第291話 放れ山羊

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シャウロフスキー

性別:男 種族:魔族(黒山羊種)→擬似逆神バフォメット(覚醒状態) 年齢:--


Lv --

HP 100000/100000

MP 100000/100000

ATK 78900

DEF 63200

AGI 51200

INT 84900

LUK 77700


固有スキル

擬似神判しんぱん擬似神十字かみじゅうじ擬似神錬金かみれんきん擬似神異放しんいほう


武技スキル

擬似神武


魔法

擬似神魔


称号

逆神の加護・憧れる者・負けず嫌い・抗う者・格闘家・正義感に溢れる者


装備

黒龍のマント(中級)

黒龍のグローブ(上級)


――――――――――――――――――――




「ちょっと!これ、やばいんじゃないの!?」


「そうだったわ!……………"黒山羊種"は魔族の中で最も弱い種なのだけれど、何らかの理由で覚醒状態になるととんでもなく強くなるらしいわ!」


「それ今、言っても遅いよ!何でもっと早く言ってくれないの!」


「言ってどうにかなった!?あなたも感じているだろうけど、今のあの子は私達よりも圧倒的に強いのよ!?」


「で、でも……………」


「それに覚醒状態になる理由は未だに解明されていないし、まさかあの子がそうなるとは思わなかったの」


「そうなの?」


「ええ。現に過去に覚醒状態となった"黒山羊種"の事例は数少ないのよ……………それが何だってあの子が」


サクヤとモロクはシャウロフスキーから放たれる魔力の波動に顔を顰めながら、話をした。ちなみにシャウロフスキーが何事かを叫んでから既に3分は経過しているのだが、彼が特別その場から動くことはなかった。しかし、かといっていつどんな行動に移るかは分からない。その為、サクヤとモロクは襲撃された時に対応できるよう常に警戒を怠らなかった。


「これは一時休戦だね」


「ええ。最悪の場合は2人で彼を止めるわよ」


「あら。そこは"止める"なんだね。随分とお優しいこと」


「一体何が言いたいのかしら?」


「別に〜」


「くだらないことを言っていないで目の前のことに集中しなさ……………っ!?」


「ぼくは弱い〜〜〜〜!!!」


「うわあっ!?」


それはモロクがサクヤに苦言を呈した直後だった。シャウロフスキーが叫びながら離れた距離を一瞬で詰め、2人に襲い掛かったのだ。


「何で僕は弱いんだ〜〜〜!!!」


「くっ!これは……………」


「まずいねっ!」


もはやシャウロフスキー本人の意識はなく、何者かによって操られでもしているのか、同じ言葉を繰り返し叫びながら暴れていた。サクヤとモロクは何とか飛んでくる攻撃を防ぎながら、どうやったらこの状態のシャウロフスキーを止められるのか必死に考えを巡らせた。しかし……………


「全然隙が見当たらないよ!」


「そうね。彼を止められるとすれば、まず純粋な実力で上回る必要があるわ。でも、そんな者がそう簡単にいるはずない」


自分達よりも強い者の攻撃をいなしながらでは考える余裕はほとんどない。モロクに至っては半分諦めたような状態だった。だが、それもそのはず。何故なら、モロクは先程、サクヤとの戦いで魔剣を失ってしまったのだ。刀を持つサクヤでさえ、傷が所々できている。となると丸腰のモロクがそれ以上のダメージを負っていることは当然だった。この状況を鑑みた結果、モロクは2人でどんな小細工をしようがどうしようもないと踏んだのだ。


「うぐっ!?」


「っ!?大丈夫!?」


そんな中、シャウロフスキーの攻撃が運悪くヒットしてしまったモロクはそのあまりの威力に右腕を半ばから失い、思わず座り込んでしまった。


「ふっ……………ちょうど彼にしたのと同じことが返ってきたわね。これも因果応報かしら」


「何やってんの!!次の攻撃が来るよ!!」


その瞬間、モロクはやけに周りの動きがスローモーションのように映っていることに気が付いた。壊れた噴水から飛び散る水、剥がれて宙に舞う石畳みの床、遠くから悲痛な顔で叫ぶサクヤ……………そのどれもがとてもゆっくりと動いて見えた。そこで彼女は思った。


"ああ…………これが走馬灯ってやつなのね"


話には聞いていたが実際に体験したことはなかった為、モロクはかなり驚いた。と同時に無性に悲しくもなった。


"これが私の最期?そう………………"


迫り来るシャウロフスキーの攻撃をボーッと見つめながらモロクはゆっくりと目を閉じた。そして、その時彼女は心の中でそっと呟いた。


"私の…………人生って一体何だったのかしら"


直後、とてつもない轟音が辺りに鳴り響き、大地が揺れた。そんな中、モロクはすぐにやってくるであろう激痛と永遠の暗闇を待っていた。


「……………あら?痛くない?」


ところが、確実に5秒は経っているはずなのだが痛みは一向にやってこなかった。そればかりか誰もが立っていられないほど地面が揺れているのにも関わらず、何故か浮遊感と温かいものに包まれている感覚があった。


「一体どうなって……………え?」


不審に思ったモロクが恐る恐る目を開けてみるとそこには………………


「ったく………………やっぱりこうなったか」


シャウロフスキーの拳を片手で受け止めながら、モロクをお姫様抱っこで抱き抱える黒髪の青年が立っていた。

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