三日目 猫ちゃん
ここに来て三日目の朝です。店の前の掃除をしていると、近くのゴミ箱の影から、黒いものがぴょっと飛び出してきました。
「にゃん」
ちょこんとおすましするこの物体はそう、可愛い黒猫ちゃんでした。
「あら、猫ちゃん。どうしたの?」
しゃがみこんで顔を覗くと、猫も擦り寄ってきました。とても人懐っこいです。
そっと手を伸ばしても逃げないので、優しく撫でようとして、その体に触れると、にちゅっ……ぬるっ……という音と感触が伝わってきました。
「っ……よ、汚れてるのかなぁ? お風呂入る?」
伝わるわけのないその言葉に猫は反応して、こくりと頷きました。
「……」
なんか、少し怖いです。でも、こてんと首を曲げて、うるうると上目遣いで何かを訴えてくる猫ちゃんを放っておくことも出来ず、思い切って抱き上げてみました。
瞬間、猫の体だったものが、とろりと溶けて、黒い石油のように広がっていって――瞬きをしたその僅かな間に、猫はすっかり元通りになっていました。
「にゃ、にゃーん。……にゃっべ」
「君絶対猫じゃないよね?」
「にゃーん❤」
「うーん……まぁ、とりあえずお風呂入ろっか。煮干しもあるけど、食べる?」
「いただきます」
「!?」
「ぺろぺろざりざり」
……これ、友達が言っていた名状し難いものの類なのでは?
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