第11話 リリアとラウゼンベルク伯爵
今日は社会の勉強をする日である。リリアは社会の経済などをセシリア・ウェストモア子爵夫人から習っていた。彼女は幅広い知識を持つ、落ち着いた女性であった。
「セシリア夫人、お聞きしたいことがあるのですが」とリリアは恐る恐る口を開いた。
セシリアは親しみやすい笑顔でリリアに応えた。
「もちろん、どこか分からないところがありましたか?」
「いえ、違うんです。王国民たちの生活についてなのですが……」
リリアは座りながら、自身が最近見た少年の話について語り始めた。彼女は街の子供たちが十分な食事を摂れず、衣服も不足していること、さらには医療の機会にも恵まれていないことを説明した。
セシリアは真剣にリリアの話を聞き、少し考える素振りを見せた。
「そのような問題は確かに深刻です。しかし、それを解決する方法はいくつか考えられます。資金を集めて寄付を行ったり、貴族たちに対しても意識を高め、支援を呼びかけることも考えられます。実際に寄付をしている貴族などはいるみたいです」
なるほど、私でも寄付なら出来るかもしれない。
リリアはセシリアの助言に感銘を受け、この問題に立ち向かう覚悟を固めた。彼女はセシリアから学んだ知識とアドバイスを活かし、貧しい子供たちに希望と支援を届けることを決心したのである。
「セシリア夫人、寄付をしてみたいです!どうやって寄付を行うのか、その寄付をしている方にお話をお聞きしたいのですが、お会いする方法はありますか?」
「そうですね、私の知り合いで良ければご紹介できますよ」
セシリアは微笑んで言った。
――――――
リリアはセシリアと共に寄付を行っている貴族を尋ねることになった。セシリアはリリアを気遣い、紹介状を送ってくれたのだ。
二人は軽やかな足取りで、高貴な邸宅が立ち並ぶ地域に到着した。優美な庭園の中に佇む一軒の豪華な屋敷が、リリアとセシリアの目前に広がっていた。この屋敷は寄付を行っている貴族のものであり、民の支援に心を砕いていると聞いた。
セシリアはリリアに微笑みかけ、安心させるように言った。
「リリア様、私が紹介状を持っていますので、安心してお話できるでしょう」
「はい。夫人ありがとうございます」
リリアは深呼吸をし、セシリアに続いて邸宅の門をくぐった。中庭には美しい花々が咲き誇り、家の前には執事が立っていた。
「お久しぶりです。こちらはお話していた紹介状です」
セシリアは用意していた紹介状を執事に手渡した。
「ウェストモア子爵夫人、ヴァンダーヘイデン伯爵令嬢、お待ちしておりました。ご案内いたします」
彼女たちが屋敷に入ると、1階の客室に案内された。部屋には数名の貴族たちが集まっており、長いテーブルを囲って熱心に議論していた。セシリアとリリアは貴族たちが集まっていることに驚いた。
執事が、部屋の奥に座っていたこの屋敷の主人に、紹介状を手渡した。主人はそれを受け取ると、席を立ってセシリアに挨拶をした。
「久しぶりですね、ウェストモア夫人。わざわざこのような所まで来ていただき、感謝申し上げます」
「こちらこそ、お会いできて嬉しく思います。こちらはお手紙でお話していた、リリア・ヴァンダーヘイデン伯爵令嬢です」
セシリアがリリアに手を向けると、リリアは優雅なお辞儀をした。
「お初にお目にかかります。リリア・ヴァンダーヘイデンと申します。本日はお招きいただき、誠に感謝申し上げます」
「リリア嬢、来てくれてありがとうございます。私はアデルバート・フォン・ラウゼンベルク。今日は寄付について興味のある人たちが集まっているから、リリア嬢にとっても良い場になると思いますよ。」
リリアの挨拶を受けて、ラウゼンベルク伯爵が挨拶をした。灰色の髪は年齢を感じさせるが、堂々とした風格を持っていた。
ラウゼンベルクってあのラウゼンベルク伯爵!?王国内でも高い地位を持つ伯爵の一人だったはず。一度目の人生では名前を聞いていたものの、会ったことはなかった。違う道に進んでいる証かしら。
リリアは今後の人生が良い方向へ進むことを願った。
「早速、彼らに紹介しましょう。皆さん、こちらはセシリア・ウェストモア子爵夫人とリリア・ヴァンダーヘイデン伯爵令嬢です。今回のお話に参加していただくためにご招待しました」
ラウゼンベルク伯爵に紹介され、リリアたちは周りの人々に挨拶をした。挨拶が終わると椅子に座り、話し合いが再開された。
「そういえば、リリア嬢は今回初めての参加との事ですが、寄付についてどこでお話を聞いたのですか?」
貴族のうちの一人がリリアに質問をした。
「セシリア夫人からお聞きしました。街を散策していた時、とある少年に出会いました。その事をお話したら、寄付について教えてくださったのです」
リリアは彼らに、街で出会った少年のこと、セシリアがラウゼンベルク伯爵を紹介したことを話した。
「そのような生活をしている子供たちは多いと聞きます。リリア嬢がそれを見て、何かしたいと思ったことは素晴らしいですね」
リリアの話を聞くと、貴族たちは口々にリリアを褒めた。
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