第212話 来客
「よぅ!邪魔してるぜぇ!」
朝早くから来客があり、その対応をしていた者から至急、応接室に来て欲しいと頼まれた為、向かってみるとそこには昨日威勢よく絡んできた"赤虎"ウィアがいた。そもそも何故ここが分かったのか、甚だ疑問でならない。昨日、ギルドを出た私達はクランハウスを購入する為に不動産屋に向かった。そもそもこの街に来たのはクランハウスを購入し、そこをクランの支部として私達が常駐する為だった。ちなみに私達だけではなく、幹部以上の方々や遊撃部隊を除いた皆が各地へと組ごとにバラけて同じ行動を取っている。その際、従魔部隊からも1名ずつどこかの組へ同行する形となっていた。私達のところには"神狼"フェンリルが着いてきていた。ともかく、そんなこんなでクランハウスを購入し、そこを拠点とし始めたのがつい昨日のことなのだ。それが何故、こうも早く知られているのか。まぁ、それは最悪置いておいて……………私は軽くため息を吐きながら目の前の人物を見た。赤く綺麗な長髪に虎人種を主張する耳、目はキリッとしており、鼻筋もやけに通っている。尻尾はちゃんと縞模様で今は機嫌がいいのか、ソファーの背もたれと背中の間でユラユラと揺れている。勝ち気な態度と自信満々な表情が上手く合わさっており、良くも悪くも好き嫌いの分かれる人物だ。シンヤ様から聞いていた通り、実力者なのだろう。座っているだけでも武人というのが伝わってくる隙の無さ。この世界の基準でいえば、間違いなく強者の一角だ。だが、そんなことはどうでもいい。最も彼女の目立つところはそんなところではないのだから。そう。何を隠そう。彼女は………………彼女の胸は超デカかったのだ。
「巨乳なんて、みんな滅びればいいのよ…………ボソッ」
「ん?何か言ったか?」
「いいえ。それにしてもよくここが分かったわね」
「まぁな。アタイ、鼻がめっちゃいいんだ」
「あっそ。で?何の用?」
「か〜っ!相変わらず、つれないその態度、いいね!」
「追い出すわよ」
「あ、待った待った!用件を言うから」
「早くしてちょうだい。こっちも暇じゃないの」
「悪い。じゃあ単刀直入に言うな……………アタイと真剣勝負をして欲しい。そんでもしもアタイが勝ったら、クーフォ、お前をアタイのクランに引き入れたい」
「……………は?」
「やっぱり、ダメか?」
「それ以前に昨日と言っていることが少し変わってるじゃない。"勝ったら"なんてなかったし」
「いや、正直昨日クーフォに断られる直前まではただ自分の力を試したいってことだけしか考えていなかった。でも、あの時、お前にメリットがないから無理だと言われて、衝撃が走ったんだ。自慢じゃないがアタイはSSランク冒険者で周りからは畏怖される存在だ。そんなアタイに面と向かって、あんな発言ができるのは仲間達の中にもそういない。だから、とても驚いたし同時に嬉しかった。あんな気持ちになるのは何十年ぶりか。そう考えたら、今すぐにでもお前を手に入れて、アタイの右腕として手元に置いておきたいって思ったんだ」
「買い被りすぎよ。私じゃなくても仲間内に右腕にふさわしい人物なら、いるでしょ」
「ああ。別に今の副クランマスターにケチをつけている訳じゃない。彼女も上手くやってくれている。だが、あの時のお前程、はっきりと恐れもせずに発言してくれるかどうか……………そうなるとやはり、お前が」
「ふんっ」
「な、何だ?何かおかしなことを言ったか?」
「いえ。世界が狭いと思ってね」
「何だと?」
「言っておくけど、あんたにあんな態度を取れるのは私だけじゃないから。ここにいる私の部下も各地へ散らばるメンバーも……………クラン"黒天の星"に所属している者なら、誰を相手にしたって大したことはないって感じるの。ましてや怖気付くことなんてあり得ないわ」
「それはどういうことだ?」
「だって私達のクランマスターはこの世のどんな者よりも強く気高く美しいのだから」
「……………なるほどな。それを聞いてますますお前…………いやお前達のことが欲しくなったよ」
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