二日目の終わり

 午後の営業が終わった後、私はちょっとだけ残ったパンケーキの生地を見て、考え事をしていました。

 明日に取っておくか、今食べるか……その二択で迷っている時、ふと思い出しました。そうだ、ゆうくんのお母さんが食べたそうにしていたのに、結局食べずに帰ってしまった、と。

 ので、まだ洗う前だったフライパンに油を塗って、残った生地を手早く焼き上げます。それをそのフライパンに直接ラップをかけ、手提げのバスケットにお皿とフライパンを入れ、マスターに出かけてきますと声をかけて、外に出ます。

 本当にすぐのご近所さんなので、パンケーキが冷めないうちにピンポンを鳴らして、声をかけます。

「おいしい紅茶の店からパンケーキの宅配に来ましたー。ドアを開けてくださーい」

 すぐに、ぱたぱたと走ってくる音が聞こえて、ガチャりとドアが開きました。

「あなた、お昼のバイトさん? どうしたの、こんな時間に」

「こんな時間にごめんなさい、パンケーキの生地が余ってしまって、もったいなかったので良ければと」

「あらあら、そんなわざわざ。ありがとうね。えと、今お財布を……」

「いえ、これはサービスなので、気にせず食べてください。お皿は、また今度返してくれればいいので」

「わっ、これお店のお皿でしょう? とっても高いって聞いたのに、大丈夫なの?」

「ええ、常連さんへのサービスをしっかりしなさいっていつも言われていますから」

 そのあとも色々と雑談をしたりして、結構な時間立ち話をしてしまったので、ちょうどいい所で切り上げて、お店に帰りました。

 残った洗い物や明日の仕込みをぱっぱと済ませて、日記を書いてベッドに倒れ込みます。ちなみに、この部屋の椅子は背もたれがないので立ち上がらずにごろんと寝転がるだけで布団に入れます。自堕落になりそう。

 今日はマスターがいない代わりに、いつの間にか不法侵入していたメガネの似合う作家の先生がいたので、そっと抱き上げてマスターの部屋に放り込みました。明日の朝、警察を呼びましょう。

 では、おやすみなさい。

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