第5話 絶望の森

あれから、一週間が経ったが、俺達は未だにこの森から出ていない。理由は単純にして明快。レベル上げの為だ。ティアを守ると宣言した以上、いつ・どこで・どんな敵から襲われても対処できるよう、強くなっておく必要がある。いくらスキルが強力でも戦闘経験があるとないとでは雲泥の差。ティアにも自衛の為の力をつけさせようと一緒に修行をした。現在の俺のステータスはこうなっている。




――――――――――――――――――――


シンヤ・モリタニ

性別:男 種族:人族 年齢:18歳


Lv 35

HP 3500/3500

MP 3500/3500

ATK 3500

DEF 3500

AGI 3500

INT 3500

LUK 測定不能


固有スキル

生殺与奪・神眼・王の権威・魔の領域・守護神・物理攻撃無効・魔法攻撃無効・魔眼・状態異常無効・錬金術・不屈の闘志


武技スキル

刀剣術:Lv.MAX

体術 :Lv.MAX

剣術 :Lv.3

槍術 :Lv.3

斧術 :Lv.3

薙刀術:Lv.3

鎌術 :Lv.3

杖術 :Lv.3

盾術 :Lv.3

弓術 :Lv.3


魔法

全属性魔法

火魔法 :Lv.2

水魔法 :Lv.2

土魔法 :Lv.2

風魔法 :Lv.2

氷魔法 :Lv.2

雷魔法 :Lv.2

光魔法 :Lv.2

闇魔法 :Lv.2

無魔法 :Lv.2

空間魔法:Lv.2


称号

異世界からの来訪者・運の女神の加護・逆境に抗いし者・ご都合主義・恐怖を与える者・武神・魔神


装備

黒衣一式(神級)

黒刀ムラクモ(上級)

――――――――――――――――――――


まず、固有スキルだが、魔眼・状態異常無効・不屈の闘志が統合されて魔の領域となった。また、新たに物理攻撃無効と魔法攻撃無効が手に入り、それらも統合されて、守護神となった。武技スキルは単純に種類が増えた。魔法に至っては全属性の魔法のLvがカンストした瞬間、それらが統合されて全属性魔法という扱いになった。称号には武神と魔神が追加されている。武技スキルと魔法のLvをMAXにし、刀剣術や魔法をそれぞれ一種類につき、最低一回以上使用することで発現した。それから、装備の項目が増え、ムラクモの位階が上がった。どうやら、成長の効果で位階がどんどん上がっていくらしい。ちなみにその基準は分かってない。ティアにも同じようなスキルや魔法を与えることができて、余った分はストックしてある。そんなティアのステータスはこうだ。



――――――――――――――――――――


ティア

性別:女 種族:獣人(狼人種)年齢:16歳


Lv 20

HP 1000/1000

MP 1000/1000

ATK 841

DEF 763

AGI 999

INT 625

LUK 1000


固有スキル

獣化・限界突破・紫電・魔の領域・守護神・錬金術・???


武技スキル

刀剣術:Lv.MAX

体術 :Lv.MAX


魔法

全属性魔法


装備

黒衣一式(神級)

銀剣オルナ(中級)

銀盾オハン(中級)


称号

獣神の加護・辿り着きし者・傅く者・恋する乙女・従者の心得・武神・魔神


――――――――――――――――――――



レベル上げをする前に王の権威によって、ティアの装備一式を作製した。その結果、防具は俺と一緒だったが、武器は全く違うものだった。剣と盾が現れた為、それらを用いた戦闘スタイルを極めることにし、本人も嬉しそうだった。また、ムラクモと同じく剣と盾それぞれに成長の効果があり、位階が上がっていく。それも大変ご満悦だったみたいだ。それから、本人の希望により、相当過酷なレベル上げになった。その結果がステータスに現れている。相変わらず、固有スキルの???は発現しなかったが、称号にはいつの間にか従者の心得というものが増えていた。


従者の心得

従者としての自覚が芽生え、それを極めようとする者に贈られる称号。全ステータス補正


――――――――――――――――――――




「じゃあ、そろそろこの森を出るか」


「はい!」


ここ一週間の間、この世界の常識についてはご都合主義とティアのサポートにより、把握済みだ。その際、ティアには俺が異世界人であることやステータスについても全てを話したが、引かれるどころか、なぜか尊敬の眼差しで見られた。どうもティアの中で俺は過大評価されているらしい。


「この家ともお別れか…」


「そうですね…」


ティアが寂しげに目の前に立つ一軒家を見上げながら、相槌を打つ。無理もない。下手したら、作成者の俺よりもこの家を気に入っているかもしれないのだ。この森でレベル上げをすると決まったその日の内に拠点をどこにするかという話し合いを行った。時間にして、約五分。一刻も早く強くなりたい俺達の意見は一緒だった。効率を求めるのなら、この森で野宿。しかし、周りに魔物だらけのこの環境は危険すぎる。どうすればいいか、考えた。そして、導き出した結論は「家を作成して、そこを拠点とする」だ。空間魔法のLvをMAXにすると家を作成することができるようになることが分かった。まずはそれを目指す為にひたすら、空間魔法持ちの魔物を狩っていった。その後、無事に家を作成。初めて、それを見たティアは目が点。内装にも拘り、土足厳禁・火気注意を心掛けて、生活した。どういう原理かは分からないが家の中の設備は問題なく使用することができ、ティアにも使い方を説明した。外装に至っては西洋の建築物を参考にし、家の周りに空間魔法の結界を張って魔物が襲ってこれないようにした。食事は一日三食、きちんと摂った。食材は主に魔物。毒はないが、あっても状態異常無効がある。気にしない。


「それにしてもよく、こんな場所で少しの間とはいえ生活できたもんだよな」


「私も未だに信じられません」


レベル上げ三日目、試しにこの森自体に神眼を使ってみようと思い、実行した結果、とんでもないことが分かった。それはここが絶望の森と言われる場所でよっぽどの事情がない限り、人が寄り付かないことや俺とティアが出会ったところがちょうど森の真ん中ということだ。森の奥に行けば行くほど、魔物が強くなっていく為、森のどの部分にいるかということが非常に重要になってくる。俺が最初に出会ったゴブリンやティアに襲い掛かったゴブリンはかなり弱い方だった。本来は森の入り口に出てくるようなレベル帯であり、あの時点で出てくるのはほぼありえない。俺にとって、それは以外の何物でもなかった。


――――――――――――――――――――



「お、もうすぐ森から出られるのか」


「ようやくですね」


俺達は今、森の入り口へと向かって歩いている。途中で出くわす魔物を狩りながらだ。レベルは低いし、スキルの種類も少ないが塵も積もればというやつである。さすがにそれを20分も続ければ飽きるが、どうやら、やっと解放されるらしい。入り口が見えてきた。


「なぁ、街に行ったら、まずは何をしたい?」


「そうですね…色々と見て回りたいですけど、もし、そこを拠点とするなら、あの家での生活を超えてくるとは思えません」


「そうだよな…魔物は美味いし、風呂は最高、寝心地抜群」


「贅沢って怖いですね」


「ティアは特に気に入ってたもんな…でも、仕方ないさ。いつかは行かなきゃならないし。この森にずっといるって訳にもいかないだろ」


「はい…とても残念ですが」


「まぁ、どうせ行くなら、早い内がいいだろ…お、そろそろだ…って、ちょっと待て。何だ、あれ?」



5mほど先、森を抜ける直前にうつ伏せに倒れている何かを発見してしまった俺達。それがかろうじて生物であることは分かるが、少し先であることとやっと森を抜けられるのにその存在に邪魔されたくないと脳が拒否反応を示している為、しっかりと認識することが出来なかった。


「…人ですかね?」


「いや、違う。これは…」


近づいてみるとその正体が何なのか分かった。サラサラとした金の長髪。うつ伏せの為、顔は良く見えないが、ある一部分ははっきりとその者の種族を主張していた。


「この女の子は…エルフだ」


「あ、確かに耳が長い…でも、一体どうしたんでしょうね、こんなところで」


「分からんが、関わったら、面倒臭そうな匂いはプンプンするな」


「でも、なんか可哀想…」


「……よし、決めた。ティア、その娘を連れて、一旦、あの家に戻るぞ」


「へ?」


その後、俺達はこの森に戻ってきた時用にと念の為、そのままの形で残してきた一軒家に引き返した。その際、ティアがニヤニヤしていた。女の子を救済できて嬉しいのかと思ったが、


「またあの家で生活できる」


と呟いていたから、違った。てか、全然違った。なんかこいつの願いが叶ったみたいで非常にムカつく。それと誰も生活するなんて言っていないからな…それにしても




「一体、いつになったら、この森を抜けられるんだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る