第63話 巨人

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ヒュージ

性別:男 種族:巨人族 年齢:27歳


Lv 50

HP 4800/4800

MP 3800/3800

ATK 4798

DEF 4654

AGI 3967

INT 4032

LUK 4500


固有スキル

収縮・破壊・堅牢・魔の境地・守護神・叡智・サイボーグ・炎熱操作・戦士の誓い・透過・明鏡止水・???


武技スキル

刀剣術:Lv.MAX

体術 :Lv.MAX


魔法

全属性魔法


装備

黒衣一式(神級)

菫色のナックル ブラス(上級)


称号

巨神の加護・心優しき者・見守る者・傅く者・従者の心得・武神・魔神・魔物キラー・盗賊キラー・不器用


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収縮

自身の身体を小さくしたり、より大きくしたりできる。


破壊

あらゆるものを破壊する固有スキル。ただし、自身よりもレベルの高い者には効かない。


堅牢

1日2回しか使用できない。自身の全ステータスを2倍にすることができるが、発動中は一切動くことができず、スキルや魔法の使用も不可能。発動してから、それが完了するまでは10秒かかる。


巨神の加護

巨神ティーターンの加護。HPの値に補正。


心優しき者

心がとても優しい者に贈られる称号。DEFの値に補正。


見守る者

事の成り行きを静かにじっと見守ることのできる者に贈られる称号。INTの値に補正。


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オレは巨人族。故に俺の目には大抵の人や物が小さく、短く映る。村を出てからはそんなことが多かった。オレの生まれ育った村には巨人族しかいなかった。その為、生活で使う場所や物、食事など全てが巨人族基準で成り立っていた。しかし、一歩村を出れば、そうはいかない。初めて、他の街を見た時は驚いた。あれはオレがまだ20歳の頃のこと。兼ねてより、外の世界へと興味を持っていたオレは意を決して、近くの街まで行ってみた。すると、どうだ…………種族やサイズ、食事風景、その全てが新鮮で頭をハンマーで思い切り殴られた時のような衝撃を受けたのを今でも覚えている。これがキッカケでオレは外の世界へと本格的に興味を持つようになったんだ。それからは色々な場所を旅して回った。その際に冒険者ギルドで身分証などは特に作らなかった。オレみたいなデカイのがいきなり、ギルドを訪れれば、周りの者達がパニックになると思ったからだ。だから、街に入る時はその都度、税金を払っていたんだが、持ち金が少なくなってくると行商人の護衛をしたり、街で雑用などをこなして日銭を稼いでいた。そんな日々を過ごして7年が経ったある日、迷宮都市シリスティラビンでオークションが開催されるということを聞いたオレはそれが気になって、移動している最中に黒ローブを纏った謎の集団に囲まれ、気が付くとオークション会場で出品されることとなってしまった。そして、これが後にオレの人生をより刺激的なものにするようになるのだった。


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「ヒュージ、受付終わったよ」


「ありがとうございやす、ニーベルさん」


シンヤ様から発表されたオレの上司、ニーベルさんと共にやってきたのは闘技場コロッセオが有名な都市、パドルだった。ここは日替わりで見習いの剣闘士が戦う"日闘"と月に1回、誰でも参加できる単純な強さを競い合う大会"月闘"で成り立っている都市だ。観戦料や飲食代、宿泊費など観光客が多く行き交うこの都市にとっては多額の金銭が日夜、飛び交っているが、中でも一番と言っても過言ではない程、一度に大きく金銭が動くものがある。それは…………一体誰が勝つのか、皆で予想し合う遊戯、いわゆる賭けのことである。


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「いよいよ、次でやすね」


「なんだ、緊張しているのかい?」


「ええ、まぁ…………。なんせ、予選とかをすっ飛ばして、いきなりから準々決勝なんで」


組のメンバーを集めるに当たって、有望そうな者達が集結する闘技場に目を付けたオレ達。しかし、一見学者としてではそう易々と参加者達に接触などできない。そこで思い付いた案が自分達も参加して、直接スカウトすれば、何の問題もないというものだった。何の因果か、ちょうど今日、その月闘とやらが行われる日だったのだ。それで受付に向かい、ニーベルさんがギルドカードを見せたところ、受付の人の目が変わった。直後、ぜひ盛り上げる為に一役買ってくれないかという申し出を二つ返事で了承したオレ達はなんと特別待遇で準々決勝からの参加が決まったのである。


「まぁ、なるようにしか、ならないさ。上手くいけば、メンバーも見つかることだし、気楽にいこう」


「ええ」







「お前があの"十人十色"の1人、"橙酒"のニーベルだな?」


「あれ、僕のこと知ってるんだ」


「当たり前だ。"黒天の星"といえば、話題のクランじゃないか。しかも幹部は皆、Sランク…………お前を倒せば、俺も箔が付くってもんよ」


「へ〜ところで、君、誰?」


「俺を知らないだと?じゃあ、記念に自己紹介してやるよ。Aランク冒険者、"流水"のマーゼ…………今からお前を倒す者の名だ」







「"斧振環"」


「ぐ、ぐはっ…………なんて強さ」


「倒すとは随分と大きく出たもんだね」


「はぁ、はぁ」


「死に至るダメージを負ったとしても参加者が決して死ぬことはない特殊な結界か…………良かったよ、そんなものが張ってあって。じゃないと力加減を間違って、殺ってしまうかもしれないからね」


「っ!!」


「あ、冗談だよ?」


「こ、降参だ!無理無理無理!!」










「お前さんが相手の方ですかい。よろしく頼む」


「ふんっ、その服装にそのクランマーク……………全く、忌々しい」


「なんか気に障りやしたかね?」


「うるさい!とっとと始めるぞ!」








「"破拳"」


「ぐはあっ!……………くっ、これで幹部でもないだと?なのになんて強さだ」


「大丈夫ですかい?」


「覚えておけ!俺の名は"氷砕"のリドル、Bランク冒険者だ!で、お前の名は?」


「"黒天の星"所属、ヒュージ。Aランク冒険者でやす」


「ふっ、覚えておこう…………」


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「どうだった?」


「見込みはありそうでやすね」


「僕のところも同じだ。他にも良さそうなのがチラホラいる。この調子で探していこうか」


「ええ」


「…………あ、ちなみに決勝で戦う時は容赦しないからね?って言っても一体、誰が僕の相手になるのか、まだ分からないんだけどね」


「勘弁して下さいよ…………ってか、ニーベルさんが決勝に進むのは決定事項ですかい」


「当然」


「これが油断でも慢心でもない、ただの客観的な事実だから、タチが悪い」


その後、危なげなく決勝へと駒を進めたオレとニーベルさん。その途中で素質のある参加者達には積極的にアプローチをし、話を持ち掛けていった。オレ達の実力は実際に戦っている場面を見て分かっていた為、猜疑心などを抱くことなく、ちゃんと話を最後まで聞いてもらえた。自身の強さを確かめてみようと闘技場へとやってきた参加者達は目論見通り、向上心に溢れ、強くなることへの意欲がとても高かった。その為、それの近道になるかもしれないクラン"黒天の星"への入団は向こうにとって、渡りに船といった感じで大いに喜ばれた。オレもこのような両方が納得し、満足が得られる結果はとても嬉しい。やはり、誰かが幸せだったり、笑顔でいられる程良いことはないとこの時、再確認したのだった………………え?決勝戦はどうなったかって?そんなの完膚なきまで叩きのめされて終わりでやすよ。





この結果だけは少しだけ不満が残るのだった。

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