第290話 勇者と魔王

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サクヤ・キリハラ

性別:女 種族:人族 年齢:17歳


Lv 99

HP 9999/9999

MP 9999/9999

ATK 9999

DEF 9999

AGI 9999

INT 9999

LUK 9999


固有スキル

勇者・限界突破・革命・魔の境地・守護神・叡智・サイボーグ・炎熱操作・戦士の誓い・透過・明鏡止水・成長速度4倍(残り3日)・必要経験値1/2(残り3日)


武技スキル

刀剣術:Lv.MAX

体術 :Lv.MAX


魔法

全属性魔法


装備

黒衣一式(神級)

紫黒の刀オハバリ(伝説級)


称号

異世界召喚された者・運の女神の加護・ご都合主義・勇者・突き進む者・憧れを抱く者・成長期・努力家・傅く者・恋する乙女・従者の心得・武神・魔神・魔物キラー・盗賊キラー


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「勇者……………?」


痛む身体に鞭を打って起き上がったシャウロフスキーはそう呟いた。通常であれば痛みで全く動けないはずなのだが、あまりの衝撃に一瞬怪我していることを忘れていた。


「そう。私は魔王を倒す為に別の世界から召喚されたんだ………………っと、君ボロボロだね。"聖浄セイント・ヒール"」


「っ!?う、腕が元通りになっていく!……………あれ?この魔法、どこかで……………」


少女………サクヤが魔法を発動するとシャウロフスキーは温かい光に包まれて半ばから切断された右腕が再生し、それ以外の傷も徐々に回復していった。その様子を見つめながら、魔王モロクは険しい表情を浮かべていた。


「勇者ねぇ………………そういえば、人族領内のどこかの国が勇者召喚を行ったとか聞いたような」


「ありゃ、既に知ってたんだ。サプライズ失敗じゃん」


「いえ、大成功よ。まさか、こんなタイミングよく現れるとは思ってもみなかったわ……………正直、かなり驚いてる」


「それは良かった。じゃあ、立ち話もこれぐらいにして……………始めようか」


その瞬間、サクヤから凄まじい殺気が放たれた。近くにいたシャウロフスキーはもちろんのこと、距離を取っていたモロクにまでそれは及び、彼女の警戒心は一気に跳ね上がった。


「う…………ぁ……………」


「っ!?これはまずいわね」


圧倒的な格の違いにシャウロフスキーの唇からは思わず、声にならない声が漏れた。一方のモロクは戦闘態勢を整えると同時に攻撃を見逃さぬようサクヤの一挙手一投足に気を配った。


「…………"黒一閃"!!」


「っ!?"黒蝕崩"!!」


そして、その時は突然訪れた。軽く息を吐いた直後、一気に駆け出したサクヤはモロクとの距離を僅か3秒で詰め、斬りかかった。対するモロクは魔剣にかなりの魔力を流し込み、フルパワーで振るった。


「流石は魔王!やるね!」


「くっ!余裕そうなのが腹立たしいわね!」


刀と魔剣がぶつかり合い、その際に発生した衝撃波によって2人の周囲はその姿を変えていく。ところどころ地面が陥没し、突如吹き荒れた暴風に石畳みの床が剥がされていった。さらにシンボルであった噴水には亀裂が走り、それが壊れてしまうのも時間の問題だった。この状況に完全に部外者となってしまったシャウロフスキーはというと自身も吹き飛ばされてしまわないよう、必死で地面にしがみつきながら2人の戦いをじっと見つめていた。


「何を勘違いしていたんだろう……………僕なんかが魔王に勝てる訳なかったんだ」


目の前で繰り広げられている戦いを見ながら、ここで遂にシャウロフスキーは完全に戦意を喪失してしまった。そして、そんなことを気にする余裕が2人にはなく、戦いはどんどんと激しさを増していった。


「まだまだいくよ!」


「それはこっちの台詞よ!」


そこからしばらく、辺りには武器と武器がぶつかり合う音が響き渡っていたのだった。








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「ふぅ〜……………結構食らいついてくるね」


「はぁ、はぁ、はぁ。当たり前じゃない。こっちは命懸けてんのよ?」


どのくらいの間、戦っていただろうか。人によっては長くも短くも感じるであろう体感時間の中、2人はずっと打ち合っていた。


「私だってそうだよ」


「あなたとは心構えも状況もその何もかもが違うわ」


「?」


「私は魔王よ。今日まで各地を練り歩き、惨たらしいことを沢山してきたわ。だから、色々なところから恨みを買ってるの」


「そんなの自業自得じゃん」


「ええ、そうよ。それに関しては別に開き直って被害者面する気もないわ」


「何が言いたいの?」


「私は常に狙われる身ということよ。つまり、明日には命がなくなっているかもしれない。対して、あなたは挑戦者。私に挑むかどうかはあなたの自由なの。私の討伐を誰かに任せて、どこかで静かに暮らしていることもできるわ」


「何言ってんの?魔王がいる限り、どこかで安全に暮らしていける訳ないじゃん。だって、何もしてなくてもそっちから襲ってくるし……………現に無関係な魔族の人達が犠牲になってる」


「………………それが本当なら、そうね」


「?……………あのさ、さっきから思ってたんだけど、もしかしてあなた………………っ!?」


「あら…………遂に限界がきたのね」


それはサクヤが言い終わる直前に起こった。なんとモロクの握っていた魔剣が半ばから折れてしまったのだ。度重なるサクヤとの激しい打ち合いに耐えられなかったのだろう。途中から魔剣にヒビが入っていることに気が付いていたモロクは魔力を込めたり衝撃が伝わらないよう、それでもカバーしていたのだがそれもどうやら限界のようだった。それにしてもこんな一息ついて穏やかに話している中、折れるというのは………………


「不吉ね………………っ!?」


「っ!?何!?」


それはモロクが呟いた瞬間だった。2人はとてつもない魔力が突如発生したのを感じ、同じ方向を見た。すると……………


「僕は弱い弱い弱いよわいよわいよわいよわいよわい………………なんで弱いんだ〜〜〜〜!!!!!」


そこには角が1本増え、翼と尻尾が生えたシャウロフスキーが何かに取り憑かれたように叫びながら立っていた。

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