第6話 エルフ
「もう、さすがにこの森を出よう」
「そうですね…まぁ、私はこのままでもいいのですが」…ボソッ
「何か言ったか?」
「い、いえ!何も」
あれから、さらに一週間が経った。当初の予定では今頃、街に着いて生活を始めているはずであったがなんやかんやあって、未だにこの森から出ていない。これ以上の滞在は無用である。いくら、ティアが名残惜しそうに家を見上げていてもだ。
「サラ、準備はいいか?」
「は、はいですわ!」
俺はティアとは正反対の緊張した面持ちの少女へと投げ掛けた。サラサラとした金の長髪にくっきりとした目、肌はティア同様とても白く、鼻筋も非常によく通っている。それに加えて、出るところは出て、引っ込むところは引っ込むという理想のスタイルも持ち合わせている。さらに種族を一目でアピールできる長い耳も異世界人にとっては堪らない特徴である。はっきりと言って、これまた美人だ。しかし、あの時、地面にうつ伏せに倒れていたその少女サラはこの一週間でかなりレベルが上がっているのだが、抜群の容姿を台無しにするほどの残念さがあった。そもそも何故、あのような場所で倒れていたのか。何か特別な事情があるに違いない。訳を聞くと冒険者になる為に地図を持たずに勢いで里を飛び出し、何とかなる精神で辿り着いたのが絶望の森の入り口。そのまま極度の空腹と睡眠不足により、倒れてしまったみたいだ。聞いた俺が馬鹿だった。てか、心配して損した。魔物や盗賊が跋扈するこの世界で何の考えもなしに勢いだけで外へ出るとか…。もしや、レベルが高くて強さからくる自信からか?と思い、慢心はいけないと説こうとしたら、どうやら、そんなこともないらしい。一体、どうなってんだ、こいつ…と思ったが、すぐに外の恐ろしさを覚えてもらおうと頭を切り替え、それを実行。俺とティアによるスパルタ教育によって、今では甘い考えを捨て去り、自身の知謀と実力を用いて、慎重に行動するよう生まれ変わっていた。ちなみに現在の俺達のステータスはこれだ。
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シンヤ・モリタニ
性別:男 種族:人族 年齢:18歳
Lv 50
HP 5000/5000
MP 5000/5000
ATK 5000
DEF 5000
AGI 5000
INT 5000
LUK 測定不能
固有スキル
生殺与奪・神眼・王の権威・魔の領域・守護神・物理攻撃無効・魔法攻撃無効・魔眼・状態異常無効・錬金術・不屈の闘志
武技スキル
刀剣術:Lv.MAX
体術 :Lv.MAX
剣術 :Lv.3
槍術 :Lv.3
斧術 :Lv.3
薙刀術:Lv.3
鎌術 :Lv.3
杖術 :Lv.3
盾術 :Lv.3
弓術 :Lv.3
魔法
全属性魔法
火魔法 :Lv.2
水魔法 :Lv.2
土魔法 :Lv.2
風魔法 :Lv.2
氷魔法 :Lv.2
雷魔法 :Lv.2
光魔法 :Lv.2
闇魔法 :Lv.2
無魔法 :Lv.2
空間魔法:Lv.2
称号
異世界からの来訪者・運の女神の加護・逆境に抗いし者・ご都合主義・恐怖を与える者・武神・魔神・魔物キラー・絶望の森の主
装備
黒衣一式(神級)
黒刀ムラクモ(特級)
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十種類の魔物をそれぞれ五十体ずつ倒した時に貰えた称号が魔物キラー。絶望の森の主は絶望の森を隅から隅まで探索し、現主を倒した者に贈られる称号らしい。ちなみに森の奥にも家を一軒建ててある。
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ティア
性別:女 種族:獣人(狼人種)年齢:16歳
Lv 30
HP 2000/2000
MP 2000/2000
ATK 1740
DEF 1592
AGI 1863
INT 1000
LUK 2000
固有スキル
獣化・限界突破・紫電・魔の領域・守護神・錬金術・???
武技スキル
刀剣術:Lv.MAX
体術 :Lv.MAX
魔法
全属性魔法
装備
黒衣一式(神級)
銀剣オルナ(上級)
銀盾オハン(上級)
称号
獣神の加護・辿り着きし者・傅く者・恋する乙女・従者の心得・武神・魔神・魔物キラー・主の右腕
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魔物キラーの効果は魔物に対して与えるダメージが1.5倍になり、こちらの受けるダメージが0.8倍になるというものだ。主の右腕は主の最も信頼している者に贈られる称号でステータス補正が掛かるらしい。ちなみにティアとの奴隷契約は俺のわがままにより、解除している為、ステータスのどこにも反映されていない。
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サラ
性別:女 種族:エルフ 年齢:17歳
Lv 20
HP 1000/1000
MP 1000/1000
ATK 784
DEF 592
AGI 673
INT 999
LUK 1000
固有スキル
精霊信仰・言霊・百発百中・魔の領域・守護神・錬金術・???
武技スキル
刀剣術:Lv.MAX
体術 :Lv.MAX
魔法
全属性魔法
装備
黒衣一式(神級)
金弓ピナカ(中級)
金剣クリューサー(中級)
称号
豊穣神の加護・精霊に愛されし者・傅く者・恋する乙女・従者の心得・武神・魔神
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精霊信仰
精霊と契約することができる。また、一時的に精霊を自身に降ろすことができる。その際、ステータス補正。
言霊
大量のMP を使い、発した言葉と同じ行動を他者に強制できる。ただし、自身よりもレベルが高い者には無効
百発百中
放った矢を物理法則を無視して、確率によっては必中にする。確率はLUKの値に依存する。
豊穣神の加護
豊穣神フレイの加護。INTの値に補正。
精霊に愛されし者
精霊を愛し愛されやすくなる。また、親和性が高まる。DEFの値に補正。
サラの装備は弓と剣。基本的に弓を用いて戦い、遠距離から攻撃。敵がすぐ側まで来てしまった場合は剣で応戦するようだ。ティアの剣が直剣だったのに対し、サラのは細剣つまりレイピアである。これまた、成長の効果が付与されており、位階がどんどん上がっていくらしい。俺が言えたことではないが、チート過ぎだろ…
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「もうすぐだな」
「ここまで長かったですね…」
「私にとってはあっという間でしたわ。あ〜今、この瞬間もあの地獄がフラッシュバックしてきそうですわ」
「ま、ティアの鬼軍曹っぷりが酷かったもんな…」
「え!?わ、私ですか!?どちらかと言うとシンヤさんの方が酷かったですよね?ねっ、そうですよね、サラ?」
「どちらもなので、何とも言えませんわ…」
「え〜そんな…」
「お前ら、しょげてるとこ悪いが、もう着くぞ」
目の前に見えるは森の入り口。何度、この光景を思い描いてきたことか。かつて、ここまでしつこく街に行けなかったファンタジー作品があっただろうか?いや、ない。ま、これは現実なんだけどな。
「なぁ、街に行ったら、まずは何をしたい?」
「そうですね…色々と見て回りたい…あれ?この台詞、どこかで」
「私は当然、ギルドですわ!冒険者ギルドに行って、シンヤさんとティアと一緒に華々しい冒険者デビューを飾るのですわ!」
「お前はそればっかりだな…ん?あれは…」
その時、俺はまたしても見てしまった。奇しくもサラを発見したのと同じ場所で魔物に襲われている集団を…。
「くっ…やはり、僕達には絶望の森はまだ、早かったか」
「諦めちゃダメよ、パーシィー!もしかしたら、何か奇跡が起きて、助かるかもしれないじゃない!!」
「奇跡って何だよ!!この状況で一体、どうやって助かるっていうんだよ!」
「た、例えば高ランクの冒険者がたまたま通りかかるとか」
「そんなことあるわけないじゃないか!!ここはあの魔族ですら、おいそれと近付けない場所。あるとすれば、闇組織が人の目を逃れる為に通るかあとは単純に頭のおかしい奴しか来ない!そんなの小さな子供だって知ってる!!」
「おい、頭がおかしいって言われてるぞ、サラ」
「確かにあの頃の私は頭がおかしかったですわ。しかし、今の私は生まれ変わりました。あんな言葉を気にするほど短気ではないのですわ」
「…それ以上は爪が食い込んで血が出てくるぞ」
「…理解していますわ」
「…ここまでか…ん?お、おい!君達!まさか、冒険者か?」
「え、嘘でしょ!?本当に来てくれた!?」
まずい、見つかってしまった。ここはあれでいこう。俺は二人に目配せをし、頷くのを確認した。事前にこうなった時の為に対策をいくつか考えていたのだ。それを実行する時が来たのである。まさか、こんなに早く来るとは思ってもみなかったが…。
「やはり、神は私達を見捨てていなかったのね」
「どうやら、そのようだ…これで助かるぞ、シンディー」
何か勝手に助けてもらえる雰囲気になっている集団を前にして、俺は言ってやった。さっきの質問に対するその答えを。
「冒険者じゃありましぇ〜ん」
某〇〇下車の旅のナレーターを意識して、わざと間延びした声を発しながら、俺達は彼らの横を通り過ぎていった。一人ふざけた男と神妙な面持ちの二人の少女…。残された冒険者達は予想外のことにただただ驚き、彼らを見送ることしか出来なかった。
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