第13話 エレナ・ドゥマレーシュの誕生日パーティー


 エレナの15歳の誕生日パーティーは、ドゥマレーシュ家の壮麗な邸宅で開催された。爽やかな昼下がりの庭園には、色とりどりの花々が咲き誇り、灯りが美しく輝いていた。ゲストたちは洗練されたドレスとスーツをまとい、ホールに集まっていた。


 リリアも例外ではなかった。エレナの15歳の誕生日パーティーにおいて、リリアは美しいバラのドレスに身を包み、そのドレスは庭園の花々と調和していた。深紅のバラの花びらが、リリアの装いに華やかさと気品を加え、彼女を一際輝かせていた。彼女の出席はまるで美しき花であり、ゲストたちから賞賛の視線が注がれていた。

 キャラメルブラウンの長髪は華やかなアップスタイルに仕上げられていた。エレナのお茶会のときと同じく、リリアは気品ある挨拶と優雅な笑顔でゲストと挨拶をしていた。


 華やかな雰囲気の中、リリアは主役の元へと向かった。パーティーの会場は賑やかで、ゲストたちは笑顔でお祝いの言葉を交わしていた。


「エレナ、お誕生日おめでとう。この日があなたにとって素晴らしいものであることを願っています」


「まあ、リリア来てくれたのね。ありがとう。ぜひ楽しんで行って」

 エレナは微笑みながらリリアに感謝の気持ちを伝えた。

 

 エレナも15歳になり、彼女は自信を持って紫色の美しいドレスを纏い、パーティーの主役としての輝きを放っていた。彼女とリリアは友達のように見えるかもしれないが、その表面には競争心が漂っていた。


 「はぁ、少し疲れたわね」

 リリアはドゥマレーシュ家が誇る庭園に出て、ひとときの静けさを楽しんでいた。庭園には美しい花々が咲き誇り、柔らかな風が軽やかに舞い、鳥たちが楽しい囀りを奏でていた。


 その庭園の中で、リリアが一人で散歩していると、貴族のひとりが近づいてきた。

 

 あれは……皇太子じゃないの。前世ではエレナと婚約していたはず。エレナの誕生日パーティーに来ているということは、今回もそうなのかしら。

 リリアが皇太子に対して考えを巡らせていると、向こうからリリアに話しかけた。

 

「美しい庭園ですね。僕はこの静かな時間が好きです」


「はい、私も庭園が大好きです。貴方もそうなのですね」

 リリアは動揺を表に出さないために、会話を楽しんでいるかのように見せた。


「そろそろ戻った方が良いかもしれませんね」


「ええ、それではお先に」

 離れる前に名乗るかと思ったのだけれど、そうしないのね。そこら辺の令嬢には名乗りもしないのかしら。

 

 リリアは皇太子に挨拶をして屋敷の中に戻って行った。


 運命の歯車がゆっくりと動き始めていたことを、リリアはまだ知る由もなかった。



 庭園の風景を楽しんだ後、リリアはホールに戻った。パーティーの本番が始まり、エレナの父が誕生日のお祝いのスピーチをした。ホールは美しく飾られ、華やかな雰囲気に包まれていた。


 「皆さん、私たちは今日、我が家の誇りであるエレナの15歳の誕生日を祝うことができ、大変光栄に思っております。エレナ、お誕生日おめでとう」


 エレナは幸せそうに微笑みながら感謝の言葉を述べ、パーティーは一段と盛り上がった。ホールには美味しい食事と華やかな音楽が広がり、リリアもこの素晴らしい瞬間を楽しんだ。


 リリアが食事や会話を楽しんでいるとき、エレナが近づいてきた。

「リリア、先ほどぶりね。私は前から思っていたのだけれど、リリアには気を遣わずに接してほしいの」


 リリアは驚いた。まさかエレナが自分の晴れ舞台でリリアに接近し、策を弄するとは思わなかったのだ。

 何を考えているの……?エレナが私にこのように接するのはもう少し後だったはず。それも私を利用して褒め称えられようとしていた時くらいのはず。

 このパーティーで何かしようとしているの!?


 リリアは動揺した。二回目の人生では、先がわかることをメリットに行動してきたのだ。それが、今回は先回りをされてしまった。


「どういうことでしょうか……?」

 リリアに少し動揺の色が見えた。


「ふふっ、そんなに緊張しないで。いつもの貴方らしくないじゃない。私はただ、名前を呼び捨てにしてほしいのよ」


 あぁ、前もこのセリフ聞いたことがある。私がエレナと同等の地位だと勘違いしていた頃の話だわ。

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