第59話 夢魔

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リーム

性別:女 種族:魔族(夢魔種) 年齢:22歳


Lv 50

HP 4000/4000

MP 4500/4500

ATK 4251

DEF 4143

AGI 4069

INT 4687

LUK 4300


固有スキル

魅了・搾取・踊り子・魔の境地・守護神・叡智・サイボーグ・炎熱操作・戦士の誓い・透過・明鏡止水・???


武技スキル

刀剣術:Lv.MAX

体術 :Lv.MAX


魔法

全属性魔法


装備

黒衣一式(神級)

褐色のモーニングスター ヴィーナス(上級)


称号

愛の女神の加護・伴侶を求める者・罪深き者・傅く者・恋する乙女・従者の心得・武神・魔神・魔物キラー・盗賊キラー・情愛者


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魅了

異性を魅了する固有スキル。10分間、相手はスキル使用者のことしか考えられなくなる。クールタイムは10分。


搾取

相手のHP・MPを全体の2割程、吸い取る。1日3回までしか使用できない。


踊り子

味方全体の全ステータスを1.2倍にする。


愛の女神の加護

愛の女神エロースの加護。INTの値に補正。


伴侶を求める者

自分にとって生涯のパートナーとなる人物を追い求める者に贈られる称号。LUKの値に補正。


罪深き者

無意識に異性から好かれる者に与えられる称号。AGIの値に補正。


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物心がついた頃から、異性の目を常に意識していた。どちらかと言うと、それはアタクシの意思ではなく、種族の本能として備わっていた感覚であった。寄ってくる男は数知れず、しかし、今まで本心から好きになれる者はいなかった………………そう、あの方に出会う、その日までは…………。歳を重ねるにつれて、自分の本能的な欲求が強くなってきているのを感じていたある日、アタクシはこのままだとそれが抑えられなくなって暴走してしまうのではないかという不安から、旅に出ることに決めた。目的は生涯の伴侶を探すことである。生まれ育った故郷を離れ、単身、色々な土地を旅して回った。行く先々で相も変わらず、男達が寄ってきたが、やはり心の底から情熱的な気持ちが湧いてくるような相手とは出会うことが出来なかった。そんな時、シリスティラビンという迷宮都市で何やら、オークションが開催されるとの噂を聞いた。アタクシはこれだと思った。今後、先の見えない旅をずっと続けるぐらいだったら、一か八か、落札者の中に運命の相手がいることに賭けて出品されてみようと思ったのだ。今、考えるとかなり大胆かつ無茶苦茶な手法だったように思う。しかし、アタクシはそれほど疲れ切っていたのだ。探しても探しても理想の相手が見つからない日々、それでも寄ってくる男達とつまらない会話をしなければいけないストレスから、一刻も早く解放されたかったのである。で、いざオークション会場のステージに上がり、客席を見渡した時、アタクシは激しく後悔し、この決断を下した自分を責めた。顔は違えど、考えていることは皆同じような感じの貴族達が揃って、こちらに下卑た目を向けている。この視線は旅の最中にも向けられることが多く、慣れてはいたが、気分のいいものではない。つまり、第一印象の時点で客席にはアタクシの探し求める人がいなかったと分かってしまったのだ。この賭けは失敗、落札者がなるべく早くアタクシを奴隷から解放してくれることを祈りながら、次はどうしようかと頭をフル回転させようとしたまさにその時、アタクシの今後の運命を決める声があたりに響いたのだった。


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「ノエさん、ちょっと待って下さいよ〜」


「きびきび、歩く。これ、大事」


「それはそうなんですけど〜」


アタクシの運命の相手であるシンヤ様から、直属の上司が発表されたのは一体、何日前だったか。現在、アタクシ達はシリスティラビンとフリーダムという街の中間の街を目指し、森の中を突き進んでいた。のんびりと歩きたいアタクシと違って、目の前を歩く人物…………上司のノエさんはそういうタイプではなかった。普段から、抜け目なく行動し、小柄な可愛らしい感じとは打って変わって、常に隙を見せない人だった。性格も容姿も行動も何もかも正反対なアタクシ達。どんな理由でシンヤ様はこの組み合わせにしたのか、今でも気になって仕方がない。しかし、そんなことばかり気にしてもいられない。なんせ、ノエさんは幹部の中でも古参の方。ティアさんからの信頼も厚い。そんな方に失態を見られでもしたら、どうなるのかは火を見るよりも明らか。今は目の前のことに集中しなければ…………


「あ…………」


「ど、どうされました〜?」


「喉、渇いた」


「あ、そ、そうなんですか〜」


「一旦、休憩。リームも、水、飲む」


「わ、分かりました〜」


何なのよ〜。怒られるかと思ったじゃない〜。紛らわしいったら、ありゃしないわ〜。でも、一応、アタクシにも気を遣ってくれているのよね〜こういう優しいところがあるのよ〜…………本当、罪深いわ〜。


「ゴクッ………ゴクッ」


それにしてもノエさんが一心不乱に水を飲んでいる姿………癒されるわ〜。そうだ。この機会に色々と質問してみようかしら〜。


「ノエさん、聞きたいことがあるですけど〜」


「ん、何?」


「ノエさんの過去って、そういえば聞いたことなかったなって〜。シンヤ様と出会った時のことは聞きましたけど、その前のことも知りたいな〜って…………アタクシの過去はほら、絶望の森で聞いたじゃないですか〜」


「……………」


「だから、ほら………お互いの過去をお互いが知ることで絆を深め合うっていうか〜…………ってあれ?どうしました?」


「いや、別に」


「あ、あれ?もしかして、アタクシ、地雷踏んじゃいました?す、すみません!このことは聞かなかったことに………」


「いや、大丈夫。リームになら、いい。シンヤや、みんなには、逆に近すぎて、言いづらいことも、ある。でも、リームは、ノエのことを、もっと知りたいって、言ってくれた。その気持ちは、嬉しいから」


「ノエさん………」


「今から、話すことは、みんなには、内緒。いい?」


「は、はい〜!絶対によっぽどのことがなければ、口が裂けても言いません!」


「その言葉、信じる。じゃあ、話すけど。ノエは…………」




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「なるほど〜そんなことが」


「うん」


「んもぅ、ノエさん〜!」


「うわっ!何で、急に、抱きつくの?」


「アタクシは何があってもあなたの味方です〜絶対に守ります〜上司ですけど」


「リーム、くすぐったい」


「アタクシ達、もしかして、根っこの部分は似てるかもしれません〜お似合いです〜」


「今度は、暑苦しい」


「そう考えるとシンヤ様の目は確かです〜アタクシ達、きっと、いいコンビです〜」


「コンビなら、相手のことを、気遣って」


「ん〜?………あ、す、すみません!アタクシ、途中から暴走しちゃって〜」


「…………別にいい。部下の我が儘を、許すのも、上司の、務め」


「んもぅ、ノエさんったら可愛いんだか………」


「でも、次は、ない」


「は、はいぃ〜!!」




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「あそこが、集落」


「ですね〜。でも………」


休憩が終わった後、街へと向かおうとしたアタクシ達。しかし、そう遠くない場所にオークの集落があることに気が付いた為、奴らが溜め込んだお宝や武器目当てにとやって来たのだが、どうやら、溜め込んでいたのはそれらだけではなかった。


「なんか〜捕らわれている人達がいます〜」


「うん。おそらく、繁殖の為」


「なんか〜気分が悪いので、速攻で片付けちゃっていいですか〜?」


「許可する」


「では〜」


木の影から飛び出したアタクシは一直線に集落へと向かい、モーニングスターを振り回しながら、声を発した。


「"雷天振"!!」






「本当にありがとうございました!一時はどうなることかと」


「いいのよ〜目的のついでだから〜」


「何という謙虚さ………それか相当、腕に自信がおありで?もしかして、高名な冒険者様とか」


「ま〜有名なのはアタクシではなくて、クランの方かしらね〜」


「やっぱり!………私達は今日という日を決して忘れません!」


「そこまで気にしなくて大丈夫よ〜…………ところで、あなた達はアタクシが所属するクランに興味はない?」


「へ?」


「もし、どこも行く当てがないのなら、一緒に来てくれると嬉しいわ〜」

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