詩をのせればメロディに

十一月の金木犀の香りが

駆け足の僕の背に乗って

遅かったねと言う君は

季節のことかな 僕のことかな


まだ濡れた髪が

外と同じ今だけの香り


恋人なんかじゃないけれど

迎えてくれる一言の

むき出しの心がチクリと刺さる


せめて壁があったなら

信号なんかでもいいからさ

越えられると想えれば

渡れるまで待つのなら

きっと もっと この先も――



窓を閉めてと怒る君の

とがる唇にふっと笑い

バカにしてると言う君に

残念なのかな 安堵なのかな


外からも同じ香り

君じゃないと言い聞かせて


友だちよりは仲良いけどさ

窓を閉めると満ちる空気は

警戒心のなさがチクリと痛む


せめて友だちだったなら

親友なんかでもいいからさ

名前のある情だったなら

友から愛を願うのに

きっと いつか あきらめも──



機嫌が良いねと笑う君は

夜のお酒のせいにするかな


それでいいよ

僕の気持ちをはなうたに

はずかしいくらいの詩をのせて

夢見ざましのメロディに


でもね

君のハミング重なって

金木犀の歌になる





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る