、そこにいたのはこれまた先程まで同じ戦場にいたはずの"黒の系譜"……………それも傘下クランのクランマスターだった。
「お、お前は"剣聖"ギース!な、何故ここにいる!?」
「それはこちらの台詞だ、"剣の申し子"ドソー。お前の方こそ、こっそりと戦場から抜け出して一体どこに行くのかと思えば、こんな場所まで………………どうした?今は戦争のお時間だぞ?」
「ちっ、厄介なことになった……………それにしてもおかしいな。来る時、追手はなかったはずだが」
「確かにお前程の相手に生半可な尾行は不可能だろう。だが、忘れたのか?俺の……………俺達のトップが誰であるのかを」
「…………なるほど。"黒締"に何か仕込まれているのか」
「いいのか?最期に考えていることがそんなことで?」
「は?最期?」
ドソーの問いかけに対して、ゆっくりと剣を引き抜きながらギースはこう言った。
「ここから逃げ延びられる訳がないだろう。残念だが、お前はここで終わりだ」
―――――――――――――――――――――
「遅い!全然来ないじゃないか!」
レッドは思わず、怒鳴った。現在、レッド・アレイ・ヘビーの3人は落ち合い場所となっている森の中にいた。既に集合時間から10分は経っているのだが、この3人以外の者は一向に現れる気配がなく、だんだんと彼らに苛立ちが募ってきていたのだ。
「……………やっぱり、通信の魔道具にも反応しないな」
「こちらもだ」
「一体今、あいつらに何が起きているんだ」
傘下クランのクランマスターへと魔道具を使い、連絡をしようとしていたヘビーとアレイであったが、向こうがちっとも反応しない為、何かトラブルがあったのではないかと思い、彼らは段々と不安を感じ始めた。
「おかしい…………これはおかしいぞ。なんだか嫌な予感がしてきた。おい、お前ら……………っ!?」
そして、レッドが焦った声を出し、2人へ確認を取ろうと思い、振り返った次の瞬間、彼は驚くべき光景をそこで目の当たりにして息を呑んだ。
「「……………」」
「OK〜お前もそのまま静かにしてろよ?命が惜しければな」
そこにはヘビーとアレイに武器を突き付けたアスカとノエが立っており、
「さて……………お前ら、ここに全財産を置いていけ」
一方のレッドには刀を向けて不敵に笑うカグヤがいたのだった。
―――――――――――――――――――――
「お、カグヤか。どうした?」
「いや、例の件が終わったから報告をとな」
「そうか。俺達の方ももう少しでここを発つ予定だ」
「全く、そっちはいい気なもんだぜ。こっちは戦争してるってのに。3TOPがいなくてどうすんだよ」
「だが、お前らに経験を積ませるチャンスだからな。それに困る程の相手ではないだろう?」
「まぁな。アタシらの相手をしたきゃ、それこそ"神"でも呼んでくれないと話にならんからな」
「ちなみに奴ら、妙な動きは見せたか?」
「ああ。シンヤの言った"後半の変な動き"をしてきたよ」
「やっぱりか。で?あいつら、自分達の拠点へといそいそ帰っていっただろ?」
「そうだよ。全く……………ヒントしか与えてくれないのは意地悪だろ。全部教えてくれればいいのに」
「だから、いつも言ってるだろ。固有スキルや魔法に頼りすぎるなと。ましてや、戦争に参加しない俺の固有スキルを当てにするな」
「うっ…………ごめん」
「まぁ、いい。カグヤ、今回はよく頑張ったな」
「シンヤ……………」
「それで?…………奴ら、一体いくら隠し持ってた?」
「結局、金かよ!情緒もへったくれもねぇな!!」
「おいおい……………」
「これは本当にとんでもないことだぞ」
冒険者ギルドに貼られたとある記事に群がる冒険者達。その記事を見た彼らは皆、驚いた表情を浮かべて開いた口が塞がらなかった。
「だから、俺は言っただろ。"
「お前、そんなこと一言も言ってなかったじゃねぇか!それに今回はよりにもよって、あの3
「とにもかくにも俺達が言えることは1つだな」
最後に発言した冒険者はその後、こう締め括った。
「"黒の系譜"には絶対に手を出しちゃいけねぇ。あいつらが正真正銘、NO.1だ」
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