第253話 "暴食"・"色欲"・"怠惰"・"嫉妬"
「はぁ、はぁ、はぁ…………助かったよ、ありがとう」
「礼には及ばん。にしてもそいつが例の………」
「ああ。七罪"暴食"のジャイガントだ。いや〜巨人族はパワーも耐久力も凄いね、参ったよ」
「だが、勝ったのはお前だ。流石はSSランク冒険者というところか」
「君に褒められるとは嬉しい限りだね"牛狩り"ケープ」
「片がついたのなら、今度は私の番だな。あっちで棒立ちしている奴を殺ればいいんだな?」
「ああ、頼むよ。僕はもうクタクタで動けそうにない」
「では行ってくる………………お疲れ様だ、"笛吹き"」
「助けてくれてありがとう、魚人さん。あ、それともこう呼んだ方がいいのかしら……………"銛使い"フェンドさん」
「いや、大丈夫だぞ。というか、オイラの名前、知っていたのか」
「それはそうよ。Sランク冒険者なら、知れ渡っていて当然。まして貴方達なら余計にね」
「なんか嬉しいぞ!これでもっとシンヤ様のお役に立てる!!」
「あら、素敵な横顔…………」
「あ、ところで」
「ん?」
「お前はなんて名前なんだ?」
「ガクッ…………し、知らないで助けてくれたのかしら?」
「ああ。白い修道服の奴に絡まれてるのかと思って。オイラ達は今、そいつらを倒して回っているんだ」
「そ、そうなの。まぁ、逆に下心なしで助けてくれたという点では好印象なのかもしれないわね……………ちなみにだけど、その修道服の集団の名前とかって分かるかしら?」
「ん?"聖義の剣"だろ?」
「ま、負けた!?私の知名度がそんなぽっと出の集団なんかに………………SSランク冒険者だからって自惚れてたのかしら」
「えっ!?お前、SSランク冒険者なのか?」
「それすら知られていなかった!?一体何だと思っていたのかしら!?」
「いや、か弱い一般人が標的になっているのかとばかり」
「冒険者とすら思われてなかった!?も、もう何なのよ、これ!せっかく七罪"色欲"のペンネとかいうのを倒して、さらにはこんな素敵な人にも出逢えたっていうのに………………ボソッ」
「でも、勘違いしても仕方がねぇと思うよ」
「え?」
「なんかお前、神聖な雰囲気がするし可愛いさと綺麗さの両方を兼ね備えた美貌もある。さらにオイラみたいなのが下手に触れてしまえば、壊れちゃいそうなぐらい儚げでとっても素敵だと思うぞ」
「え、え、え〜〜っ!?ち、ち、ちょっと待って!?わ、私が?ほ、本当に?」
「ああ」
「そ、そ、そんな急に言われても心の準備が………………あ、そうだわ!よ、よろしければ、もう一度さっきの台詞を仰って下さらない?」
「え?何でだ?」
「だ、だ、だってそんなこと言われるなんて思ってもみなかったから、魔道具の準備もしていなかったし、それに……………きゅ〜〜〜〜」
「お、おい!しっかりしろ!いきなり倒れてどうしたんだ!?それに顔が真っ赤だぞ!」
「これも全てあなたのせいよ…………」
「は?何でだよ!?」
「と、とにかく後日、きっちりとお礼に向かわせてもらうわ」
「お、おう。まぁ、その前にあそこで突っ立ってる奴に負けてしまえば、それもないんだけどな」
「あなたなら、大丈夫よ。ほら、さっさと行ってきなさい」
「おう!じゃあな!」
「ちょっと待ちなさいよ!」
「いや、何でだよ!今、送り出してくれただろ!」
「私がまだ名乗ってないじゃない!それなのによく行けるわね」
「うわ〜なんか面倒臭いぞ、こいつ…………ボソッ」
「聞こえているわよ」
「っ!?で?お前の名前はなんていうんだ?」
「よく覚えていなさい。将来、あなたの最も身近な存在になる名前なんだから。私の名はケリュネイア。周りからは"麗鹿"って呼ばれることもあるわ」
「ふんっ!礼は言わんぞ!本当は俺様1人でも倒せたんだ」
「いや、別に求めてないんでやすけど」
「何だ、その態度は!自分の方が大人だと言いたいのか!どうせ俺様は子供だ!なんせ、助けてもらっておいて礼の1つもできんのだからな!」
「いや、オレはそんなこと言ってないんでやすけど……………あと、後半部分は威張って言うことじゃないと思う」
「……………あ〜くそっ!助かったよ、ありがとう!次はお前の番だな"巨腕"」
「情緒が凄いでやすね。まぁ、"大風"さんもよく頑張りましたね。"怠惰"のフロウでしたっけ?七罪の力はやっぱり堪えやしたか?」
「………………まぁな。随分と珍しいものに出くわした。今後、ああいうのは勘弁願いたいな」
「そうですかい……………じゃあ、オレはあそこで余裕ぶっこいてる奴を倒しに行ってきやす」
「………………おい、"巨腕"!」
「はい?」
「が、頑張れよ…………」
「ははっ。可愛いところもあるんでやすね」
「う、うるさい!とっとと行ってやられてこい!!」
「ふぅ〜………………悪い、助かったわ。ありがとな」
「いえいえ」
「にしても相手の剣撃を止めた腕前、流石は噂通りの剣士だな」
「いえいえ。ワタクシなどまだまだですわ。組長を務めるので精一杯ですし」
「謙遜はよせよ。あの化け物だらけのクランの中で幹部候補生ってだけでも凄いじゃんか」
「恐れ多いことですわ」
「それに着々と名前が浸透していってるしよ。"剣姫"リーゼと言えば、見目麗しい高貴な女剣士ってことで有名だぞ」
「狭いコミュニティ内での話ですわ」
「全く…………謙遜も度が過ぎると嫌味にしか聞こえんぞ。ってか、そんなことより………………惜しい!実に惜しい!」
「はい?」
「もしもお前が人族じゃなくて獣人族なら、アタイんとこも喜んで受け入れられたのに!!」
「ああ、そうでしたわね。確か、貴方のところは…………」
「そうなんだよ!獣人族のみで構成されてるからな……………くぅ〜〜悔しいぜ」
「"赤虎"さん、そんなに落ち込まなくても大丈夫ですわよ?」
「へ?」
「だって、仮にワタクシが獣人族だったとしても貴方のところには入りませんから。ワタクシにとっての一番は常にシンヤ様だけですわ」
「…………こりゃ、完敗だな。ってか、そんだけ想われてるシンヤは幸せ者だ」
「他人事ではなくてよ。貴方も同じような想いをお持ちだと思うのですけど」
「っ!?ど、どういう意味かな〜?」
「まぁ、どうでもいいですけど」
「いいんかい!…………こほんっ。とにかく、さっきはありがとう。次はお前の番だな。頑張れよ」
「はい。行ってきますわ。あそこでやけに焦っているのが相手でいいんですわよね?」
「ああ」
「では一瞬で片をつけてきますわね」
颯爽と歩き出すリーゼの後ろ姿は見る者を惚れ惚れさせる程、頼もしくそれでいて美しかった。
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